「プロパー」は業界や文脈で意味が異なるため、使い方と定義を正しく理解することが大切。
Summary
- 「プロパー」とは、新卒で入社し正社員として長く勤める社員を指すことが多い言葉です。
- 業界や企業によって「プロパー」の定義や使い方は異なり、正社員や自社採用者全般を指す場合もあります。
- 多様な働き方が広がる中、「プロパー」と「非プロパー」の線引きによる職場の分断や差別に配慮することが重要です。
「プロパーって、どういう意味?」と気になることはありませんか? 「あの人はプロパーだから…」などと噂話で耳にすることもあるかもしれません。ビジネスシーンで時折耳にするこの言葉ですが、「意味を聞かれるとあいまい」という方も意外と多いのではないでしょうか?
また、業界によっては、「そもそも、プロパーという言葉を聞いたことがない」という人も。
この記事では、「プロパー」の意味や業界ごとの使われ方、さらには現代の働き方における課題までを社労士がわかりやすく解説します。
プロパーとは? ビジネスでの意味と業界ごとの使われ方
「プロパー」は、業界や企業によって意味合いが異なります。ここでは、その定義や使われ方を見ていきましょう。

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プロパーの基本的な意味とは?
「プロパー」とは、もともと「proper(適切な・妥当な)」に由来するカタカナ語で、日本の職場文化の中で独自の意味合いを持って発展してきました。
例えば、「プロパー社員」は一般的に、新卒でその企業に入社し、そのまま正社員として働き続けている社員を指す言葉として使われています。特に終身雇用や年功序列が重視されていた時代には、プロパー社員は「会社の将来を担う存在」として期待され、昇進や配置面で優遇される傾向がありました。
一方で、派遣社員や契約社員、出向社員、中途採用者などは「プロパーではない」とされ、評価や待遇に差が生じるケースもあったようです。
ただし、「プロパー」という言葉には明確な法的定義はなく、企業によっては「正社員全般」や「自社採用者(他社出向者を除く)」を含めて使うことも。また、業界や企業によっては異なるニュアンスで使われることもありますよ。ここからは、業界ごとの特色も見ていきましょう。
業界ごとの「プロパー」の使われ方
「プロパー」という言葉は、業界によって異なるニュアンスで使われます。たとえば金融・官公庁・大手メーカーでは、「新卒入社の正社員=プロパー」として、計画的に育成され、将来的な要職を担う前提でキャリアを積むケースもあるでしょう。
ただ、注意したいのは、「プロパー」という言葉は、文脈によって意味が大きく変わるという点です。たとえば、「プロパー価格」などのように「正規価格」を表す言葉として使われることや、製薬会社の医薬品営業をプロパーと呼ぶケースも。
また、特定の専門分野に精通した人材を「プロパー人材」と表現するケースもあり、必ずしも新卒入社の正社員を意味するとは限りません。使われる場面によってニュアンスが異なるため、会話や文書で使う際は文脈に注意したいですね。
プロパーが通じないことも
外資系やスタートアップ企業では、そもそも「プロパー」という言葉があまり浸透しておらず、スキルや成果が重視されるケースも。「中途・新卒」といった属性より、スキルと成果や専門性を重視する企業では、この傾向が強いでしょう。
実際に、筆者の知人が、大手日系企業から外資系のスタートアップへ転職したときのこと。ある日、ランチの場で「この会社って、プロパーの人はいるの?」と口にしたところ、周囲の同僚たちはきょとん。
「どういうこと?」と聞き返されて、「こんなに文化が違うのね!」と驚いたと語ってくれました。このように、「プロパー」は、業界や社風によって捉えられ方が多様な言葉ともいえるでしょう。
プロパーの対義語と言い換え表現
「プロパー」に明確な対義語はありませんが、文脈に応じて「中途採用社員」や「出向社員」、「非正規社員」などが対比的に用いられることがありますよ。
たとえば、新卒入社の正社員を「プロパー」とする場合は「中途採用社員」、メーカーの正社員を指す文脈では「派遣社員」や「委託社員」が該当することも。
また近年では、「プロパー」という言葉が内輪的な印象やヒエラルキーを連想させる場面もあるため、この呼び方は避けている会社もあるということも、おさえておきたいポイントでしょう。

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プロパー社員の企業内での役割と特徴
「プロパー社員」とは、具体的にどのような存在なのでしょうか? 企業内での役割や特徴、他の社員との違いについて、ここから詳しく見ていきましょう。
プロパー社員の定義と特徴
前述の通り、プロパー社員とは、一般的に「新卒でその企業に入社し、正社員として継続的に勤務している社員」を指す言葉です。長期的な人材育成の対象として扱われることが多く、将来的に組織の中核を担う存在として期待されることもあるでしょう。
また、新卒入社以来ずっとその会社に所属していることから、企業文化への理解が深いことや、社内での人脈が豊富で、部署間の調整や情報共有に強みを持つ傾向があるといわれていますよ。

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差別にならないように要注意
近年、同一労働同一賃金などの流れもあり、「プロパー」という言葉の扱われ方や、その背景にある価値観に変化が生まれつつあることをご存じでしょうか?
働き方が多様化し、中途採用や副業などが広がるなかで、「プロパー」と「非プロパー」の線引きに違和感を覚える声も少なくありません。実際、ある若手社員はこう語ります。
「配属先で、あの人はプロパーじゃないからと小声で言われているのを聞いて、ちょっと怖くなったんです。そこに何か序列のようなものを感じてしまって…」
また別の職場では、新卒1年目の社員が「私、プロパーなんです!」と発言したことで、その場にいた契約社員や中途入社の先輩たちから、「え…?」とけげんそうな目で見られてしまったというケースも。
悪気はなくても、「プロパー=正統なルート」「それ以外=正統ではない」といったニュアンスが、無意識のうちに職場の分断を生んでしまうこともあるので、注意したいですね。
プロパー社員のメリットとデメリット
プロパー社員には、企業文化や仕事内容への理解度が高く、長期的な視点で育成しやすいというメリットがあります。さらに、「同期との絆が深くて、社内コミュニケーションが取りやすい」、「社内の人脈が広がりやすい」などのメリットを挙げる声も。このようなことから、組織の中核を担う存在として期待されることもあるでしょう。
その一方で、「長く同じ組織に属していることで、考え方がかたよってしまう」、「プロパー社員たちの独特の内輪感があって、中途採用の人がなじみにくい」などのデメリットを指摘する声も。
さらに、プロパーとそれ以外の社員との間に、無意識の見えない壁や派閥のようなものができてしまうという話も時折耳にします。こういった分断ができてしまうと、チームの一体感がうすれてしまうことや、働きやすさにも影響してくる可能性があるというのも、気をつけたいポイントですね。
最後に
- 「プロパー」は、新卒入社の正社員を指す場合が多いが、正社員全般や専門人材、医薬品営業職を指すこともあります。
- 「プロパー」と「非プロパー」の区別は、社内に序列や見えない壁を作ってしまうリスクもあります。
- 多様な働き方が重視される現代では、呼び方や意識のアップデートが求められています。
この記事では、プロパーという言葉のビジネスでの意味や、業界ごとの使われ方などを解説しました。文脈や業界によって意味が多様な「プロパー」という言葉。その背景にある価値観を見直すことが、より働きやすい職場づくりへの一歩になるのではないでしょうか。
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執筆
塚原社会保険労務士事務所代表 塚原美彩(つかはら・みさ)
行政機関にて健康保険や厚生年金、労働基準法に関する業務を経験。2016年社会保険労務士資格を取得後、企業の人事労務コンサル、ポジティブ心理学をベースとした研修講師として活動中。趣味は日本酒酒蔵巡り。
事務所ホームページ:塚原社会保険労務士事務所
ライター所属:京都メディアライン