【小倉優子さんインタビュー Vol.1】3足のワラジをはく多忙な日々は、合理的なハンドリングで臨機応変に回していく
ふんわり、おっとりしたパブリックイメージをもつ“ゆうこりん”こと小倉優子さんが、学生・タレント・子育ての3足のワラジを履いてからの慌ただしい日々の様子は、小倉さんのYouTubeチャンネルにアップされた動画からかいまみることができる。たとえば1年前、“大学に入学して1か月の近況報告”によれば、毎朝4時起きで夜23時まで予定がびっしり。週に4日は登校して、1限から4限まで授業を履修する日と、授業は午前中にかためて午後は仕事や子どもの行事を入れる日とにわけて時間をやりくりしてきた。
「月曜日は夕方6時くらいまで授業をだだっと詰め込んで、その日は母にお願いして子どもたちをみてもらっていました。3、4年生になるとみんなは就活がありますが私の場合はそれがないので、4年で4分割して履修しようと。そのことでみんなより少し楽に進められている感じですね。これは行ける!と思ったのですが、1年の1学期は詰め込みすぎて疲弊してしまい仕事も子育ても中途半端になりそうだったので、それ以降は無理のないように授業を入れています」
子どもたちとの料理動画では、長男と次男を自然に巻き込んでにぎやかに手際良く調理をしながら、ぐずる三男を上手にほめてあやして仲間にまねき入れたり、疲れた日はデリバリーに頼ってみたり。合理的かつ迅速に子どもたちをハンドリングする様子はときに倍速再生の動画を見るかのようなスピード感で、小倉さんのたくましいママ采配に元気をもらえた気分になれる。ところがそんな小倉さんも、試験やレポートと本業の仕事のハードスケジュールが重なると体力的に苦しくなることも。
「でも、何がどう大変だったのか、最近はわりとすぐに忘れてしまうんですよね(笑)。基本的に忙しくしているほうが好きなんです。私のもともとの性格が楽観的というわけではないので、何かしているほうがネガティブモードな思考にならずに過ごせるんです。ただ、最近は寝られるときはしっかり寝るようにしています!」
40歳直前で挑んだ大学受験が人生の大きな転機に
「大学に行って今の若い方たちと接していると、10代でもみんなすごく考え方がしっかりしていることに驚きます。だけどかつての私は全然で。今思えば、20代前半の私は仕事に対する意識もあまり高くなかった気がします。無知で幼さもありましたし、仕事を始めてそれほど時間もたっていないので、今のように“こんなことがしてみたい”などと、誰かに自分の意見を言えるような仕事環境でもありませんでした」
その時期のことをとあるバラエティ番組で“仕事の忙しさに心がついていかなくなった”と振り返っていた小倉さん。“こりん星”で大ブレイクし、バランスをとろうと好きな料理の教室に通って生活を整え、20代後半で結婚と出産を経験。30代半ばで再び人生の幸せをかみしめたものの、その後シングルマザーに。そんなタイミングでオファーを受けた大学受験の番組企画が、文字通り小倉さんの人生の大きなターニングポイントとなった。
「30代後半の数年間は、離婚をしたことでものすごく気持ちが落ちていました。そこへコロナ禍も重なって、 “私なんて…”と、ただただマイナス思考で過ごしていたのです。そんなときに受験企画のお話をいただいて。“人生をここで変えたい”と奮起しました。私は亥年なのですが、“これっ!”と決めたら亥のように迷わず突き進むところがあるんで(笑)。大きなプレッシャーもありましたが、“これを頑張ったらきっと何か変われるはず”と信じていたので、つらさはあっても投げ出したい気持ちはありませんでした。ただ、できる限りの時間を勉強に費やしても思うように成績が伸びていかなかったことに対しては、とても申し訳ない気持ちと悔しさでいっぱいでした。
第1志望は早稲田大学教育学部ということで企画がスタートして、でも合格ラインに達するような成績には全然至らなくて。“もし早稲田に受からなかったら、もう1年間受験勉強を続けたほうが自分のためになるかもしれない”とも考えていました。ところが、今の大学から合格通知をいただけて。そのときふと浮かんだフレーズがあったんです。それは“置かれた場所で咲きなさい”という渡辺和子さんの言葉でした。当時から私はキリスト教学に関心があったので、渡辺シスターの言葉を思い出して“ご縁をいただいた大学で頑張りたい”と入学しました。実際に大学に行ってみて本当に良かったと思っています。いちばん“良かった”と思うのは、自分の思考が変わったことです。それまでの強いネガティブ思考がどんどん薄れていったのです。離婚によって子どもたちの生活も振り回してしまい、そのことに対して強い申し訳なさを感じていました。また、自分のことをダメな母親だと許せない気持ちもありました。そのマインドがずっと抜けなかったのです。
それが大学に通い始めてから、後ろ向きな気持ちが少しづつ薄れていって。もう変えることも戻ることもできない過去の出来事を悔やんでも仕方がないから、これからは前だけを見つめていこうと思えるように変わってきました。合格した白百合女子大学に通い1歩前に進めたことが、気持ちや心を変えてくれたのです。
また私自身、高校2年生から芸能の仕事を始めていたこともあって、学生生活の記憶や経験が乏しかったんです。実は、大学も10代のころに1度中退を経験しているんです。ですから大学に行って過ごすことで、これまでの自分に欠けていたものを補えているような気がするんです。
たとえば、授業が終わったあとの“このお店に行ってみようよ”とか、流行りものについての何気ない雑談のひとときとか。子どもがいるから一緒には行けないんですけれども、話しを聞いたりその場にいるだけでも、あのときにできなかったことや味わえなかった時間を埋めてもらっているような、そんな気がして。大学に行くと可愛いお友達のおかげですごく気持ちが癒されています」
無理に形にしようとせず、置かれた環境から吸収するのもひとつの学び
「私を大きく変えてくれた大学での学びですが、今専攻している児童文化学科は、わかりやすい資格がある領域ではないんです。それで“社会人の入学だし、ただ通うだけでなく何か自分にとって形になるものを専攻したほうが良かったのかな…?”と、思ったことがあったんです。そのことを大学の先生に話してみたら “必ずしも形にすることにこだわらなくてもいいんじゃない?”と言ってくださって。“だって、子どもはなんにもない野原でも遊ぶことができて、そこからいろいろなことを吸収しているでしょう?目には見えない大切なことってたくさんあるよね!”と。確かにそうだなと思えました。今は新しい環境で、10代のお友達と一緒に勉強する毎日が、自分の経験値を上げていってくれるのを感じています。
卒業の時期についても、必ずしも4年で卒業することにはこだわらなくてもいいかなと思っているんです。子どもの行事や仕事が重なったことで単位を落としてしまった科目もありますし、特に三男は今幼稚園生なので幼稚園生活の見守りに力を注ぎたい時期です。ですから時間はかかっても、学業も子育ても自分が納得できるなかで卒業をめざしたいと思っています。
こんなふうに、いろいろなことを自分で考えて結論を出せるようになれたのは、やはり離婚を経験したことが大きいなと感じています。自分でジャッジしなくてはいけないこと、決断や選択しなければいけないことが本当に増えて、そのことで鍛えられているんですよね。本当は結婚生活が続けば良かったのですが、それはできなかったので…。過去や未来に思い悩むのではなく、今目の前のことだけを見ようと思います。こうして、たくましさが日々強まっているのを自分でも感じています(笑)」
Profile
小倉優子さん
ママタレント・40歳|おぐら・ゆうこ/1983年、千葉県生まれ。16歳でスカウトされ2001年に芸能界デビュー。“ゆうこりん”の愛称でお茶の間の人気を博し、テレビや雑誌などで幅広く活躍。プライベートでは23歳のときに多忙な生活を見直そうと料理を学び、のちにパンアドバイザーの資格を取得する。20代後半で結婚と出産を経験。2022年にテレビ番組の大学受験企画の出演依頼を受け、自身の人生の転機とするべくチャレンジを決心。411日間に渡る受験勉強期間を経て、白百合女子大学人間総合学部児童文化学科に合格する。現在は12歳、7歳、4歳の男の子を育てるシングルマザーとして仕事に母業に学業に邁進中。2024年は大学の春休みを利用して健康アドバイザーと管理健康栄養インストラクター資格を取得。10月からは7年以上ぶりのドラマ『夜ドラ 未来の私にブッかまされる!? 突然現れた謎のオジサンは、30年後の自分だった!?』(NHK)に謎めいた女性・アヤママ役で出演中。
インスタグラム : @ogura_yuko_0826
オフィシャルブログ:『Yuko’s Happy Life』
カーディガン¥16,940・デニムパンツ¥17,930(アダム エ ロペ) Tシャツ¥7,700(ルージュ・ヴィフ ラクレ ルミネ有楽町店〈ルージュ・ヴィフ アンナ〉) 眼鏡¥44,000(アイヴァン 東京ギャラリー〈アイヴァン〉) イヤリング¥13,200・ネックレス[短]¥34,100・ネックレス[長]¥13,200(フーブス〈IRIS47〉)
撮影/遠藤優貴 スタイリスト/渡辺智佳 ヘアメイク/森野友香子(Perle manegement) 撮影ディレクション/松崎のぞみ 取材・文/谷畑まゆみ
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