面接後にお礼メールを送るべきかどうか、迷う人は少なくありません。ビジネスマナーとして送ったほうがいいのか、それとも不要なのか…。企業側の受け止め方や、採用結果への影響を考慮しながら、適切な対応を解説します。
お礼メールを送るメリット・デメリットを整理
面接後のお礼メールは、送ることでいい印象を持たれる場合もあれば、不要と判断されることもあります。送るべきかどうかを考えるために、どのようなメリットとデメリットがあるのかを整理しておきましょう。
お礼メールを送るメリット
お礼メールは、面接官に対する礼儀を示すだけでなく、印象がよくなる可能性もあります。以下のような状況では、送ることでプラスに働くことが考えられます。
感謝の気持ちを伝えられる
面接の機会を提供してくれた企業に対し、誠意を持って感謝を伝えることができます。特に、面接官が時間をかけて説明してくれた場合には、その気持ちを伝えることで好印象につながることもあるでしょう。
面接官に自分を印象付けられる
競争率が高いポジションでは、応募者の印象が選考の決め手になることもあります。お礼メールを送ることで、自分の名前ややり取りを思い出してもらいやすくなり、プラスに働くことも考えられます。
伝えきれなかったことを補足できる
面接では時間が限られているため、話し足りないこともあります。お礼メールを活用して、簡潔に補足することで、自分の強みを伝える機会として使うこともできるでしょう。

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お礼メールを送るデメリット
一方で、すべての状況においてお礼メールがプラスに働くわけではありません。企業や採用担当者の考え方によっては、不要と判断されるケースもあります。
企業によっては評価の対象外
採用フローが整備されている企業では、お礼メールを評価の対象としていない場合もあります。そうした企業では、送っても選考結果に影響しないことが多いため、無理に送る必要はありません。
内容によっては逆効果になることも
過度に丁寧な言葉を使ったり、長すぎるメールを送ったりすると、負担になることがあります。採用担当者が多忙な場合、不要なやり取りと受け取られる可能性もあるため、送る場合は簡潔にまとめることが大切です。
すでに選考結果が決まっている場合は影響なし
面接後の選考結果がすでに確定している場合、お礼メールを送ったとしても影響を与えることは難しいと考えられます。この場合、企業の判断に任せるしかなく、メールの有無は採用に関係しないことがほとんどです。
お礼メールを送るべきか? 状況別に判断する
面接後のお礼メールは、必ず出さなければいけないというものではありません。企業文化や採用プロセス、業界の慣習によって、送ることでプラスに働く場合と、不要とされる場合があります。どのような基準で判断すればいいのか、具体的な状況ごとに考えてみましょう。
お礼メールを送ると効果的なケース
企業の方針や面接の雰囲気によっては、お礼メールを送ることでいい印象を残せることがあります。
対話が深まり、丁寧なコミュニケーションがあった場合
面接の中で応募者の意欲や考え方について深く議論し、面接官と有意義なやり取りができた場合、感謝の気持ちを伝えるのは自然な流れでしょう。特に、応募者の価値観やキャリア観に対して積極的に質問をしてくれた場合は、好意的に受け取られやすいと考えられます。
面接官が採用の決定権を持っている場合
部署の責任者や役員が直接面接を担当しているケースでは、お礼メールが有効に働くことがあります。決定権を持つ人に対して丁寧な対応をすることは、社会人としての配慮があると受け止められるでしょう。
選考プロセスが長く、次の面接につながる場合
面接が複数回に分かれている場合、次の面接担当者に応募者の評価が引き継がれることがあります。お礼メールによって、担当者間での印象が統一される可能性があるため、面接官が交代する場面では効果的な一手となることがあります。
お礼メールを送らなくても問題ないケース
すべての企業が、お礼メールを評価の対象にしているわけではありません。以下のような場合には、送らなくても特に影響がないと考えられます。
採用プロセスがシステム化されている企業
一定のルールに基づいて選考が進む企業では、個々の対応が結果に影響することはほとんどありません。応募者ごとの評価基準が統一されているため、お礼メールが採用の判断材料にはならないことが多いでしょう。
短時間で終わる形式的な面接
短時間の質問だけで終了する面接では、応募者一人一人との関係性が深まることは少なく、メールの有無が評価につながる可能性は低いです。
応募者が多数いる大量採用の企業
新卒採用やアルバイト採用など、大量の応募者を受け入れる企業では、一人一人の応募者とのやり取りを重視しない傾向があります。お礼メールを送っても担当者が確認しないこともあるため、必須とはいえません。
面接後にお礼メールを送るかどうかは、企業の特徴や面接の雰囲気を踏まえて慎重に判断することが大切です。応募者にとって適切な対応を考えながら、必要な場合のみ簡潔に送るようにするといいでしょう。
お礼メールの書き方|適切な構成とポイント
ここでは、企業の採用担当者が受け取った際に読みやすく、いい印象を与えられるお礼メールの構成とポイントを解説します。
お礼メールの基本構成
お礼メールの内容は、シンプルで分かりやすいことが重要です。企業の採用担当者は多忙なため、短時間で要点を把握できるような構成が適しています。一般的な流れは以下のようになります。
・件名:「面接のお礼|〇〇(氏名)」
・冒頭の挨拶:「本日はお時間をいただき、誠にありがとうございました。」
・感謝の意:「貴社の事業内容や社風について直接お話を伺い、より理解が深まりました。」
・意欲の表明:「今後の選考を通じて、貴社の発展に貢献できる機会を得られれば幸いです。」
・締めの言葉:「引き続き、よろしくお願い申し上げます。」
このようなシンプルな構成にすることで、過不足のない内容になり、相手に伝わりやすくなります。

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お礼メールの書き方で注意すべきポイント
1. 過度な敬語表現を避ける
過度にかしこまった表現は、かえって不自然な印象を与えることがあります。シンプルな敬語を使い、読みやすい文章を心がけましょう。
2. 具体的なエピソードを含める
面接中に印象に残った話題や、特に興味を持った点について簡潔に触れることで、定型文ではなく、応募者の個性が伝わるお礼メールになります。
3. 返信を求める内容を含めない
お礼メールは、あくまで感謝を伝えるものです。「お忙しい中恐縮ですが、ご返信いただけますと幸いです」など、相手に負担をかける表現は避けましょう。
お礼メールの例文(カスタマイズのポイント付き)
<いい例>(簡潔で伝わりやすい)
件名:面接のお礼|〇〇(氏名)
株式会社〇〇
〇〇部 〇〇様
本日はお忙しい中、貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございました。
貴社の事業内容について直接お話を伺うことで、より理解が深まりました。特に〇〇の事業戦略に関するお話は、大変興味深く拝聴しました。
今後の選考を通じて、貴社の発展に貢献できる機会を得られれば幸いです。引き続き、何卒よろしくお願い申し上げます。
(署名)
<悪い例>(冗長で不要な情報が多い)
件名:本日はありがとうございました
株式会社〇〇
〇〇部 〇〇様
本日は貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございました。面接の場で、貴社の事業内容を詳しくお伺いでき、大変勉強になりました。貴社の社風にも大変魅力を感じましたし、ますます御社で働きたいという気持ちが強まりました。
今後の選考について、ぜひご指導いただければ幸いです。もし何か追加の情報が必要でしたら、遠慮なくご連絡ください。お忙しいとは存じますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。
(署名)
【修正ポイント】
・冗長な表現を省略:「ますます働きたいという気持ちが強まりました」などの感情的な表現は避ける。
・返信を求める内容を削除:「追加の情報が必要でしたら、ご連絡ください」といった表現は不要。
・伝えたい内容を明確にする:伝えたいポイントが多すぎると、印象が散漫になるため簡潔にまとめる。

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最後に
面接後のお礼メールは、適切な状況で送ることが重要です。送ることでいい印象を与えることもあれば、不要と判断される場合もあります。状況に応じた対応を心がけ、自分に合った方法を選択しましょう。
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執筆
櫻井宏美(さくらい・ひろみ)
2017年国家資格キャリアコンサルタント取得。 20年以上、人事関連の業務に関わる。現在はキャリアチェンジを図り、三重県尾鷲市へ地域おこし協力隊として、定住移住促進・関係人口づくりに関わる。
ライター所属:京都メディアライン
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