「聞く」意味で使うときの例文
「伺う」には、「聞く」「尋ねる」という意味もあります。「聞きました」も丁寧な表現ですが、より敬意を表したいときは「伺いました」がおすすめです。
「~から伺いました」
- 今日中に連絡をもらいたいと、先方から伺いました。
- お客さまから、商品の使い心地や改善点について伺いました。
話を聞いた相手を敬いたいときは、「伺いました」を使用します。気を付けたいのは、他者に対して身内の行動を伝える場合、「伺いました」とは言わないことです。
たとえば、取引先に「担当者から聞いた」と伝える場合、以下の使用例は誤りだといえます。
- 誤)その件につきましては、担当者から伺っております。
この場合は、「担当者から聞いております」と言い換えましょう。
「~に伺います」
- 当日のスケジュールについて、先方に伺っておきます。
こちらも、聞く対象を敬った表現です。「伺いました」と同様に、他者に身内のことを伝える際は気を付けてください。
たとえば、社内で「課長に聞く」と伝える場合は、以下のように「伺います」を使用できます。自分にとって、敬う相手が課長にあたるからです。
- 会議の内容については、後日、私から課長に伺います。
ただし、外部に対して「課長に聞く」と伝える際に「伺います」を使うのはNGです。
- 誤)その件につきましては、課長に伺い、ご連絡いたします。
この場合は、「課長に確認し、ご連絡いたします」と伝えます。敬うべき相手は聞き手であり、課長は自分の身内になるからです。
「伺わせていただきます」の正しい表現である「伺います」は、相手との関係性を考えながら使用しましょう。
ビジネスシーンで間違えやすい敬語表現
ビジネスシーンでは、相手に失礼のない表現が求められます。丁寧な言い回しにしようと思うあまり、敬語表現を誤ってしまうこともあるのではないでしょうか。

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ここでは、「伺わせていただきます」のような間違えやすい敬語表現と、正しい言い回しについてご紹介します。
「お帰りになられる」は二重敬語
「お帰りになられる」は、「お~になる」と「られる」という敬語が重複しています。正しい言い回しは、「お帰りになる」です。
- お客さまは、すでにお帰りになりました。
同じような二重敬語には、「おっしゃられる通り」が挙げられます。こちらは「おっしゃる」と「られる」が重なった誤用です。
正しくは「おっしゃる通り」で、目上の人に対して「その通りです」という意志が伝えられます。
- 部長のおっしゃる通り、今回の取引は見合わせるべきだと考えます。
より丁寧にしたいときは、「おっしゃる通りでございます」と言い換えましょう。
「お体ご自愛下さい」は誤用
「ご自愛」は、自分を大切にすることを意味する「自愛」の尊敬語です。
「自愛」には、自分の体や健康状態に気を付けるという意味もあるため、「お身体ご自愛ください」とすると「身体」という意味が重複してしまいます。
「ご自愛ください」は、目上の人に使える正しい敬語表現です。また、友人や家族などに対しても使用できます。
目上の人や取引先に対して用いる場合は、より丁寧な表現を意識しましょう。具体的には、「くれぐれも」や「どうぞ」などを文頭に付け加えます。
- 寒さ厳しい季節となりました。くれぐれもご自愛ください。
- 暑い日が続きますが、どうぞご自愛くださいませ。
「ご自愛ください」はメール文のほか、年賀状や暑中見舞い、寒中見舞いなどで使用するのが一般的です。ただし、すでに体調を崩している人には使わないように気を付けてください。
健康が優れない人に対し「元気でいてください」と伝えると、かえって気分を害してしまうかもしれません。相手の状況を考慮しながら、体を気遣う言葉を添えましょう。
「伺わせていただきます」は誤用!正しい使い方を意識しよう
「伺わせていただきます」は、誤った使い方です。敬語が重複し、かえって回りくどい表現になっています。正しい表現は、「伺います」です。どこかへ行くことや、物事を聞くことを伝える敬語として使用できます。
また、敬語には「お帰りになる」や「ご自愛ください」のような間違えやすい表現があり、「お帰りになられる」や「お体ご自愛ください」も誤用です。
メールや会話文で使用するためにも、敬語の正しい使い方を知り、ビジネスシーンで失礼のない対応を心がけましょう。
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