辞表は、表題・本文・日付・署名の4要素で整えるのが基本。
Summary
- 「辞表」とは通常、役員や公務員が退職の意思を伝える際に用いる文書のこと。
- 書式は自由だが表題・本文・日付・署名が基本要素。
- 提出時期は就業規則を確認し、余裕を持って準備すること。
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「辞表を出します」といったセリフをドラマなどで耳にしたことがある人もいらっしゃるかもしれませんね。辞表とは、主に役員や公務員などが、退職する際に伝えるための正式な文書であり、「辞職願」とも呼ばれています。
「退職願」や「退職届」との違いや、マナーが気になるという方も多いのではないでしょうか? そこで、この記事では、辞表の基本的な構成や正しい書き方、注意点から提出のタイミングまで、実務に役立つポイントをわかりやすく紹介していきます。
【目次】
辞表の正しい書き方とは? 基本を押さえてスムーズに退職準備を進めよう
まずは、辞表について、役割や基本を見ていきましょう。
辞表の役割と重要性
まず、退職の意志を伝える際、口頭ではなく文書で正式に伝えるのが社会人としてのマナー。というのも、あとで言った言わない論争や、退職日の認識にずれが生じてしまう可能性もあるからです。辞表は、認識のずれを防ぐ役割を果たす大切な書類といえますね。
なお、「辞表」とは通常、役員や公務員が退職の意思を伝える際に用いる文書を指します。また、実務上は「辞職願」と呼ばれることも多いですが、厳密な定義はありません。
一般の会社員の方も「辞表を出そうと思う」など口語的に使うケースも。この場合、辞表は、退職願と同じような意味で使われているといえるでしょう。
いずれにせよ、仕事を辞める際に提出する書類はとても重要なものです。提出のマナーもおさえておきましょう。
辞表の構成|押さえておきたい基本要素
辞表(退職願)には決まった書式やフォーマットがあるわけではありませんが、基本の構成を押さえることで、社会人としての丁寧な印象を与えることができます。どんなに急な退職であっても、最低限のマナーを意識したいところですね。
基本的な構成は、以下の4つの要素で成り立っています。
1:表題
会社員の場合は「退職願」と書くのが一般的です。公務員、役員の場合は、「辞職願」と使い分けるケースがありますよ。
たとえ口語として退職願のことを「辞表」と呼んでいる会社であっても、書類上は「退職願」にした方が無難でしょう。前述の通り、「辞表」は公務員や役員などの役職にある人が、職を辞する(辞める)際に使うことが一般的だからです。
2:本文(退職の意思と退職希望日)
例えば「一身上の都合により、〇年〇月〇日をもって退職いたしたく、ここにお願い申し上げます」といった表現が一般的です。
3:日付
辞表(退職願)を作成した日付を記載します。退職希望日ではなく、提出する日を記入するのがポイントですよ。
4:署名(所属・氏名)
自分の所属部署と氏名を記載します。また、できれは手書きであることが望ましいでしょう。

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辞表作成時に注意すべき基本ルール
辞表作成時に注意すべき点も見ていきましょう。
どんな紙や封筒がいい?
辞表(退職願)を作成する際、どんな用紙にするべきか、迷うという人もいらっしゃることでしょう。一般的に、用紙は白無地のA4サイズかB5サイズで作成するケースが多いですよ。また、罫線のあるレポート用紙や、ノート、ルーズリーフなどは避けるようにしましょう。
文字は黒のボールペンまたは万年筆で手書きするのが一般的ですが、近年ではパソコンで作成して印刷するケースも増えています。また、会社によっては専用のフォーマットが準備されていることもあるので、確認しておくのが安心ですよ。
なお、辞表(退職願)提出時には、通常は白い厚手の封筒(長3サイズ程度)に入れて手渡しするのが基本です。白無地の封筒に「退職願」と記し、裏面に名前を記入しましょう。ただ、最近では電子契約システム等で対応する会社もありますので、事前に会社に手続き方法を確認しておくとスムーズですね。
会社への不満を書くのはあり?
人によっては、会社とのトラブルや人間関係など、いろいろな不満があって退職する人もいらっしゃることでしょう。ですが、辞表(退職願)に不満を書き連ねるのは避けたいところ。あくまでビジネス文書としての体裁を保ちましょう。
「どうせ辞める会社だし…」と投げやりになるのではなく、最後まできちんとした姿勢で退職の意思を伝えることが、次のキャリアにもつながります。
辞表はあくまでビジネス文書です。ネガティブな感情をぶつける場ではありません。シンプルに、丁寧に、静かに気持ちを伝える。それが大人の退職マナーといえるでしょう。
辞表を提出するタイミングと準備の進め方
退職の意志が固まったら、辞表の提出タイミングにも気を配りたいところ。どんなに丁寧に辞表を書いても、出し方ひとつで印象は変わってしまいます。スムーズな引き継ぎと円満退職のために、適切なタイミングを見極めましょう。
一般的には、就業規則で「退職の〇日前までに申し出ること」と明記されていることが多いので、事前に確認しておくとスムーズですよ。また、就業規則上の期限よりも早めに退職を相談しておく方が、円満に退職しやすくなるでしょう。
特に引き継ぎ業務が多い職種や、繁忙期にかかるタイミングでの退職の場合は、余裕を持って伝えるのがベターです。

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辞表(退職願)を受け取ってもらえないときは?
時折、「辞表を受け取ってもらえない」や、「退職を認めてもらえない」という悩みの声も耳にします。ある会社では、「自分で後任の人材を採用するまでは辞められない」という独自ルールを設定しているケースも。ですが、これは法律上正しいルールではありません。
そもそも、正社員などのように、あらかじめ契約期間が定められていないときは、2週間前までに「退職届」を提出するなど退職の申し出をすれば、辞めることができるということもおさえておきましょう。(民法第627条)
退職願と退職届は違うの?
ちなみに、「退職届」は「退職願」と字面が似ていますが、異なるものであるということをご存じでしょうか?
退職届は、「退職させてください」という「お願い」ではなく、「〇日に辞めます」と伝える解約通知のこと。退職届の場合、会社が「退職は認めません」ということはできないのです。
ただし注意したいのは、一度提出してしまうと、原則として取り消しはできないという点。あとで「やっぱり辞めたくないかも…」と思っても、かなり難しくなります。
もちろん、円満に退職するには、労働契約や就業規則の定めに従うようにしましょう。また、業務の引き継ぎ等でのトラブルを回避するため、事前相談が望ましいですね。
ただ、「会社が認めない限り退職できない」というものではありません。あまりにも強い引き止めや、「退職させない」という態度の職場だった場合、知っておくと安心ですね。

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最後に
- 辞表の書式は自由ですが、基本の構成要素を押さえておくこと。
- 不満や感情を書かず、ビジネス文書として簡潔に。
- 提出は就業規則を守りつつ余裕を持って行うこと。
退職という節目は、新たな人生の扉を開くきっかけでもありますよね。だからこそ、その最終ステップとなる「辞表(退職願・退職届)」の提出も、丁寧に、そして冷静に行いたいものです。ぜひ参考にしてみてくださいね。
※この記事では、辞表を「退職願」と同義で解説しています。また、退職にあたっての手続きの流れやフォーマット等は会社によって異なることがありますので、ご留意ください。
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執筆
塚原社会保険労務士事務所代表 塚原美彩(つかはら・みさ)
行政機関にて健康保険や厚生年金、労働基準法に関する業務を経験。2016年社会保険労務士資格を取得後、企業の人事労務コンサル、ポジティブ心理学をベースとした研修講師として活動中。趣味は日本酒酒蔵巡り。
事務所ホームページ:塚原社会保険労務士事務所
ライター所属:京都メディアライン
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