書き言葉では相手がわかりやすいように前後の文脈に配慮しましょう。
Summary
- 「伺う」は、「聞く」「尋ねる」「行く」の謙譲語である
- 文書で使用する際は、意味の履き違えが生まれやすくなるので文脈に注意
- 場面に応じて「承る」「お聞きする」「拝聴」などの似た表現と上手に使い分けて
Contents
「伺う」の意味とは?
「伺う(読み方:うかがう)」は目上の人に対して使う謙譲語であり、次の3種類の意味を表現することができる言葉です。
「伺う」は「聞く」「尋ねる」「行く」の謙譲語
1. 「聞く」
2. 「尋ねる」
3. 「行く(訪れる・訪問する)」
辞書にも以下のように書かれています。
【伺う(うかがう)】
[動ワ五(ハ四)]《「窺う」と同語源。目上の人のようすをうかがいみる意から、その動作の相手を敬う謙譲語となる》
(1)「聞く」の謙譲語。拝聴する。お聞きする。「おうわさはかねがね―・っております」
(2)「尋ねる」「問う」の謙譲語。「この件について御意見をお―・いします」
(3)「訪れる」「訪問する」の謙譲語。「明朝、こちらから―・います」
(4)神仏の託宣を願う。「御神託を―・う」
(5)《「御機嫌をうかがう」の意から》寄席などで、客に話をする。また、一般に、大ぜいの人に説明をする。「一席―・う」
小学館『デジタル大辞泉』より引用
「伺う」の正しい使い方と例文
「伺う」は、文脈の中で正しく使い分けたい言葉です。それぞれの使い方について見ていきましょう。

「聞く」という意味での例文
例文
・御社の〇〇様より伺っております。
・お話を伺ってもよろしいでしょうか?
「伺う」は、話し手が自分の動作をへりくだって敬意を表す謙譲語。そのため、社外の人に「弊社の課長より伺っている」といった使い方をするのは間違いです。
「尋ねる」という意味での例文
例文
・ご予定を伺ってもよろしいですか?
・お名前を伺えますか?
・お伺いしたいのですが、この電車は〇〇駅に止まりますか?
「尋ねる」という意味で使う場合、初対面の人に何か質問するときなどにもよく使われます。
「行く」という意味での例文
例文
・これからそちらに伺います。
・明日の2時、御社にお伺いしてもよろしいでしょうか?
「お伺い」は敬語の接頭語である「お」を付けた二重敬語になりますが、より敬意を込めた言葉として一般的に使われています。むしろ、取引先などに使う場合は「お伺い」のほうが丁寧に感じられるため、許容範囲といえるでしょう。
「伺う」を使うときの注意点
「伺う」はメールでも口頭でも使える表現ですが、使う際には注意したい点があります。ここでは、メールと口語で使い方に違いがあるのか確認し、さらに二重敬語や「窺う」との違いについてご紹介しましょう。

メールと口頭での使い方の違い
「伺う」の使い方は、メールと口頭で特に違いはありません。ただし、複数の意味があるため、誤用に注意が必要です。対面や電話の場合は、話の文脈から意味の違いが伝わりやすいものですが、文字だけのメールは意味の履き違えが生まれやすくなります。
特に「話を聞く」、「行く」という意味で使う場合は混同されやすいので要注意。「聞く」という意味で使う場合は、「お聞きする」と言い換えるなどの配慮をすると、誤解を防ぎやすくなります。

二重敬語に注意する
「伺う」は敬語ですので、さらに敬語表現を加えると日本語として不自然になる場合もあります。先述した「お伺いします」など、一般的に浸透して違和感のないものもありますが、基本的に二重敬語は避けなければなりません。「伺う」の二重敬語には、次のようなものがあります。
NG例
1. お伺いいたします
2. お伺いさせていただきます
3. 伺わせていただきます
どれも、敬語である「伺う」に「いたす」「いただく」という謙譲語が付いている二重敬語です。さらに、1と2は接頭語の「お」が付いて敬語がいくつも重なっています。特に形式を重視するビジネスシーンでは不自然に感じられ、いい印象を与えません。
また、2や3の「○○させていただく」という表現は〝相手に許可を得ており、かつ自分に恩恵があること〟に対して使われます。そのような場面でない場合は、間違った表現になるため注意が必要です。

不自然な二重敬語に注意しましょう。
「伺う」と「窺う」を混同しない
「伺う」と同じ読み方をする言葉に「窺う」があります。「窺う」には「そっと様子を見る」「密かに探りをいれる」といった意味がありますが、「伺う」のような謙譲語ではありません。
【窺う(うかがう)】
[動ワ五(ハ四)]
(1)すきまなどから、ひそかにのぞいて見る。「鍵穴から中を―・う」
(2)ひそかにようすを探り調べる。「顔色を―・う」「ライバル会社の動きを―・う」
(3)一部分から全体を推し量って知る。それとなくようす、状況を察する。「意気込みのほどが―・われる」「その一斑(いっぱん)を―・うことができる」
(4)ようすを見て、好機の訪れるのを待ち受ける。「逃走の時機を―・う」
(5)一応心得ておく。「弓射、馬に乗ること…必ずこれを―・ふべし」〈徒然・一二二〉
(6)調べ求める。調べ探す。「近く本朝を―・ふに」〈平家・一〉
小学館『デジタル大辞泉』より引用
「窺う」を使った例文は次の通りです。
例文
・あの人はいつも上司の顔色を窺っている。
・次の試合に勝つため、相手チームの様子を窺っている。

漢字の違いでまったく違う意味になるため、メールなどで使う場合は注意しましょう。
【Domani編集部の体験談】ビジネス等で使用する時の注意点
実際のビジネスシーンで「伺う」を使用する場合、どのような点に注意すればよいのでしょうか。Domaniの編集部メンバーの体験談を踏まえつつ、使用法を見ていきましょう。
【episode1】「伺う」で築く信頼。言葉がビジネスチャンスを呼んだ瞬間
Domani編集部 A氏(35)
私たちが担当する大規模プロジェクトで、クライアント企業の役員からご意見をいただく機会がありました。若手のころ敬語に自信がなかった私は「このチャンスを逃すまい」と、言葉使いを徹底的に勉強しました。u003cbru003eu003cbru003e役員に質問する際、私は「いくつかお話を伺ってもよろしいでしょうか」と切り出し、ご意見をいただいた後も「貴重なお話を伺うことができました。誠にありがとうございます」と丁寧にお礼を述べました。u003cbru003eu003cbru003e後日、役員から直接「あなたの言葉使いには品があり、誠実さが伝わってきた」とお褒めの言葉をいただき、その信頼がきっかけで追加のプロジェクトを受注することになったのです。u003cstrongu003eこの経験から、言葉使いが単なるマナーではなく、相手との信頼関係を築き、ビジネスを成功に導く重要なツールであることを確信しました。u003c/strongu003e
【episode2】部長に「伺う」は間違い!部下の敬語を正したワケ
Domani編集部 T氏(48)
私の部下が部長へ報告する際、「〇〇部長が来週の会議について、私に伺いました」と話したことがありました。私はすぐに、「部長が私に尋ねたと言いたい場合は『お尋ねになりました』や『聞かれました』が正しいよ」と指摘しました。u003cbru003eu003cbru003eu003cstrongu003eなぜなら、「伺う」は自分がへりくだる謙譲語であり、上司の行動に使うのは間違いだから。u003c/strongu003eこの場合は尊敬語である「お尋ねになる」や、丁寧語の「聞かれる」が適切です。u003cbru003eu003cbru003eこの間違いは、目上の人の行動を謙譲語で表現するという、敬語の根本的な誤解からくるものです。部下には、誰の行動を丁寧に表現するのかを明確に意識するよう伝えました。u003cstrongu003eこの失敗を通じて、敬語の基礎を再確認することの大切さを改めて感じました。u003c/strongu003e
「伺う」と「参る」の違いは?
「伺う」には「参る」といった、似た意味で使われる表現があります。ここでは、それぞれの違いについて見ていきましょう。



