撮影中は「なんで自分なんだ」と苦しくて…だって理不尽なんですもん(笑)
–––– ドラマでは、現代の格差社会の闇とそこで生きる人々の人生が描かれていますが、赤楚さんは脚本をどのように捉えましたか?
台本を読んでまず思ったのは、フィクション作品ですが現実にあってもおかしくない出来事の連鎖だなということ。僕が演じた四宮勇気は、普通の生活を送っていたところから一転ヒルの世界に飛び込んでいくわけですが、ヒルの世界で生きている人たちには法とか秩序は存在しません。
––––演じたユウキという人物の印象は?また、演じる上で気をつけた点はありますか?
生い立ちが複雑なユウキは“普通の生活を送りたい”と思いながらも、どこか幸せになれるわけがないと心の底に感じていて、いわゆる“普通の人たち”に対する憧れが強い。そんな中、ヒルに名前を奪われてしまうのはあまりに可哀想な境遇。でも、ヒルと関わるユウキを通して普通の生活に対して客観視ができて、“人は繋がっていないと生きていけないんだな”と感じました。
最初は周囲や世の中に対してシャットダウンしているキャラクターで塞ぎ込んでいる。演じる上で気を付けた部分でいうと、周りに巻き込まれていく中で生まれていく人との繋がりによって、(吉川愛さん演じる)ゾーカに対する愛情が芽生える過程をどう描いていくのか、そこに気を付けました。
写真をすべて見る––––いたぶられるシーンも多く、「肉体的にも精神的にも苦しかった」とおっしゃっていましたが、撮影を振り返って辛かったことや印象的だったことを教えてください。
「人と関わらずに過ごしていきたい。普通に生きていきたい」とそれだけを望む人間だったのに、どうしてこんなスタンガンを6回も当てられたり、警察に追われたりするのか。ボコボコにされる肉体的なアクションも多く、体の疲労もありましたが、何よりも“なんで自分なんだ”という思いが沸いてきてすごく苦しくて…。本当に精神的に苦痛なシーンが多かったです。だから、ユウキの気持ちにすごく寄り添いました。だって理不尽ですもん!(笑)
––––緊迫感の多い内容ですが、撮影現場の雰囲気はいかがでしたか?
キャストの皆さんはお子さんがいらっしゃる方が多くて、意外にも学校のこととかほのぼのした会話をしていました(笑)。作品の中では極悪なチロル役を演じられた岩永洋昭さんは、いつもお子さんの話をしていて「いいパパだなあ」って(笑)。なので、ホッコリするような場面が多い現場でした。
––––久しぶりの座長でしたが、作品を引っ張っていくために心がけたことは?
ユウキはどちらかというと巻き込まれる役なので、皆さんに引っ張ってもらいました。というか“巻き込まれていった”という表現が近いかな。こういう役柄なこともあって、特にゾーカとのストーリー部分では、ふたりで一緒につくり上げていくという気持ちで臨みました。
––––イチ押しのシーンがあったら教えてください!
全部が見どころ!と言いたいところですがあえて選ぶとしたら…頑張ったのはアクションです。少しでも反撃したいという思いで挑みました。まあ結果は…というシーンではあったのですが、気持ちと動きが合うように何度も練習しました。すごく楽しくもあり、苦しくもあったシーンでしたね。
––––アクションシーンに備えて、日常的に体を鍛えていらしたんですか?
全くしませんでした。ユウキはケンカが強いキャラクターではなく“普通の人”。どちらかというと非力な人間なので、なるべく痩せた状態でいこうかなと思っていました。ちなみに今は鍛えています!
––––ご自身が勇気と同じ状況になったとしたら、どういう行動に出ると思いますか?
巻き込まれてしまったら、良心とかそういう考え自体がなくなるのでは?と思います。最初はすごく苦しいだろうけど、だんだん染まってしまうのではないかと。普通なら犯罪と言われることも“ヒルの世界”では犯罪ではなくなってしまうんです。適応していきたいと思いますが…きっと僕はすぐにやられますね(笑)。
––––追い込まれたときのメンタル的な強さはどうですか?
きっと自分が追い込まれても、そこまで絶望を感じることはないです。どちらかというと友達や家族がそういう状況になったときのほうがキツイだろうと思います。
––––監督からのディレクションで印象的だったことや、ヒントになったことがあれば教えてください。
その場で構築していくというよりかは、「次、このシーンはこうやろうと思うんだ」と監督から教えていただくことが多かったです。一番いいなと思ったのは、鍵を見せるシーン。もともと台本にはなかった演出ですが、鍵を見せることによって、“バトンタッチしたものがちゃんと受け継がれている”と伝わり、ふたりで生活していこうという余韻に浸るようなワンシーンになったと思います。「ここで鍵を見せよう」と監督に提案いただいたときは、うわ、すごい!って思いました!
––––ヒルというシステムを知ったときの感想をお聞きしたいです。
“人の家に寄生する”という設定にゾッとしました(笑)。もしかしたらあるかもしれないと思わせるようなリアルさで…。たとえば、自分が外に出ている時間に家に見知らぬ人が入っていてもおかしくはない。だから、鍵をちゃんとかけなきゃって用心するようになりました。あと、把握しやすいようにシャンプーボトルを全て透明のものに変更して、「今、これくらいの量だな」って常に見てます。だから、もしヒルが入ったら一発でわかると思います。仕事から帰宅したら、シャンプーの量が変わってないよなとまず確認してしまうこともあるくらい…(笑)。でも、ちゃんと見るようになってからシャンプーを切らすことがなくなったので、一石二鳥だなと思っています(笑)。
「WOWOWオリジナルドラマ ヒル」
■放送⽇時:2022年3⽉4⽇(⾦)午後11時より放送・配信スタート(全12話)
【放送】毎週⾦曜午後11:00[第⼀話無料放送]【WOWOWプライム】
【配信】各⽉の初回放送終了後、同⽉放送分を⼀挙配信[無料トライアル実施中]【WOWOWオンデマンド】
<ストーリー>
21歳の四宮勇気(⾚楚衛⼆)は友⼈もおらず、バイト漬けの孤独な⽇々を過ごしていた。ある⽇、いつものように夜勤バイトから帰ると、部屋には腹部をナイフで刺された⾒知らぬ男が座り込んでいた。男は搬送先で⽬を覚ますと、刑事にむかって⾃分は“四宮勇気”だと名乗り、ユウキを指さしながら「この⼈が⾃分を刺した」と供述するのだった。咄嗟にその場を逃げ出したユウキは、⼀瞬にして逃亡犯となってしまう。そんなとき、⽬の前にゾーカという謎の⼥が現れ、⽗親を殺したある⼈物の復讐を⼿伝って欲しいと頼まれ⾏動を共にすることに。ゾーカは住⼈が不在の家を渡り歩いて⽣活する、通称“ヒル”だった。⼆⼈はやがて“ヒル狩りのカラ”の異名を持つ伝説のヒル、カラ(坂⼝健太郎)と出会う。カラもまた、復讐のためだけに⽇々を抜け殻のように⽣きるヒルだった―。
<スタッフ・キャスト>
原作:今井⼤輔『ヒル』『ヒル・ツー』(新潮社バンチコミックス)
脚本:⻘島武(映画『グラスホッパー』『東京難⺠』)
掛須夏美(NTV「今⽇は会社休みます。」脚本協⼒)
⾳楽:横関公太
監督:鈴⽊浩介(「連続ドラマW 沈まぬ太陽」「シグナル⻑期未解決事件捜査班」)
チーフプロデューサー:⻘⽊泰憲
プロデューサー:廣瀬眞⼦ 笠置⾼弘 濵弘⼤
製作:WOWOW トライストーン・ピクチャーズ
出演:⾚楚衛⼆
吉川愛 飯豊まりえ 栁俊太郎 板垣瑞⽣・佐久間由⾐
⽥中幸太朗 松澤匠 三浦誠⼰ 利重剛/ 板尾創路 ⼩⻄真奈美/ 坂⼝健太郎
ほか
−取材MEMO−
爽やかな笑顔で「よろしくお願いします!」とスタジオ入りした赤楚さん。今回は大人っぽい雰囲気での撮影とあって、柔和な笑顔から一変、カメラの前に立つと役柄に入ったように次々にクールな表情を連発!「どのカットもかっこいい!」「全部載せたいくらいセレクトに迷ってしまいます」とスタッフ一同うれしい悲鳴。インタビューでは、丁寧な言葉づかいで1問1問答える姿に誠実なお人柄が表れていました。
俳優
赤楚衛二
あかそ・えいじ/1994年3月1日生まれ。愛知県出身。178cm。2017年『仮面ライダービルド』に出演。2021年は『彼女はキレイだった』、『SUPER RICH』などドラマでの好演が話題に。2020年に主演を務め、大ブームを巻き起こしたドラマ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』が待望の映画化。映画『チェリまほ THE MOVIE ー30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしいー』は2022年4月8日(金)に公開。
撮影/杉江拓哉(TRON) スタイリスト/壽村太一 ヘア&メイク/廣瀬 瑠美 構成/佐々木怜菜、岡野亜紀子
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