事項とはどういう意味?例文でご紹介
事項(じこう)とは、ある物事の中に存在する一つ一つの事柄を指す言葉です。たとえば、契約書の中の一つ一つの項目や、注意書きの中に記した一つ一つの文言などは、いずれも「事項」と呼べます。
【事項】じこう
ある物事の中の一つ一つの事柄。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
事項は日常会話にも使われる言葉です。いくつかの例文をご紹介します。
・先ほど渡した資料をご覧になりましたか。注意事項が多数記載されていますが、いずれも重要なので目を通しておいてください。
・記載事項は多いが、常識で考えればわかることばかりのため、特段注意する必要はない。
・先生は帰りのバスで、明日の連絡事項を生徒たちに伝えた。
ビジネスや公的機関で使用される事項の例
事項は、ビジネスや公的機関でも使われることがある言葉です。
単に「事項」と使うこともありますが、別の名詞とつなげて「〇〇事項」と表現されることもあります。よくある「〇〇事項」をご紹介します。
連絡事項
「連絡事項」とは、重要な情報やニュースを特定の集団内で共有するために使われる事柄のことです。
連絡事項をリストアップすることで、集団内のメンバーが知っているべき事柄が一目でわかるだけでなく、メンバー各自が理解している内容に漏れや間違いがないか確認できるようになります。
たとえば、オフィス内なら連絡事項に以下の内容を含めることがあります。
・次回の会議の日時、場所、参加メンバー
・新プロジェクトの概要、スケジュール、プロジェクトメンバー
・社内ルールの変更、適用開始日
連絡事項を集団内で共有することは、社内コミュニケーションの効率化にもつながります。ただし、文章がわかりにくいと連絡事項の作成者の意図が反映されません。要点を押さえた簡潔な表現を心がけ、誤解を生まないか何度か見直してから発表するようにしてください。
申し送り事項
「申し送り事項」とは、次の担当者が業務遂行において知っておくべき事柄のことです。前任者が、後任者に伝えることが一般的です。
そもそも「申し送り」とは、次の者に言って伝えることで、とくに事務・命令などの内容を後任者に伝えることを指します。「申し送り」の実施は、業務に必要な対応を途切れさせないためにも欠かせません。
24時間体制で複数のスタッフが業務を順繰りに担当するようなときなどは、前任者が後任者に適切に申し送りをすることでトラブルが起こりにくくなります。次のような現場では、申し送りが必要になると考えられるでしょう。
・建物の管理業務
・24時間オープンの小売店や飲食店
・医療や看護、介護を提供する施設
なお、類似する言葉に「引き継ぎ事項」が挙げられます。現場によっては「申し送り」と「引き継ぎ」と同じ意味で使われますが、一部の現場では「申し送り」は担当者同士の情報共有、「引き継ぎ」は別業務の担当者への情報共有というように使い分けていることがあります。
指定事項
「指定事項」とは、ある特定の事柄を指定したものです。たとえば、相手から既定のものを送付・提出してもらうときは、あらかじめ送付者・提出者と指定事項を共有することで、適切なものを受け取れるようになります。
・スキー合宿のウエアにはいくつか決まりがあります。指定事項を確認してから購入してください。
・今回のパーティーはドレスコードがあります。指定事項を見てから準備してください。
・何やら指定事項が多く、ややこしそうな集まりのようだ。
券面事項
「券面事項」とは、券面に記載されている情報のことです。たとえば、マイナポータルを利用するときに、画面に「券面事項入力補助用暗証番号を入力してください」と記載されることがあります。
この場合は、マイナンバーカードの表面や裏面に記載されたマイナンバーと住所、氏名、生年月日、性別の5つの情報を指します。
・書類に券面事項を正確に記入してください。
・券面事項に誤りがあるときは職員にお伝えください。修正後、再発行いたします。
・運転免許証には大切な情報が記載されています。券面事項が周囲に見えないように注意してください。
経営事項審査
「経営事項審査」とは、公共工事を発注者から直接請け負う建設業者が受ける審査のことです。
公共工事を発注するときは、建設業者が競争入札参加資格を持つのか審査しなくてはいけません。審査では客観的事項と主観的事項(発注者別評価)を点数化し、順位や格を決定します。
客観的事項の審査が「経営事項審査」です。建設業者ごとに以下について調べて数値化し、客観的に評価します。
・経営状況
・経営規模
・技術力
・その他の審査項目
なお、経営状況については、国土交通大臣が登録した分析機関が以下の情報をもとに客観的に分析します。
・純支払利息比率
・負債回転期間
・総資本売上総利益率
・売上高経常利益率
・自己資本対固定資産比率
・自己資本比率
・営業キャッシュ・フロー
・利益剰余金
決議事項
「決議事項」とは、会議で決定する事柄、あるいは会議で決定した事柄のことです。なお、決議と混同しがちな言葉として「議決」が挙げられます。
ある事柄について決定することを「議決」、決定した内容を「決議」と使い分けることもありますが、明確な根拠はなく、両者を区別せずに使用することも少なくありません。
会社で使われることが多い「決議事項」としては、「取締役会の決議事項」と「株主総会の決議事項」が挙げられます。
「取締役会の決議事項」とはその名の通り、取締役会において決定される事柄のことです。取締役会では、株主総会での決議が必要な事柄以外を決定できます。
取締役会の決議事項のうち、会社法362条において取締役会で決議すべきと定められている事柄を「一般法定決議事項」、会社法362条以外の個別法令が定める事柄を「個別法定決議事項」と区別することがあります。
第三百六十二条 取締役会は、すべての取締役で組織する。
2 取締役会は、次に掲げる職務を行う。
一 取締役会設置会社の業務執行の決定
二 取締役の職務の執行の監督
三 代表取締役の選定及び解職
3 取締役会は、取締役の中から代表取締役を選定しなければならない。
4 取締役会は、次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができない。
一 重要な財産の処分及び譲受け
二 多額の借財
三 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任
四 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
五 第六百七十六条第一号に掲げる事項その他の社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項として法務省令で定める事項
六 取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備
七 第四百二十六条第一項の規定による定款の定めに基づく第四百二十三条第一項の責任の免除
5 大会社である取締役会設置会社においては、取締役会は、前項第六号に掲げる事項を決定しなければならない。
(引用〈会社法|e-Gov法令検索〉より)
一方、「株主総会の決議事項」とは、株主総会において決定する事柄のことです。株主総会の決議事項も、取締役会の決議事項と同様、会社法などの法令において定められています。
報告事項
「報告事項」とは、報告する事柄のことです。たとえば、株主総会では事業進捗や決算などについての報告事項があります。
・報告事項は以上です。ご質問がある方は挙手をお願いいたします。
・資料の12ページにプロジェクトの報告事項をまとめております。お手すきの際にご確認ください。
・報告事項はすべて秘書から聞きました。しかし、肝心の事柄が抜けているようです。
専決事項
「専決事項」とは、特定の機関や人物が決議しなくてはならず、他の機関・人物に委任できない事柄のことです。たとえば、「取締役会の専決事項」なら、取締役会での決議が求められ、他の機関では決定できない事柄を意味します。
そもそも「専決」とは、その人だけの考えで決裁することや勝手に取り計らうことを指します。そのため、「専決事項」と記載されているときは、決定する権利を持つ機関や人物の許可なく勝手に決めることはできません。
・経営にかかわる事柄は取締役会の専決事項といえるだろう。
・その案件は知事の専決事項らしい。
・専決事項は、決定権を誰が持つかがあらかじめ決まっている事柄ともいえる。
事項と混同しがちな言葉をご紹介
「事項」と類似する意味で使われる言葉としては、次のものが挙げられます。
それぞれの言葉の意味やニュアンスの違いについて、例文を通してご紹介します。
事柄
「事柄」とは、物事の内容や様子、また、物事そのものを指す言葉です。たとえば、次のように使われます。
・調べた事柄を文章と図でまとめ、自由研究として発表した。
・このノートには、新しいプロジェクトに関する極秘の事柄が記載されています。慎重に取り扱ってください。
・彼女にとっては重大な事柄かもしれないが、わたしにとっては些細な変化だ。
なお、事柄は「骨柄(こつがら)」の音が変化したものという説もあります。骨柄は、人物のありさまや体格、品格を示す言葉です。
・彼の息子さんには、人品骨柄が素晴らしいという評判があります。
・彼女の身なりは質素だが、骨柄がいやしからず、あまつさえ品を感じさせる。
・見た目だけでなく骨柄も素晴らしい。
項目
「項目」とは、物事をある基準で区分けしたときの一つ一つのことです。また、辞典・事典などの見出し語の意味でも使われます。
・資料を項目別に整理した。
・資料が多くてまとまらないときは、項目を決めて分類するとよいだろう。
・彼女のノートを見せてもらったが、項目を立てて整理されてあり、大変見やすかった。
国や地方公共団体における歳入・歳出予算の区分に用いる用語に「項」と「目」があり、まとめて「項目」といいます。まずは歳入・歳出の予算を項に区分してから、さらに目に区分します。
内容
「内容」とは、容器や包みなどの中に入っているものを指します。
・手荷物の内容を申告する。
・あらかじめ内容物をリストアップして、箱に記載しておいた。
・内容によっては郵送できません。
また、物事を成り立たせている中身や実体、実質、文章や話などの中で伝えようとしている事柄の意味でも使われることがあります。
・大勝したが、試合の内容に不満が残った。
・文章の内容を見直すほうがいいと思われる。
・彼女はぺらぺらとよく話すが、言っていることはほとんど内容がない。
事項を適切な場面で使おう
「事項」はビジネスや公的機関でも使われることが多いことからも、少し固いニュアンスがある言葉です。シチュエーションによっては、「内容」や「事柄」などのほかの言葉に置き換えるほうがよいかもしれません。適切な場面を選んで、「事項」を使いこなしましょう。
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