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LIFESTYLE インタビュー

2024.06.29

ソニンさん「環境を変えずにとどまっていることのほうが辛かった」。訪れた人生最大の転機

 

注目の韓国ミュージカル『ラフヘスト〜残されたもの』が日本初上演。主人公を演じ、本作においては訳詞も務めたソニンさんに、お話を聞きました。過去と向き合う物語の見どころは? そして、ソニンさん自身がこれまでを振り返ると…?

注目の韓国ミュージカルが、ソニンさん主演で日本初上演!

1930年代の韓国。激動の時代を生きた3人の芸術家を描くミュージカル『ラフヘスト〜残されたもの』。2024年の韓国ミュージカルアワードで作品賞・脚本賞・音楽賞の三冠に輝いた名作が、日本初上演となります。主人公のキム・ヒャンアンを演じる、ソニンさんにインタビュー。

2人の天才芸術家を夫に持ち、自身も芸術家として、ひたむきに生きたひとりの女性の人生。その見どころをたっぷりお話しいただきました。そして、ソニンさん自身の「人生の最大の転機」とは? 物語に負けじとエネルギッシュでポジティブな姿勢に元気をもらえるはず!

──『ラフヘスト〜残されたもの』では初主演に加え、初の韓国ミュージカル出演、初めて訳詞に挑戦するなど、「初」づくしとなりますが、意気込みはいかがですか?

普段は稽古からの参加になりますが、今回は訳詞を担当するためスタッフ会議から入らせていただきました。私にとって舞台が「すでに始まっている」感覚で、すごく贅沢な時間です。役に入る前に制作側のお話を聞いて、充実した情報が備わっていて…これから稽古が始まればますます作品が深まっていくと思うと、“どこまで行けるんだろう?”といつも以上にワクワクしています。

──韓国でもすばらしい賞を受賞されている作品ですが、プレッシャーはないでしょうか。

実は、プレッシャーはまったく感じていなくて(笑)。というのも、演出の稲葉賀恵さんが「日本版」を作ることを強く意識されているからです。登場人物は実在した芸術家で、韓国人にとってはある程度予備知識がありますが、日本人には馴染みのない方が多い。その点でも、韓国版とは違う切り取り方になるのではないかと。

単に韓国の作品を再現するなら、字幕をつければいいだけの話ですよね。そうではなくて、日本のみなさんの心にしっかりと届くように、“私たちの作品”を作っている気持ちです。なので、比べられることはあまり気にしていません。うーん、でも本国の関係者の方が観にこられたらちょっと緊張するかもしれませんが(笑)

──訳詞ではどのようなことを意識しましたか。

まずは原作の、韓国語の言葉たちをリスペクトしつつ──でも、直訳するだけでは共有しづらい部分もあります。原語のニュアンスや文化の捉え方を意識しながら、いちばん日本のみなさんに伝わる表現を探りました。

あとは歌いやすさや、音楽に乗ったときにきれいに聞こえるか。韓国語あってのメロディを殺さないように、日本語になっても原曲のよさを活かせるように気をつけましたね。

(訳詞の)基盤ができあがったあとも、流れで通したときに違和感がないかを確認しました。全体を通して歌ってみると、芝居から歌への繋がりがうまくいかない場合もあるんです。その部分をすべて書き出して、稲葉さんに何度も相談して整えていって。「こういう風にしたいんですが、このバリエーションならどれがいいですか?」などと、色々な側面からアプローチして作っていったので…稽古前の段階としては、良い状態に仕上げたなと!

──韓国語と日本語、両方のニュアンスを理解されていることに加えて、歌手としても、役者としても歌に向き合ってきたソニンさんだからこそわかることもありそうです。

そうかもしれません。普段なら稽古に入ったときに初めて役者が歌に息を吹き込むので、そのタイミングで「この部分がちょっと歌いづらくて…」というように訳詞家さんと相談が始まります。

でも、今回はこの段階でできる限り精査しているので、その分、稽古でも芝居を深める時間が増えるんじゃないかと思っています。他の出演者の方々も、「やりやすい」と感じてくださったらうれしいです。

誰もが持つ心の傷とどう向き合うのか。その答えが見つかるきっかけになれば

──物語の見どころを教えてください。

ずばり、主役が女性ということ。登場人物のなかでは男性2人、イ・サン(相葉裕樹さん)とキム・ファンギ(古屋敬多さん)のほうが歴史的には有名な芸術家なのですが、あえてその妻だったキム・ヒャンアンにスポットをあてた、ということがポイントだと思っています。

ヒャンアンは「この時代にこんな強い女性がいたなんて!」というくらい、パワフルで行動力がある女性。けれど家族の反対や世間の目もあって、かなりの荒波にもまれてきた人でもあります。私も「本当に実話なの⁉︎」と思うほど、タフな展開の連続なんです。それでもめげずに生き抜いた彼女のエネルギーに、現在に生きる私たちも勇気をもらえるはず。

──生涯でふたりの天才芸術家の妻となり、ヒャンアン自身も芸術家として活躍していたのですよね。

ただ、この作品はただの成功者の物語ではありません。とくにひとりめの夫であるイ・サンは、繊細なアーティスト気質で、過去のトンリム時代の彼女を振り回します。そのうえ、彼は若くして亡くなってしまう。一見すると不幸な出来事ですが、人生を終えるとき、彼女自身はこのことをどう見るのか。かつての自分をどう捉えるのか──そこが物語のミソでもあります。

やがてヒャンアンは過去の自分に会いに行くのですが、観る人が彼女を自分自身に置き換えて、そんなファンタジーを追体験できるんじゃないかと思います。「もし、過去の私に会えたらどうするんだろう?」「トラウマになった出来事を受け入れられるだろうか?」さらには「この先、人生を終える瞬間どんな私でいられるんだろう」…というように。

──壁にぶつかることも多いOggi世代には、響くものがたくさんありそうです。

現代人はがんばりすぎていて、「このままでいいのだろうか」とか、のちのち「ああしておけばよかった」とか…思い悩む人は多いですよね。「他に選択肢があったんじゃないか? あのときの選択で正解だったのかな?」と、誰もが一度は気にしたことがあるはず。

過去と向き合うこの物語を通して、みなさんが「正解」を見つけるきっかけになってくれたら。そう願っています。

意地でも「今まで選んできたことが正解!」と思っています

腕を組むソニンさん

──ソニンさん自身は、「あの時こうしておけばよかった」と思うことはありますか?

私はやっておいてよかったことばかりです! 過去の自分を否定したくないんです。そうしないと今の自分を楽しく生きられないから。だから意地でも、「今まで選んできたことが正解!」と思っているけれど、あのときこうしていたら違ったのかな?と考えることも、あるにはあります。

具体的には…もうちょっと遊んでいたら、違う状態だったのかも、とかですね(笑)。ちょっとやんちゃなほうが役の幅が広がる、という説もあるじゃないですか。たとえば夜出かけたり、クラブで踊ったり、お酒を飲みすぎて酔っ払ったり? 実際には、完全に介抱する側の人でした(笑)。

私は昔からすごく真面目で、事務所に言われたことを守って、遊ばずに仕事一筋!だったんです。でも、そんな自分だったからこそ今の自分がある。他の人にはない、唯一無二の個性を持っていると信じています。

──人生を肯定できるポジティブな強さは、どこからくるんでしょうか。

自分の人生を他人に判断されたくないからでしょうね。とくにSNSが普及したこの10年ほどは、あらゆる方向から意見が飛んでくるようになって…他人の主観が目に見える時代。私自身も私が知らない、世間の「私のイメージ」が届くようになりました。

そんななかで、たとえば世間から「ダサい」とか「不幸」だとか思われたとします。そのとき「私はこれでいいんです!」と自信を持って言えないと、その「世間のイメージ」に流されて、自分を見失ってしまう。

だからこそ、自分の人生を肯定してあげることが大切かなと。舞台に立つのはものすごい緊張感ですから、ドン!とブレない信念を持っていないと毎日本番なんてできません(笑)。

それでも壁にぶつかることはありますが、もうどうにもならない!と思ったときは友達に話を聞いてもらうようにしています。顔の見えない「世間」の意見より、私のことをよく知っている人の視点を参考にするのがいちばんです。

29歳で最大の転機が。ニューヨークで取り戻した「本来の自分」

──では振り返ってみて、人生最大の転機はどこでしたか。

やっぱり29歳のときのニューヨーク留学は大きかったですね。

──すでにお仕事も順調だったころですよね。決断にはかなりのエネルギーが必要だったのではないですか?

当時は、環境を変えずにとどまっていることのほうが辛くて、モヤモヤしていました。たまたま旅行でニューヨークに行く機会があって、ビビビっときて。私、ここに住めば何かが見えるかもしれない!と直感したんです。そうしないと、その頃抱えていたモヤモヤが解決しないと思いました。今思えば、若気の至りだったかもしれません。

周囲にはすごく止められましたね。「せっかく仕事もあるのに、1年間も捨てるなんてもったいない」と。でも、反対する人はいつまでも反対するんですよね。自分のことじゃないからこそ気軽に「もったいない」「やめたほうがいい」って言えるんだ、とあるとき気づいたんです。そして、今行かなかったら絶対後悔する!と、なかば強行突破。結局、ニューヨークで1年半暮らしました。

──実際に1年半過ごしてみて、得たものはありますか?

すぐにはわからず、あとからわかったことが多かった気がします。帰国後は、これで何か得られたのかなあ?という気持ちで、自分自身はそこまで変わった感覚もなくて。でも、周囲からはすぐに「変わったね」と言われるようになったんです。それは演技にも反映されていたようで、お客さんからの評価にも表れました。

29歳って、女性としてもさまざまな転機のとき。その時期にもう一段階、夢を追うことを決めたのは私の人生とって大きな選択でした。結果、ますます仕事人間になりましたし(笑)、演技力などが変化したかは自分ではわからないけれど、人として大きく成長したと思います。

若い頃は何かと世間の意見にとらわれがちでした。アイドルとしてデビューしたことで、「かっこいい私でいないと」と本当の自分を押さえ込んでいたのかもしれません。それこそ、「かっこ悪い自分」を見せたくなくてトラウマとも向き合うことができませんでした。

ニューヨークの暮らしで、何も着飾らない、ありのままの自分に戻ることができたんだなと。だから「変わった」というよりも、“本来の私”を取り戻したのかもしれませんね。

──その後も舞台に映像に、第一線で活躍中のソニンさん。40代を迎えて、これからの目標はいかがですか?

『ラフヘスト』では、稽古に入る前からじっくりと製作陣とお話することができて、舞台を作るとはどういうことなのか改めて考え、いっそう愛情をこめて携わるきっかけをいただきました。やっぱりクリエイションって楽しい。役者としても、裏方としても、素晴らしい作品に関わり続けていきたいです。

もともと裏側からエンタメを支える仕事にも興味があって、去年はアメリカのヘルスコーチの資格も取ったんです! 1年間毎日勉強して、それはそれは大変でしたが(笑)。

──お忙しい日々の中、努力を怠らず素晴らしい! 前向きなソニンさんの生き方は、働く女性に勇気をくれる気がします。

もしそうだとしたら、とてもうれしいです。ちなみに今回演じるヒャンアンは、自分でもそっくりだなと思うくらいシンパシーを感じる部分が多くて。『ラフヘスト』を観ていただくと、ヒャンアンを通して「ソニンもこんな感じの人か!」とよりわかっていただけるかと…(笑)。ぜひ、劇場でご覧いただけるとうれしいです!

belle waves #1ミュージカル『ラフヘスト〜残されたもの』

belle waves #1ミュージカル『ラフヘスト〜残されたもの』ビジュアル

2024年7月18日〜28日 東京芸術劇場シアターイースト

公式サイト
公式X(旧Twitter):@bellewaves_st

出演:ソニン 古屋敬多 (Lead) 相葉裕樹 山口乃々華
演出:稲葉賀恵
日本語上演台本:オノマリコ
訳詞:オノマリコ、ソニン
音楽監督:落合崇史
企画:avex live creative、conSept
後援: 駐日韓国大使館 韓国文化院
主催:ミュージカル『ラフヘスト~残されたもの』製作委員会

Original Korean Production: HONG company Inc.
Producer: Seunghee Hong
Supported by Whanki Foundation-Whanki Museum
Development Support : CJ Cultural Foundation

ソニン
1983年3月10日生まれ、高知県出身。2000年、『EE JUMP』のメンバーとしてデビュー。2002年よりソロでの活動を開始し、2003年のドラマ出演を機に女優として舞台、ドラマなどで活躍。近年の出演作としてミュージカル『FACTORY GIRLS〜私が描く物語〜』、ミュージカル『キンキーブーツ』などの舞台作品や『大病院占拠』『新空港占拠』(NTV)、『育休刑事』(NHK総合・NHK BS4K)など、TVドラマにも精力的に出演中。

公式Instagram:@sonim_official
公式X(旧Twitter):@Sonim_official

シャツ:グレースクラス ジレ:JNBY スカート:Diagram イヤリング:シースキー ブレスレット:ヘンカ リング(人差し指):スティールジェニック リング(中指):YarKA

撮影/田中麻以 スタイリスト/外山由香里 ヘアメイク/石田絵里子 取材・文/徳永留依子

※本記事は2024年6月21日に公開されたOggi.jpと同内容になります。

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