女性活躍推進、と国も企業もいうけれど。そしてそれはほんとうにいいことなんだと頭ではわかっているけれど。いざ自分ごととなると、アンケートによると、ドマーニ読者の6割以上は「出世したくない」という現実。その理由、先輩管理職の声、昇進しない場合の心得まで調べてみました。
【目次】
アラフォーキャリアに立ちはだかる4つの山
現在、日本の企業の管理職のうち、女性はたったの11.1%!(※1)
また、世界各国の女性管理職の割合を示すランキングでは、日本は108か国中なんと96位(※1)という結果が。
政府は2020年までに女性管理職の割合を30%にする目標を掲げ、大手企業の81.7%(※2)は女性活躍推進の取り組みを行っていますが、目標達成にはほど遠いのが現状です。
一方で、まさに管理職になることを打診される〝プチ管(プチ管理職)〟世代でもある、ドマーニ読者へのアンケートでは、63.7%が「昇進したくない」と回答しています。
ちなみに男性への調査では、59.8%(※3)が「課長以上の昇進希望あり」だそう。
この違いはどこから生まれるのでしょうか?
〝従来の管理職像〟しか知らない30代の女性が、管理職になることを求められる過渡期の今、二の足を踏む理由はなんなのか。そのハードルとなる〝4つの山〟を分析するとともに、実際に「昇進した」女性たちから乗り越え方も教えていただきます。
※1国際労働機関(ILO)「GAINING MOMENTUM」(2015)
※2帝国データバンク「女性登用に対する企業の意識調査」(2016)
※3労働政策研究・研修機構「男女正社員のキャリアと両立支援に関する調査」(2013)
ドマーニ読者の6割強が出世願望なし!?
Q 出世したいですか?
理由は「家庭を優先させたい」「現場が楽しいから」etc.。働くことは好きだけれど、出産などの女性ならではのライフイベントもあり、昇進に魅力を感じない人が多数。
女性が昇進を迷う〝4つの山〟とは?
なぜ、アラフォーキャリアは〝昇進〟に足踏みしてしまうのか?
女性がぶつかる〝山〟をキャリアのプロが解説。ライフイベントが重なるアラフォーならではの悩みのほか、私たち自身がこれまでの〝管理職像〟にとらわれている側面や、社会・企業側の事情も見えてきました。
教えてくれたのはマネジメントのプロであるこのおふたり!
コーチ・研修講師 小川由佳さん
おがわゆか●コンサルティング会社などを経て独立。近著に『仕事にも人生にも自信がもてる!女性管理職の教科書』(同文舘出版)。
サイボウズ代表取締役社長 青野慶久先生
あおのよしひさ●松下電工(現パナソニック)を経て、サイボウズ設立。社員の離職率を6分の1に下げ、自身も育児休暇を3度取得した。
山・その1<「長時間労働は無理」の山>
●夫婦の時間を大切にしたい
●これ以上残業したくない
●子育てをおろそかにしたくない
業務量や責任が増して、プライベートが犠牲になるのでは?と考えたり、出産・育児との両立を懸念している人が多数!
▼【プロによる現状分析と対策法】
●残業があたりまえの時代は終わりつつある
●管理職のほうが時間の融通がきく場合もある
●家事を時短できるサービスなどを利用する経済的な余裕ができる
「昇進すれば会議の時間を決めたり、実務を部下に振るなど自分で時間をコントロールしやすくなります。また、給与がUPすれば家事代行など〝お金で時間を買う〟選択肢も。そもそも、長時間労働をよしとする風潮は変わりつつあります」(小川さん)「家のことを専業主婦の妻に任せきりだった、これまでの男性管理職像にとらわれているだけ。私も16時退社で保育園のお迎えに行っています。今後は性別を問わず育児や介護で長時間働けない管理職が増加するので安心を」(青野さん)
山・その2<「プレイヤーでいたい」の山>
●実務に集中して自由に動きたい
●専門性を高めたい
●手に職をつけるほうがつぶしがきく
現場で立ち回る心地よい緊張感や、目標を達成したときの喜びを知っている世代だけに、最前線を離れるのは寂しい…!?
▼【プロによる現状分析と対策法】
●チームで大きな仕事ができる喜びもある
●マネジメント経験は重宝される
●プレイヤーとしての仕事も兼任できる
「〝つぶしがきく〟という点でいえば、専門性が高い職人肌の人以上に、大きなものごとも動かせるマネジメント経験のある人は、転職などでも選択肢が広がります。また管理職は、ひとりではできない大きな仕事に挑戦するチャンスでもあるので、その醍醐味に目を向けてみては」(小川さん)「現場の楽しさはもちろん否定しません。でも、管理職になって自分の裁量が増える楽しさを経験する前から『今のままがいい』と判断するのは、少しもったいないような気がします」(青野さん)
山・その3<「リーダーに不向きでは」の山>
●部下がついてくるリーダーの器じゃない
●縁の下の力持ちでいたい
●人をグイグイ引っ張るタイプじゃない
生真面目でコツコツ型の性格の人も多いアラフォー世代、性格的に「管理職というキャラではない」と尻込みしている人も。
▼【プロによる現状分析と対策法】
●引っ張るだけがリーダーじゃない
●女性の細やかさはマネジメントの強みになる
●自分なりのリーダー像を見つけて
「〝自分についてこい!〟と部下のお尻を叩くような管理職はもはや時代遅れ。また、たとえば『メールで営業するなんてもってのほか』など、自分のやり方を押し付ける人は今どき受け入れられません。逆に柔軟なタイプの人のほうが管理職向きですよ」(青野さん)「管理職は部下を引っ張らなければいけないというのは思い込みです。部下ひとりひとりのよいところを引き出したり、部下に助けてもらったっていい。自分の性格や強みを把握して生かすことのほうが大切です」(小川さん)
山・その4<「経験不足なので」の山>
●今の実力では周りに迷惑をかけるのでは
●何をやったらいいのかわからない
●自分より知識のある人はいるのに
管理職になるキャリアプランを思い描いてこなかったため、知識や能力・現場経験などが「足りない」と自信のない声が…。
▼【プロによる現状分析と対策法】
●管理職がすべてのことを知っている必要はない
●昇進を打診される時点でその力はあると考えるべし
●苦手なことは得意な部下に任せればいい
「管理職だからといって、知識や経験を完璧に備えている必要はありません。むしろ、知識や経験をもつ部下それぞれの力を見極めて引き出せることのほうが大事です。管理職を打診されたこと自体に自信をもって」(小川さん)「これからの管理職には、さまざまな背景をもつ人を組み合わせて運営していく〝多様性マネジメント〟力が必須。会社の中での経験より、趣味でも育児でも、社外の世界を知っていることのほうがよっぽど価値があります」(青野さん)
風景画像撮影/さとうしんすけ
Domani9月号「昇進したくない」症候群 より
撮影/伊藤 翔、江口登司郎 イラスト/泰間敬視 構成/赤木さと子・酒井亜希子(スタッフ・オン)