「育児休業給付金」とは
「育児休業給付金」は、雇用保険加入者である労働者の育休中に支給される給付金です。育休中、給与支給はされないことがほとんどのため、「育児休業給付金」で家計を補います。令和4年10月に「育児・介護休業法」が改正され、育児休業がより利用しやすくなりました。
育児休業給付金の基本事項についてはこちら
「育児休業給付金」もらえる条件は
「育児休業給付金」は、次の条件を満たしている人に支給されます。
育児休業前の条件
・雇用保険の被保険者であること(雇用保険に加入していない人は対象外)
・休業開始前の2年間で、就業日数が11日以上の月が12か月以上あること(12か月ない場合は、賃金の支払いの基礎となった時間数が80時間以上の月が12か月以上あればOK)
育児休業中の条件
・育児休業中に、賃金(休業前の1か月の賃金の80%以上)が支払われていない
・育児休業中の就業日数が、10日(80時間)を超過しない(1か月あたり)
・生まれてから1歳未満の子どもがいること。延長が認められた場合は、1歳6か月または2歳の子どもがいること
育児休業給付金は、男女問わず利用できる制度です。条件を満たせば、契約社員やパートタイマーも支給の対象に。育休を考えている人は、育休前に職場に確認しておきましょう。
「育児休業給付金」申請の仕方って?
育児休業給付金の申請は、勤務している会社や事業所が行うことがほとんど。育休取得を申し出る際に、育児休業給付金の申請についても確認しておくとよいでしょう。
「育児休業給付金」申請に必要な書類は、初回と2回目以降で異なります。
<初回申請の場合>
・雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
・育児休業給付受給資格確認票
・育児休業給付金支給申請書
・賃金台帳、労働者名簿、出勤簿またはタイムカード等
・母子手帳など育児をしている事実を確認できる書類
書類として提出はしませんが、マイナンバーや育児休業給付金を受け取る銀行口座の記入が必要になるので、準備しておくとよいでしょう。
<2回目以降の申請の場合>
・育児休業給付支給申請書
・賃金台帳、出勤簿またはタイムカード
育児休業給付金の申請は、希望すれば自分ですることも可能です。その場合の手続きは、ハローワークで行います。
「育児休業給付金」支給日はいつ?
「育児休業給付金」の「支給日」はいつになるのか、確認しておきましょう。育児休業給付金は、給与のように毎月支給されるわけではなく、育休がはじまってから2か月に1回の割合で支給されます。
「育児休業給付金」は初回支給日が遅い?
育休は産後休暇が明けてからはじまるため、育児休業給付金の申請ができるのは、出産して2か月後からです。そこから受給資格についての審査がはじまりますので、実際に育児休業給付金を受け取るには、出産してから4~5か月、育休開始からは3か月程度かかるケースがほとんどです。
育児休業給付金の審査結果については、自宅に「育児休業給付金決定通知書」が届くことでわかります。この通知書が到着してから約1週間で指定した口座に入金されますが、具体的な振込日については、通知書に明記されていません。ハローワークに問い合わせをしても教えてくれませんので、通知書到着から1週間を目安に、銀行口座を確認するようにしましょう。
「育児休業給付金」2回目以降の支給日は?
前述したように、育児休業給付金は2か月に1回支給されます。2回目以降も都度申請が必要になり、支給決定まで約2週間、支給決定後に口座に振り込まれるまで1週間程度かかるとされています。
初回と同じく、支給日についてはわかりませんので、時期を見て銀行口座を確認するようにしましょう。
「育児休業給付金」利用の注意点
このように、「育児休業給付金」は育休開始後すぐに支給されるわけではありません。特に初回の支給は時間がかかりますので、その間にかかる生活費については、あらかじめ準備をしておく必要があります。その点を留意し、育休中に焦ることがないよう、この制度の内容をしっかりと理解しておきましょう。
「育児休業給付金」は延長できる?
「育児休業給付金」の支給期間は、原則子供が1歳になるまでですが、場合によっては期間延長が可能です。
《条件》
・保育園に申請したが、育児休業対象の子どもが1歳もしくは1歳6か月に達するまでに保育園(無認可保育施設は含まない)に入園できない
・育児休業対象の子どもが1歳もしくは1歳6か月になった後の期間に、子どもを養育する本人もしくは配偶者が、死亡や病気、ケガにより子どもを育てるのが難しくなった
・離婚などにより、配偶者(養育者)と別居になった
・6週間以内(双子や三つ子などの多胎妊娠は14週間以内)に出産予定である、もしくは、生まれてから8週間経っていない
いずれかの事由に該当した場合は、条件を満たすことで最長2歳まで段階を踏んで引き延ばすことができます。なお、上記の条件に該当した場合でも、1歳の時点で2歳まで一気に延長することはできません(1歳から1歳6か月、1歳6か月から2歳までの延長は可能)。
「育児休業給付金」の延長手続きは、育児休業給付金支給申請書に延長することを記載して提出します。その場合、延長要件を満たしていることを証明するために、必要書類の提出が求められます。保育所に入所できなかった場合は、それが証明できる通知書、病気の場合は、医師の診断書などがそれに当たります。延長については職場もしくは個人で手続きができますが、職場の該当部署にも必ず延長の連絡をするようにしましょう。
「育児休業給付金」がもらえない?
雇用保険に加入しているのに、「育児休業給付金」をもらえないというケースがあります。以下に該当する場合は注意が必要です。
ケース1:有期雇用者の場合
有期雇用者が育児休業給付金をもらうには、以下の条件を満たす必要があります。
・同じ勤務先に1年以上継続して勤務していること
・子供が1歳半に達する日までに、労働契約の期間が満了することが明らかでないこと
有期雇用者の場合、前職の雇用期間は通算されません。よって、育児休業給付金の受給条件である「育休に入る前の2年間で、11日以上勤務した月が12か月以上ある」を満たすことができなくなります。転職してまもない時期は特に注意が必要です。
ケース2:労使協定で対象外になる場合
無期雇用の場合でも、次に該当する場合は注意が必要です。
・雇用されてから1年に満たない人
・休業の申出日から1年以内に雇用が終了する予定の人
・1週間の労働日数が2日以下の人
これらに該当する労働者に対して、育休取得を認めないと会社が決定し、就業規則に記載している場合は、育休取得が難しくなります。該当する可能性がある人は、会社の就業規則をしっかりとチェックしましょう。
「育児休業給付金」がもらえない場合は?
まずは勤務先の会社に相談してみましょう。育休が難しい場合でも、時差勤務やフレックスタイム、テレワーク、時短勤務などを活用し、乗り切ることができることもあります。また、保育所に入所できない場合は、シッターサービスや自治体のファミリー・サポート事業を利用するのもひとつです。その場合はお住まいの市区町村に相談してみましょう。
最後に
育休中の家計を支える「育児休業給付金」は、給与のように毎月支給されるわけではありません。また支給日についても明確に決まっていませんので、注意が必要です。2か月に一度の支給であることを念頭に置き、しっかりと家族と話し合い、家計管理をしていきましょう。
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監修
コトヅテ 益田瑛己子(ますだ・えみこ)
ライター・キャリアコンサルタント/金融機関の営業職(FP職)として長年勤務し、現在はライター(ブック・Web)として活動中。趣味は、好きなアーティストのライブに行くこと。子供が自立し、仕事にまい進する日々を謳歌している。
執筆/京都メディアライン