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2022.10.28

子どもが勉強に向かう「10秒アクション」の威力| 「まず動く」ことでやる気は後からついてくる

うちの子は、「勉強しなさい!」と言われるまで勉強しない。こんなに意志が弱くて怠け者の性格で、これからやっていけるのか……そんな風に心配していませんか? ですが、なかなか行動できないのは能力や性格の問題ではなく、方法さえ知れば誰でも「すぐやる子」になれるのだそう。『やる気に頼らず「すぐやる人」になる37のコツ』著者の大平信孝氏にその理由を聞きました。

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脳を刺激すれば行動のスイッチを入れられる

学校や塾の宿題、テスト勉強、習い事の練習など、やらなければいけないけれどなかなかやる気が出ない、ということは誰しもよくあることです。

そんな子どもに、ただ「早くやりなさい!」「勉強しなさい!」と怒っても効果はありません。子どもの「やる気」を引き出すには、親のかかわり方を変えることが重要です。

まず知ってほしいのは、すぐ動けないのはやる気や意志、根性の問題ではないということ。人間の脳の仕組みがそうなっているからなのです。人間の脳は生命維持のため、命に別状がないかぎり、できるだけ変化を避けて現状維持をしようとする防衛本能が働いています。だから、いっきに完璧に物事をやり遂げようとしたり、今までの生活習慣や行動を急に変えようとしても、ほとんどの場合、長続きせず、三日坊主やリバウンドを起こすことになるのです。

そうなると、なおさら「すぐやる人」になるのは難しいのではないか? と不安になるかもしれませんが、安心してください。私たちの脳には「側坐核」と呼ばれる場所が存在します。この側坐核が刺激されると、意欲を高めたり、楽しいと感じる「ドーパミン」というホルモンが分泌されます。このドーパミンが行動力の源になるのです。つまり、このスイッチを入れさえすれば、誰でもすぐに動くことができるようになります。

しかし、側坐核というスイッチは、自動的にオンにはなりません。「よし、やるぞ!」と気合いを入れるだけではスイッチを入れることはできないのです。

また、周りから応援されたり叱咤されてもダメ。私たち自身が“なんらかの行動を起こす”ことで刺激を受けて、はじめてスイッチがオンになるのです。

ですが、先述の通り、脳は大きな変化を受け入れずに元に戻そうとします。そのため、小さなアクションから始めるのがポイント。そうすることで、面倒くさがりで、変化を嫌う脳でも対応できるのです。

待っていても“やる気”は降ってこない

リビングで勉強する女子学生

この小さなアクションを活用して、行動に初速をつけ、すぐ動けるようになる方法としてお勧めしたいのが、最初の一歩のハードルを極限まで下げてみる「10秒アクション」。まず試しに10秒でできることから動いてみるのです。

やりたいこと、やるべきことの「最初の10秒はどんなことをするのか?」と考えてみましょう。勉強だったら、「〇〇のテキストを開く」といったイメージです。

小さな一歩に大きな効果

「よし!勉強をはじめるぞ!」とやる気を出さなくても、ひとまずテキストを開けばミッション達成。10秒着手してみてスムーズにいくのであれば、「1問だけ問題を解いてみる」「もう1問解いてみる」など、そのまま続けましょう。

この10秒アクションという小さな一歩でも側坐核を刺激する効果があり、その波に乗って勉強、ランニング、筋トレ、仕事、片づけなどが15分、30分続くということも期待できます。取り組むまでが大変でも、一度はじめてしまえばあとはスムーズになることも多いのです。

10秒でできるアクションは些細なことですが、10秒アクションの段階で失敗する人はほとんどいません。「失敗しない」からこそ、その後の行動につながるわけです。

まずは、「待っていても“やる気”は天から降ってこない。“まず動くこと“でやる気は後からついてくる」というメカニズムを子どもたちに教えてあげてください

子どもとしても、毎日ガミガミ言われるのはうんざりでしょうし、少なからず「早く終わらせられたら自分もラクなのに」という気持ちがあるはずですから、親のアドバイスに耳を貸すのではないかと思います。

「行動目標」と「結果目標」を使い分ける

目標を立てるイメージ

次にお伝えする方法は「結果目標」ではなく「行動目標」に注目するということです。思うような成果が出ないと、「今月はあきらめて来月頑張ろう」「どうせいい点数をとれないなら、勉強しても意味がない」など、モチベーションが下がってしまいがちです。そうならないためには、結果目標ではなく、行動目標にフォーカスすることが有効です。

「結果目標」とは、「数学のテストで◯◯点を取る」「部活の試合で入賞する」「検定に合格する」といった結果を重視した目標のことです。一方の「行動目標」とは、結果を出すために必要な具体的行動にポイントを置いた目標です。勉強の例で言えば、「毎日、英単語を10個覚える」「週に数学の問題集を5ページ解く」というのが行動目標になります。

結果目標には、マンネリ化を防ぎ、緊張感を保つことができるメリットがあります。勉強がうまくいっているときは結果目標を意識することで、よりよい成績をあげられる可能性が高まります。しかし、失敗が重なったとき、もしくは外的要因で目標が達成できないことが続くと、ストレスや不安を感じやすくなり、行動が止まる原因になります。

行動目標はストレスを感じにくい

一方、行動目標は、成果、結果と関係なく、自分で決めたことをやればいいだけなので、失敗することが格段に減ります。ストレスや不安を感じにくくなるので、思うような結果が出ないときは、実行できる行動目標に置き換えていくと、モチベーションを落とさず、結果を出すための行動に着手することができるようになります。思うように成果が出ないときは、過度に結果にこだわるのをやめ、行動にフォーカスしてみましょう。

ちなみに、前述した「10秒アクション」は、行動目標を細分化したものです。行動目標を設定しても、なかなか動き出せないときは、「10秒アクション」を活用することで、着実に実行できるようになります。

なお、行動目標にフォーカスして、結果が出るようになったら、再び結果目標にもフォーカスしてください。行動目標ばかりを意識し続けると、これもマンネリ化してしまうからです。

「行動目標」と「結果目標」の両方を設定して上手に使い分けましょう。

想定外を織り込んだプランを複数用意

手帳とカレンダーを用意し、計画を立てている様子

計画を立てる際は、細かくスケジューリングしすぎないことも大切です。ざっくりした時間割を作りましょう。

具体的には次のように休日を5分割し、それぞれの時間帯に合ったタスクを割り振っていきます。


➀朝食前まで

②午前中
③15時まで
④夕食の時間まで
⑤就寝まで

 

この時間割のポイントは、その時間内に「すべきことを事細かに決める」のではなく、「最低限したいことを決めておく」ことです。やることが終わったら残った時間で、プラスアルファのスケジュールをこなします。「自分はどの時間に集中しやすいか」といったことも考えつつ、それぞれのお子さんに合ったプランを一緒に立てていきましょう。

こうして計画を立てても、「今日は計画通りにできなかった」ということが続くと、やはりモチベーションの低下につながります。それを防ぐために、想定外を織り込んだプランを複数用意しておきましょう。

宿題の例で言えば、

「プランA:土曜日の日中にやる」

「プランB:(土曜日の日中にできない場合を想定して)土曜日の夜中にやる」

「プランC :(土曜日が丸々使えない場合を想定して)日曜日の朝5時に起きてやる」

「プランD:(全てのプランが崩れた場合を想定して)日曜日の15時以降は、絶対に予定を入れない」

といった具合です。

このように、あらかじめ複数のプランを立てておくことで、想定外のことが起きても「予定通り」に事を運ぶことができます。

「同じ場所で同じことをする」で集中

また、「時間と場所を固定する」方法もお勧めです。たとえば、我が家の中学生の息子は、勉強しなければならないときには、自分なりに集中しやすい時間帯に、スマホを家に置いて図書館や有料自習室などに行くようにしていました。

「図書館では勉強する」といように、「同じ場所で同じことをする」ことにより集中できる効果を、心理学の世界では「アンカリング(条件付け)」と呼んでいます。

この条件反射状態をつくるためにも、行き当たりばったりではなく、「この場所では、この勉強をする」と決めて可能なかぎり実行してみましょう。

やる気があろうとなかろうとアクションを起こす

勉強に集中する女子児童

「よし!勉強しよう!」というやる気があろうとなかろうと、とにかくその時間になったら家を出て図書館に向かってしまう。

そのアクションを起こすことで、やる気も後からついてきます。もちろん、これは家の中でもできます。「勉強机の上では勉強以外しない」「単語を覚えるのはリビングテーブルのこの椅子で」など、家の中をいくつかのエリアに分けて考えればいいのです。

いかがでしょう。これらの「やる気」スイッチを入れるテクニックは子どもに限らず大人にも有効ですので、ぜひ親子で取り組んでみてください。

やる気に頼らず「すぐやる人」になる37のコツ (科学的に先延ばしをなくす技術)『やる気に頼らず「すぐやる人」になる37のコツ (科学的に先延ばしをなくす技術)』(かんき出版)

メンタルコーチ

大平 信孝(おおひら のぶたか)

株式会社アンカリング・イノベーション代表取締役。メンタルコーチ。中央大学卒業。長野県出身。会社員時代、自身が部下育成に悩んだ経験から、脳科学とアドラー心理学を組み合わせた、独自の目標実現法「行動イノベーション」を開発。部下育成のためのメソッド「行動イノベーション・トーク」を広めるべく、「行動イノベーションアカデミー」を運営。これまでサポートしてきた企業は、IT、通信教育、商社、医療、美容、小売りなど40以上の業種にわたる。主な著書に、『本気で変わりたい人の行動イノベーション』(秀和システム)、『先延ばしは1冊のノートでなくなる』(大和書房)、『指示待ち部下が自ら考え動き出す!』(かんき出版)など。

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東洋経済オンライン

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