「頭隠して尻隠さず」の意味は?
「頭隠して尻隠さず」とは、悪事や欠点の一部のみを隠して、全部を隠したつもりでいる愚かさをあざけって使う言葉です。

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頭を隠しても身体が丸見えなら、姿を隠したことにはなりません。頭を隠している分、かえって「隠れよう」「隠そう」という思いが強調されてしまい、場合によっては滑稽に見えてしまいます。隠そうとして隠せていない愚かな様子を揶揄した言葉といえるでしょう。
頭(あたま)隠して尻(しり)隠さず
悪事・欠点の一部を隠して全部を隠したつもりでいる愚かさをあざける言葉
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
「頭隠して尻隠さず」の使い方
「頭隠して尻隠さず」は、悪事や欠点が隠しきれていないシチュエーションで使われます。例文から使い方を見ていきましょう。
- 頂き物のクッキーを食べていないというけれど、頭隠して尻隠さず。口の周りに粉がついているよ。
- 浮気はしていないというが、頭隠して尻隠さず。メッセージアプリのロックをかけていないからバレバレだ。
「頭隠して尻隠さず」の由来

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「頭隠して尻隠さず」とは、雉(きじ)の習性に由来する言葉といわれています。雉は危険を感じると草むらに身体を隠そうとします。しかし、尾が長いため、頭部はしっかりと隠れても下肢は丸見えになってしまうことがあるようです。
雉は鮮やかな羽毛が特徴的な鳥です。そのため、身体の一部を隠しても目立ってしまい、愚かというか残念な印象になってしまうのかもしれません。
「頭隠して尻隠さず」と似た意味のことわざ
「頭隠して尻隠さず」のように、一部のみを隠して全部を隠しきれていない様子を表現することわざは少なくありません。たとえば次に紹介することわざも同じような意味で使われることがあります。

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それぞれの使い方を例文を通してご紹介します。
柿を盗んで核(さね)を隠さず
「柿を盗んで核を隠さず」も、悪いことや好ましくないことの一部のみを隠して、全部を隠しきれていない愚かな様子を指すことわざです。
核(さね)とは、果実の中心にある硬い部分や種のことです。「柿を盗んでいないよ」と主張したところで、周辺に柿の種が落ちているなら、「柿を盗んだに違いない」と疑われてしまうでしょう。
- 「風邪をひいて一日中家にいました」と彼はいうが、テーマパークに出掛けた様子をSNSにアップしているため、柿を盗んで核を隠さず。嘘をついているのは明らかだ。
- ミスを修正して書き直しても、すでに送付済みの資料にはミスがそのまま残っている。柿を盗んで核を隠さず、変に小細工をしないで、素直に間違えましたといえば良いのに。
身を蔵(かく)して影を露(あらわ)す
「身を蔵して影を露す」も、一部のみを隠してすべてを隠せていない様子を指すことわざです。身体そのものを隠しても影が見えているなら、存在そのものをうまく隠しきれていません。
- キャップを被って顔を隠しているようだが、特徴的な声ですぐにわかる。身を蔵して影を露すというが、もう少し上手に隠せないものだろうか。
- 明るい月夜だから、身体を隠したところで影がくっきりと見えている。まさに身を蔵して影を露す状況だ。
団子隠そうより跡隠せ
団子がなくても、お皿に粉やたれなどが残っていれば、「団子があったのでは?」と気付かれてしまいます。「団子隠そうより跡隠せ」も、中途半端に隠して全部を隠しきれていない様子を示したことわざです。
- いくら嘘をついても、証拠があるから騙されないよ。団子隠そうより跡隠せ。嘘をつくなら、証拠も隠さなきゃ。
- 昨日家に来たことは、防犯カメラに写っていたからわかっているよ。団子隠そうより跡隠せというけれど、全部隠すのが無理なら嘘なんてつかないで。
雉の草隠れ
「雉の草隠れ」とは、雉が草の中に頭だけを隠して、尾は見えていることです。「頭隠して尻隠さず」と同じく、一部分だけ隠している様子を指して使います。「雉の隠れ」ともいわれることがあります。
- 黒いセーターに白い粉がついているから、大福を食べたことは明白だ。雉の草隠れみたいなことをしないで、素直に「食べた」といえば良いのに。
- 悪いことをすると表情に出るからすぐにわかる。まるで雉の隠れだね。
適切なシチュエーションで使おう

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「頭隠して尻隠さず」は、好ましくないことを一部のみ隠している愚かな様子を意味する言葉です。
基本的には相手をあざけって使うため、ふさわしくないシチュエーションも多いと予想されます。適切な言葉なのか、相手の立場や状況をしっかりと見極めてから使いましょう。
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