「そして」の基本的な意味と注意点

「そして」は、さまざまなところで使える便利な接続詞です。そのため、うっかり使い過ぎたり、ふさわしくない場面で使ってしまうこともあるかもしれません。はじめに、「そして」の基本的な意味と注意点をチェックします。
「そして」は情報を追加する接続詞
「そして」は「そうして」が変化したもので、前の文章に物事を付け加える添加の接続詞と呼ばれます。たとえば、次のような使い方が考えられます。
【例文】
・コンビニでお弁当を買い、そして公園で食べました
・昨日はひどく疲れた。そして、とても眠くなった
・この映画は非常に面白く、そして音楽も素晴らしかった
「そして」には、因果関係のある二つのものをつなげたり、物事を並べて「そして」の後に来るものを強調する役割があります。
そ‐して[接]
[接]「そうして」に同じ。「冬が去り、そして春が来る」
小学館『デジタル大辞泉』より引用そう‐して〔さう‐〕【▽然うして】
[接]
1 前述の事柄を受け、それに継続して、あるいはその結果生じる事柄を導く。そして。「朝、六時に起きた。然うして散歩に出かけた」「父が事業に失敗した。然うしてわが家は没落した」
2 前述の内容を受けて、さらに付け加えることを表す。そして。「富士山は高く、然うして美しい」
小学館『デジタル大辞泉』より引用
繰り返すと回りくどくなるので省く
「そして」はつい使ってしまう接続詞の一つですが、使い過ぎると回りくどくなるという特徴も。
わかりやすい文章に大事なのは「接続詞はなるべく省く」ことです。「そして」「それから」といった接続詞は、なくても文章の意味が通じやすいので省いても問題ないかもしれません。
一方、「しかし」「だが」といった逆説の接続詞のように、ないと文章がわからなくなる接続詞は残しておきます。「そして」を使うときは、この一言がないと困るかどうかをチェックし、できるだけ減らしましょう。
敬語と一緒に使うときは言い換える
接続詞を敬語にすることはできません。ただ、カジュアルな表現か改まった表現かという種類の違いはあります。
「そして」はカジュアルな印象を与えるので、敬語を使うようなフォーマルな場面では避けたほうがよいでしょう。ビジネスシーンなどで使い過ぎると、どこか子どもっぽい言葉使いだと相手に思われてしまう可能性があります。いっそ省いてしまうか、次項で説明する「よりかしこまった表現」に言い換えるのがおすすめです。
ビジネスで使える「そして」の言い換え表現

ビジネスで使える「そして」の言い換え表現を紹介します。時系列を表す「その後」や、強調の意味を持つ「さらに」など、それぞれの言葉のニュアンスを理解し適切に言い換えましょう。
時系列を表す「その後」
「その後」は「ある事柄が起こったあと、それ以来、以後」といった時間の流れを表します。また、物事の起こった順番を示すことで、因果関係を表す場合もあります。たとえば、次のような使い方が可能です。
【例文】
・先日の会議で議論した件ですが、その後、何か進展はありましたか?
・今回の企画は承認される予定です。その後は、各部署との連携をお願いします
・A社の担当者とは、その後会って話すことになりました
「その後」は時系列を表す「そして」と似た働きをします。ややかしこまった印象を与える言葉として言い換えやすいでしょう。
強調の意味を持つ「さらに」
「さらに」は、あることが起こった後、同じことが重なったり程度が激しくなるときに使います。加えて、先にあった内容に別の物事が加わったという状況にも使えます。
【例文】
・会議でなかなか結論が出ないため、さらに1時間延長される見込みだ
・プレゼンは成功したが、さらに顧客からのフィードバックを活用する必要がある
・この製品はコストパフォーマンスに優れ、さらに、環境に配慮した素材を使用しています
「さらに」は、「A、BそしてC」といった場合の言い換えにも使えます。後にくる言葉を強調したいときに使いましょう。
情報を列挙する「並びに」
「並びに」は、対等な関係にある二つの物事を並べる接続詞です。かしこまった言い方なので、ビジネスシーンやフォーマルな場面で耳にしたことがある人も多いはず。
【例文】
・サービス利用規約に同意した利用者並びにその関係者は、本規約を遵守するものとする
・本社移転に伴い、住所並びに電話番号が変更となります
・貴社のますますのご発展並びにご健勝を心よりお祈り申し上げます
「そして」「さらに」のような強調の意味はなく、英語の「AND」と同じニュアンスの言葉です。
情報を補足する「加えて」
「加えて」は、先に示した情報や意見などに別のものを付け加えるときに使います。例文をチェックしましょう。
【例文】
・プロジェクトの進捗は予定通りです。加えて、メンバーの協力体制も強化されました
・このシステムは作業効率の向上に加えて、ヒューマンエラーの削減にもつながります
・当社の製品は優れた性能を誇り、加えて、手厚いアフターサービスも提供しています
ビジネスでは、プレゼンテーションの場や交渉でよく使う表現です。単なる情報の追加というだけでなく、「聞き手が既に知っていることに新しい情報を付け加える」などのアピール効果もあります。
【「そして」を連発してしまう人向け】わかりやすい文章を書くコツ

仕事の書類をわかりやすく書こうと思っても、どこから手を付ければよいか混乱する人は少なくないでしょう。実は、基本のルールを押さえるだけで、文章はぐっとわかりやすくなるのです。ここでは、相手に伝わりやすい文章を書くコツについて紹介します。
結論を最初に書く
わかりやすい文章とは、主張が読み手に伝わりやすい文章のこと。結論を頭に持ってくると、文章の目的がはっきりするため、後からさまざまな情報が追加されても混乱しにくくなるでしょう。結論を先に持ってくる文章構成の術として、「PREP法」と呼ばれている手法を用いると便利です。
【PREP法の例】
・結論(Point):このサービスは、お客様の業務効率を大幅に改善します
・理由(Reason):なぜなら、煩雑な事務作業を自動化できるからです
・具体例(Example):データ処理がボタン一つで完了します
・結論(Point):結果として、お客様はより重要な業務に集中できるのです
いちばん言いたいことを冒頭に置き、主張の根拠となる理由や具体例を述べた後、結論を再確認します。PREP法を使えば、情報をわかりやすくまとめられるでしょう。
一つの文には一つの情報を入れる
わかりやすい文章を書くための基本ルールに、「一文一義」があります。一文一義とは「一つの文には一つの意味・情報だけを入れる」という意味です。悪い例と良い例を見比べると、以下のようになります。
【悪い例】
・このプロジェクトは、先週の会議で決定され、来週から本格的に始動する予定で、メンバーは田中さんと佐藤さんが担当し、予算は50万円に設定されています【良い例】
・このプロジェクトは、先週の会議で決定されました。来週から本格的に始動予定です。担当メンバーは田中さんと佐藤さんで、予算は50万円に設定されています。
一文一義を意識すると、長くて回りくどい文がすっきりと整理され、時系列や因果関係がわかりやすくなります。ただ、使いすぎると文章がぶつ切りな印象を与えるので、一文に二つの情報を入れる「一文二義」なども交えるとよいでしょう。【良い例】の「担当メンバーは田中さんと佐藤さんで、予算は50万円に設定されています。」という文章が一文二義にあたります。
関係性の強い言葉は近くに置く
「関係性の強い言葉は近くに置く」のも、文章をわかりやすくするコツです。たとえば、修飾語は被修飾語の近くに置くと関係が明確になります。修飾語が複数あったり長過ぎたりする場合は、読みやすいように文章を分けられないか考えてみましょう。
【悪い例】
・この会社は次世代の新しい技術として、環境に配慮し、省エネ性能も非常に高い技術を開発しました【良い例】
・この会社は、環境に配慮し、省エネ性能も非常に高い次世代の技術を開発しました
上記の例では、「次世代の技術」と「開発」を近づけて関係をわかりやすくしています。また、主語と述語も近づけると関係がはっきりし、主語と述語がずれる「ねじれ」が起こりにくくなります。
情報がすっと入ってくる文章か見直す
わかりやすい文章を書きたいなら、書いた後の見直しは必須。このとき、誤脱だけではなく、情報がすっと入ってくる文章かチェックするのがポイントです。
読みやすい文章を最初から書くのは、書き慣れた人でも難しいと言われます。結論が最初にきていれば、読者は全体の方向性を把握しやすくなるでしょう。一文一義や一文二義などは、一つの文章に情報を詰め込み過ぎないための工夫です。
文章がわかりやすくなるためのルールを意識しつつ、書いた後に2回は見直すとよいでしょう。
まとめ
-
「そして」は時系列や情報の追加を表す接続詞
-
「そして」を使い過ぎると読みにくい文章になる
- 敬語を使うシーンでは言い換えると◎
読みやすい文章を書くには、結論を先に持ってくるPREP法や一文一義を活用するなど、さまざまなコツがあります。相手に必要な情報をきちんと伝えられる文章は、仕事において武器になること請け合いです。まずは自分が書いた文章を読み返し、情報がすっと入ってくるか見直すところから始めましょう。
メイン・アイキャッチ画像/(c)Adobe Stock
TEXT
Domani編集部
Domaniは1997年に小学館から創刊された30代・40代キャリア女性に向けたファッション雑誌。タイトルはイタリア語で「明日」を意味し、同じくイタリア語で「今日」を表す姉妹誌『Oggi』とともに働く女性を応援するコンテンツを発信している。現在 Domaniはデジタルメディアに特化し、「働くママ」に向けたファッション&ビューティをWEBサイトとSNSで展開。働く自分、家族と過ごす自分、その境目がないほどに忙しい毎日を送るワーキングマザーたちが、効率良くおしゃれや美容を楽しみ、子供との時間をハッピーに過ごすための多様な情報を、発信力のある個性豊かな人気ママモデルや読者モデル、ファッション感度の高いエディターを通して発信中。
https://domani.shogakukan.co.jp/
あわせて読みたい


