「育休手当」ってなに?
「育休手当」は、厚生労働省が実施している育児支援制度の一環で、会社を休んで子育てをする人の生活を支える給付金のことです。正式な名称を「育児休業給付金」といい、雇用保険から支給されます。「育休手当」は、女性だけでなく、育休をとる男性にも支給されます。
「育休手当」をもらう条件は
「育休手当」の受給要件は次の通りです。
・育休終了後、職場復帰の意思がある
・育児休業を開始する直近2年の間に、雇用保険の被保険者期間が12か月以上ある
・前の出産による育休中であったり、本人の疾病等が原因で被保険者期間を満たさない場合は、緩和した受給条件を満たしている
なお、有期雇用労働者は、受給要件が異なります。有期雇用労働者の場合、上記要件に加え、子どもが1歳6か月までの間に、労働契約が満了することが明らかでないことも必要になります。
育休中の条件も把握しておきましょう。育休中に就労した場合は、就労している日数が10日(10日を超える場合は、就労している時間が80時間)以下であることが育休手当の受給要件です。条件を破ると、育休手当の支給対象外となることも。臨時・一時的な就労であっても、この条件に抵触しないよう注意が必要です。
「育休手当」申請はどうする?
育休手当の申請は、基本的に在職している会社が行います。育休取得を決めたら、まずは人事部などの該当部署に連絡し、会社の案内に従って手続きをしていきます。育児手当の受取口座情報やマイナンバー、母子手帳の写しなどが必要になるので、あらかじめ準備しておくと申請がスムーズです。
育休手当は、自分で申請することもできます。該当部署に自分で申請手続きをすることを伝えて必要書類を受け取り、会社管轄のハローワークに出向きましょう。
育休手当を2か月以上受給する場合は、更新手続きが必要になります。基本的には会社が行いますので、会社からの連絡や郵送物に注意しましょう。自分で手続きをしている場合は、提出期限に気をつけて。期限を過ぎると、育休手当が受給できなくなるかもしれません。
「育休手当」の期間や延長について
育休手当は、育児休業開始日から対象になりますが、育休開始日は男性と女性では異なります。
「育休手当」いつからいつまで?
申請者が男性の場合は、子供が産まれたその日が育休開始日になりますが、女性は出産して8週間後が、育休開始日になります。これは、出産日から8週間が産休期間に該当するためです。
育休手当は、原則、養育している子供が1歳になった日の前日(具体的には1歳の誕生日の前々日。民法の規定上、誕生日の前日をもって満年齢に達したとみなされるため)まで受給できます。ただし、それ以前に職場復帰をした場合は、復帰した日の前日までが受給期間になります。
「育休手当」延長はできる?
子どもが1歳まで受給できる育休手当ですが、以下の条件を満たせば、子どもが1歳半、もしくは2歳になるまで延長することができます。
・保育園への申し込みをしているが見つからず、働くことが難しい
・配偶者が死亡した
・病気やケガ、精神上の問題により、子供の養育が困難である
・離婚などの理由により、子どもと離れて暮らすことになった
・6週間(多胎妊娠の場合にあっては、14週間)以内に出産する予定、もしくは、産後8週間を経過していない
この期間延長は、社会復帰をする意思があるけれど、目途がたたない場合の例外的措置として適用されます。
「育休手当」の受給中に退職した場合は?
育休手当の受給中に退職した場合、支給の対象外となります。なお、退職しても、それまで受給した育休手当を返金する必要はありません。
「育休手当」はいくらもらえる?
育休手当の正確な金額は、ハローワークに提出する書類により算出されますが、計算の仕方は次のようになります。
「育休手当」の計算方法
<育休開始から6か月以内>
休業開始時賃金日額×支給日数(原則30日)×67%
<育休開始から6か月経過後>
休業開始時賃金日額×支給日数(原則30日)×50%
育休中に賃金の支払いがない場合の具体的な育休手当の金額は次の通りです。
<平均して月額15万円程度の場合>
育休開始から6か月間の支給額は月額10万円程度
6か月経過後の支給額は月額7,5万円程度
<平均して月額20万円程度の場合>
育休開始から6か月間の支給額は月額13,4万円程度
6か月経過後の支給額は月額10万円程度
<平均して月額30万円程度の場合>
育休開始から6か月間の支給額は月額20,1万円程度
6か月経過後の支給額は月額15万円程度
「育休手当」いつの給与が基準?
育休手当でもらえる金額の基準となるのは、休業開始時賃金日額です。これは、基本給とは異なります。
休業開始時賃金日額は、育休開始前の6か月間で受け取った給与の総支給額(社会保険料などが控除される前の額)を180で割って算出されます。諸手当は含まれますが、賞与(ボーナス)は入りません。
「育休手当」上限はある?
育休手当には上限額が設定されています。
上限額(支給率67%)→ 305,319円
上限額(支給率50%)→ 227,850円
上限額は、毎年8月1日に変更される可能性があります。
「育休手当」振込はいつ?
育休手当を初回申請してから口座に入金されるまで、3か月程度かかるとされています。「育児休業給付金決定通知書」が手元に届いたら約1週間程度で口座に振り込まれますが、明確な振込日については、ハローワークに問い合わせても教えてくれません。
2回目以降は、原則2か月に1回支給されます。
「育休手当」で気になる税金
育休手当をもらっている間、税金や保険料はどうなるのでしょうか。
「育休手当」社会保険料や雇用保険料は?
健康保険や厚生年金については、育休中の負担は免除とされます。これは本人負担分だけでなく、事業主が負担している分も含まれます。雇用保険料については、賃金が発生した場合のみ、保険料の負担が必要になります。
「育休手当」税金は
育休手当は、非課税扱いのため、課税はされません。したがって、所得税や復興特別所得税、住民税などの支払いも発生しません。
最後に
育休中の生活を支える「育休手当」は、申請から受け取りまで時間がかかります。実際に育児がはじまると忙しくなるため、事前にしっかり調べて準備をしておきましょう。「育休手当」は国による子育て支援の制度です。うまく活用するためにも、積極的に申請しましょう。
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監修
コトヅテ 益田瑛己子(ますだ・えみこ)
ライター・キャリアコンサルタント/金融機関の営業職(FP職)として長年勤務し、現在はライター(ブック・Web)として活動中。趣味は、好きなアーティストのライブに行くこと。子供が自立し、仕事にまい進する日々を謳歌している。
執筆/京都メディアライン