「育児休業給付金」ってなに?
令和4年10月から「育児・介護休業法」の改正により、より利用しやすくなる育児休業。この記事では「育児休業給付金」の基本事項について解説します。
「育児休業給付金」とは
「育児休業給付金」は、育児休業中に勤務ができず、一定以上の給与を受け取ることができなくなった場合に、支給される給付金です。「育児休業給付金」は、労働者が経済的な不安を抱えずに子育てに専念できるように整備された制度です。
いつまで「育児休業給付金」はもらえる?
これまで「育児休業給付金」がもらえるのは原則、子どもが1歳になるまでですが、法改正で共働き夫婦がより利用しやすく変更が加えられました。
まず「育児休業の分割取得」が可能になります。1歳未満の子については、原則「2回」の育児休業まで、育児休業給付金が受けられるようになります。3回目以降の育児休業は給付金は受けられませんが、こちらの「例外事由」に該当する場合は、回数制限から除外されることに。
回数制限の例外事由
I.別の子の産前産後休業、育児休業、別の家族の介護休業が始まったことで育児休業が終了した場合で、新たな休業が対象の子または家族の死亡等で終了した場合
II.育児休業の申し出対象である1歳未満の子の養育を行う配偶者が、死亡、負傷等、婚姻の解消で その子と同居しないこととなった等の理由で、養育することができなくなった場合
III.育児休業の申し出対象である1歳未満の子が、負傷、疾病等により、2週間以上の期間にわたり世話を必要とする状態になった場合
IV.育児休業の申し出対象である1歳未満の子について、保育所等での保育利用を希望し、申し込みを行っているが、当面その実施が行われない場合
また、育児休業を延長する理由があり、その上で夫婦が交代で育児休業を取得する場合(延長交代)は、 子どもが1歳から1歳6か月と、1歳6か月から2歳の各期間において、夫婦それぞれ「1回」に限り、育児休業給付金を受けることができるようになりました。
「育児休業給付金」の延長について
両親ともに育児休業を取る「パパ・ママ育休プラス」を取得する場合は、子どもが1歳2か月になるまで延長されます。また、所定の条件を満たすと、最長子どもの年齢が2歳になる日の前日まで延長することも可能。
「育児休業給付金」を延長するには、次の条件のいずれかを満たすことが必要になります。
・保育園に申請したが、育児休業対象の子どもが1歳もしくは1歳6か月に達するまでに保育園(無認可保育施設は含まない)に入園できない
・育児休業対象の子どもが1歳もしくは1歳6か月になった後の期間に、子どもを養育する本人もしくは配偶者が、死亡や病気、ケガにより子どもを育てるのが難しくなった
・離婚などにより、配偶者(養育者)と別居になった
・6週間以内(双子や三つ子などの多胎妊娠は14週間以内)に出産予定である、もしくは、生まれてから8週間経っていない
なお、上記の条件に該当した場合でも、1歳の時点で2歳まで一気に延長することはできません(1歳から1歳6か月、1歳6か月から2歳までの延長は可能)。
「パパ・ママ育休プラス制度」の延長条件
「パパ・ママ育休プラス制度」を利用している場合の延長条件は次の通りです。
・育児休業対象の子供が1歳になる誕生日前日までに、配偶者が育児休業をとっている
・本人の育児休業開始予定日が、子どもの1歳の誕生日より前である
・本人の育児休業開始予定日は、配偶者の育児休業の初日以降である
パパ・ママ育休プラス制度の延長には、“保育園に預けられない”などの理由は必要ありません。夫婦で育休をとって、子どもを育てたいという希望を叶えるための制度だからです。
新たに「産後パパ育休」制度が創設
さらに、令和4年10月からの法改正で「産後パパ育休(出生時育児休業)」制度が創設されました。これは特例として存在した「パパ休暇」が制度化されたもので、子どもの出生後、8週間以内に4週間まで育休を取得することができる制度。父親がより育休を取りやすくするために導入される制度で、この産後パパ育休を取得した場合、取得する日数が4週間になるまでは、2回までの分割取得をすることが可能に。これによって例えば、出生後2週間休みを取り、業務に1週間復帰し、また2週間休みを取る…といった働き&休み方をすることができます。
また、出生時育児休業給付金を受けることもできます。この制度とパパママ育休プラス制度は併用が可能です。
「育児休業給付金」がもらえる条件とは?
「育児休業給付金」をもらうには条件を満たす必要があります。条件や申請方法について見ていきましょう。
「育児休業給付金」がもらえる条件について
「育児休業給付金」をもらうためには、次の条件を満たさなければなりません。
◆育児休業前の条件
・雇用保険の被保険者であること(雇用保険に加入していない人は対象外)
・休業開始前の2年間で、就業日数が11日以上の月が12か月以上あること(12か月ない場合は、賃金の支払いの基礎となった時間数が80時間以上の月が12か月以上あればOK)
なお、育児休業中に、すでに上の子供の育児休業を取っていた場合や、申請者本人に病気やケガなどのやむをえない事情がある場合に限り、給付を認められるケースがあります。また「期間が決まっている雇用」の場合、子どもが1歳6か月になるまでの間に、その労働契約期間が満了することが明らかでない際に支給要件を満たします。
◆育児休業中の条件
・育児休業中に、賃金(休業前の1か月の賃金の80%以上)が支払われていない
・育児休業中の就業日数が、10日(80時間)を超過しない(1か月あたり)
・生まれてから1歳未満の子どもがいること。延長が認められた場合は、1歳6か月または2歳の子どもがいること
就業日数や賃金管理については、事前に勤務先に問い合わせて、必要があれば調整の相談をしておくようにしましょう。勤務先は受給資格確認手続きを行政と行う必要があるため、勤務先とのこまめな連携は必要不可欠です。
「育児休業給付金」の申請方法について
「育児休業給付金」を申請する場合の方法について見ていきましょう。
「育児休業給付金」を申請する場合
「育児休業給付金」は、勤務先を通して所管のハローワークに申請します。申請は、2か月に1回が原則とされますが、申請を毎月することも認められています。また、希望があれば、自分で申請することも可能です。「パパ・ママ育休プラス制度」や期間延長の手続きについても、「育児休業給付金」と同様です。
「育児休業給付金」に必要な書類とは
「育児休業給付金」申請の手続きに必要な書類は、以下の通りです。
【勤務先が準備する書類】
・雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
・育児休業給付受給資格確認票
・育児休業給付金支給申請書
・賃金支払い状況を証明する書類(賃金台帳や出勤簿など)
【被保険者(休業する人)が準備する書類】
・(初回のみ)育児中であるという事実が確認できる母子健康手帳などの写し
2人目以降も「育児休業給付金」はもらえる?
第1子の「育児休業給付金」をもらっている間に第2子を妊娠した場合でも、第2子にかかる「育児休業給付金」をもらうことができます(条件あり)。ただし、第1子の「育児休業給付金」は第2子の出産日を以って終了となります。
「育児休業給付金」の計算⽅法
「育児休業給付金」の給付金額計算方法について、解説します。
給付金額の計算方法
「育児休業給付金」は次の通りに計算します。
休業開始6か月以内:支給額=休業開始時賃金日額×支給日数(30日)×0.67
休業開始6か月以降:支給額=休業開始時賃金日額×支給日数(30日)×0.5
休業開始時賃金日額とは
休業開始時賃金日額とは、勤務先が提出する休業開始時賃金月額証明書に記載されている休業開始前の6か月の賃金を、次の通り計算して算出します。
賃金日額=育休開始前(女性は産休開始前)6か月の賃金÷180日
「育児休業給付金」は、支給単位期間(1か月)ごとの計算となります。
「育児休業給付金」には上限と下限があります。毎年8月に改定されますので事前にチェックしておきましょう。参考までに令和5年7月までの金額を記載しておきます。なお、「育児休業給付金」は課税されません。
支給上限額(令和5年7月31日までの額)
休業開始時賃金日額の上限額は15,190円、下限額は2,657円となります。
支給日数が30日の場合の支給上限額と支給下限額は以下のとおりです。
(給付率67%)支給上限額 305,319円 支給下限額 53,405円
(給付率50%)支給上限額 227,850円 支給下限額 39,855円
「育児休業給付金」がもらえない場合がある?
「育児休業給付金」は、全ての労働者がもらえるわけではありません。
「育児休業給付金」がもらえない場合とは
以下に当てはまる人は支給対象外となりますので、注意しましょう。
・雇用保険に加入していない人
・妊娠中に退職する、もしくは退職する予定の人
・育児休業開始時点で、離職する予定がある、もしくは離職する人
・勤務先の状況や事情により、育児休業が取れない人
・勤務先が「育児休業給付金」の申請をしていなかった人
・「育児休業給付金」をもらっている間に、勤務先が倒産または廃業してしまった人
その他、働き始めて1年未満の人や、転職で雇用保険に加入していなかった時期がある人も、支給の対象外となることがあります。ただし、別条件を満たせば「育児休業給付金」を利用できるケースもありますので、事前にチェックしておきましょう。
参考:育児休業給付金の支給条件│SBIマネープラザONLINE
最後に
子育て中の生活を支える「育児休業給付金」は、雇用保険加入者なら条件を満たせば利用できます。申請の手続きは勤務先が行うので、「育児休業給付金」を考えている人は、まず勤務先に確認を。夫婦で子育てをするための「パパ・ママ育休制度」や「産後パパ育休」、期間延長などを上手く活用して、育休時間を安心して過ごせるように準備しましょう。また、働く期限が決まっている「有期契約労働者」の場合、会社員とは条件が異なる部分が複数あるため、事前確認が必要です。