Summary
- 「旦那」は、仏教語「檀那」に由来し、もともとは布施をする人を指す敬称だった。
- 現代では主に妻が夫を指す言葉として使われているが、敬意のニュアンスは薄れている。
- 「夫」「主人」「亭主」との違いを理解すると、場面に合った呼び方ができる。
「旦那」という言葉を何気なく使っていませんか? 検索上でも圧倒的に使われるこの呼び方には、意外な背景があったりします。
本記事では、「旦那」という言葉の意味と語源から「夫」「主人」「亭主」といった呼び方の使い方まで網羅的に解説します。
「旦那」という言葉の本来の意味と成り立ち
まずは、「旦那」という言葉の意外と知られていない由来を、わかりやすく解説します。
「旦那」の語源は仏教? もともとはどんな意味だった?
「旦那」のもとになった言葉は、「檀那(だんな)」という仏教由来の表現とされます。この言葉は、元々布施のことを指していました。それが転じて、寺院にお布施を行う人々を意味するようになります。
時代が進むにつれ、「旦那」は宗教的な意味を離れて日常語として定着していきます。特に江戸時代以降は、町人文化のなかで商人や職人の「雇い主」や「家の主人」といった意味合いで敬意を込めて使われるようになりました。
このほかにも、商人が得意客のことを指して、「旦那」ということもありましたよ。一般的にへりくだって呼びかけるときに使われます。

現在使われている意味を確認
「旦那」は、現在、妻が夫のことを言うときに使われることが多いでしょう。辞書では、次のように説明されています。
だんな【×檀那/旦那】
《梵 dānaの音写》
1 ほどこし。布施。転じて、布施をする人。檀越(だんおつ)。檀家。
2 商家の奉公人などが男の主人を敬っていう語。「店の大―」
3 商人が男の得意客を、また役者や芸人が自分のひいき筋を敬っていう語。また一般に、金持ちや身分のある男性を敬っていう。「―、これはよい品でございますよ」「顔見世に―衆を招く」
4 妻が夫をいう語。他家の夫をいう場合もある。「お宅の―」
5 妾(めかけ)の主人。パトロン。「―がつく」「―を取る」
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
「旦那」は元々自分の夫を敬って呼ぶ語でした。ただし、現代では敬意を伴わずに使われています。
このほか、妾や芸者などが自分の世話をしてくれる男性を敬って「旦那」と呼んだりします。
参考:『日本国語大辞典』(小学館)
「旦那」は、元々は敬意を含む表現。
「夫」や「主人」、「亭主」との違いは?
夫婦のうち、男性の配偶者を指す言葉には「旦那」のほかにも「主人」「夫」「亭主」などがあります。それぞれの使い方や意味の違いを見ていきましょう。
「夫」
自分の配偶者や第三者の配偶者を指す表現。ただし、話し相手の配偶者を指すときには使いません。漢字では「良人」とも書かれます。

「主人」
「主人」は広く使われている呼称ですが、本来は「主従関係」を表す言葉でした。英語では”the master of a house”(家の主人)に相当します。
近年では、「主人と妻」という表現に上下関係を感じ、対等なパートナーシップを重視する観点から、この言い方を避ける人も増えています。
「亭主」
「亭主」はもともと「一家の主」という意味で、転じて茶道における客をもてなす主人を指す敬称でした。しかし現代では、「うちの亭主」といった形で親しみを込めた、ややくだけた響きの言葉として使われています。フォーマルな場面には適しません。
敬称のつけ方
話し相手の配偶者を指すときは、次のように敬語を添えるのが一般的です。
主人・亭主 → 「御主人」「御亭主」
旦那 → 「旦那様」
参考:『使い方の分かる 類語例解辞典』(小学館)
「主人」は、本来は「上下関係・主従関係」を表す語でした。
ビジネスシーンで「旦那」は使っていい?
社内の会話や顧客とのやりとりで「旦那」という表現を使うのは適切なのでしょうか? ビジネスマナーの視点から、状況別の適切な表現を解説します。
現在のスタンダードは「夫」
社内外を問わず、ビジネスシーンでご自身の配偶者を指す場合は「夫」を使うのが、現在の最も標準的で、かつ無難な表現です。公的な書類はもちろん、様々な価値観を持つ方々が集まるビジネスの場において、誤解なく、誰に対しても誠実な印象を与えることができます。

「主人」や「旦那」「亭主」が避けられる理由
主人
本来は「家の主」や「雇い主」を指す言葉で、上下関係を含みます。現代では家庭内の呼称として使う人も多いですが、職場や外部とのやりとりでは、相手に「上下関係」を意識させてしまう可能性があります。
旦那
江戸時代には家主や得意客を敬って呼ぶ言葉でしたが、現代では親しみを込めたカジュアルな響きに変化しています。顧客や目上の人との会話では軽く感じられ、不適切とされることがあるでしょう。
亭主
主に家庭内や冗談まじりで使われる呼び方で、公的な場には不向きです。
言葉は時代と共にその意味合いや使われる場面が変化します。ビジネスとは、多様な背景を持つ人々と信頼関係を築き、協力して価値を創造する場です。
だからこそ、特定の価値観を想起させたり、不快感を与えたりする可能性のある言葉を避け、中立的で誰からも受け入れられやすい「夫」という言葉を選ぶのが賢明でしょう。
公的な場や職場では「夫」が無難。
最後に
POINT
- 「旦那」は仏教語「檀那」が語源で、もともとは敬意を表す言葉だった。
- 現代では妻が夫を呼ぶ一般的な言葉だが、もとの敬意の意味は薄れている。
- ビジネス・公式文書では「旦那」ではなく「夫」が適切である。
「旦那」という呼び方は、多くの人にとって親しみある言葉です。ただ、その歴史的背景や受け手の印象を理解したうえで使うことで、より丁寧な人間関係を築く一助となるはずです。日常の言葉にも少し意識を向けてみることが、コミュニケーションを豊かにしてくれます。
TOP・アイキャッチ・吹き出し画像/(c) Adobe Stock

武田さゆり
国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。
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