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2020.02.05

兜町のあるビルに【テクニカル女子】が吸い込まれていくそのワケは?

昨今、公的年金以外に「2000万円の老後資金」が必要という金融庁の公表によって、年金や退職金だけでは老後の暮らしが賄えないという認識が日本全国に広がった。このニュースによって証券口座の開設が増加傾向にあるが、「初心者の拙速な投資」は大事な資金を失うことになりかねない。そのため、書籍やセミナーなどで株式投資について学ぼうという人が増えているという。 その中でもユニークなのが、取引の際に用いるチャートなどのテクニカル分析を極めようとしている「テクニカル女子」の存在だ。

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先日夕方、東京・兜町の東京証券取引所のすぐ真裏にあるビルに、女性たちが吸い込まれるように入っていった。この日は、「日本テクニカルアナリスト協会」(NPO法人=特定非営利活動法人)が主催する、女性を対象にしたテクニカル分析のセミナー(5回目)が行われていた。参加者の顔ぶれは20〜40代の個人投資家、金融機関勤務、ファイナンシャルプランナーなどで、ある程度、金融リテラシーのある投資経験者が多いという。

テクニカル分析をせずに投資をするのは危険

では、ここに参加している女性たちは、なぜテクニカル分析を重要視するのか。投資の基本は「安く買って高く売る」ことだが、しっかりチャート分析をせずに適当に売買していると、「高く買って塩漬け」「高く買って損切り」という事態に陥りやすい。

テクニカル分析をしなくても投資は可能だが、これを知らずに投資をするのは、時として大損をしたり、逆にもっともうかるチャンスをみすみす逃したりすることは、投資経験者なら誰でも経験することだ。「テクニカル分析を知っていれば、最低限、銘柄ごとのエントリー(入り口)とエグジット(出口)の大まかなポイントが押さえられる」というのが彼女たちの共通認識だ。

(C)Shutterstock.com

投資を始めたばかり初心者の場合、どちらかというと企業業績や経済指標などのファンダメンタルズ分析に関しては、熱心に取り組むケースが多い。その一方で、テクニカル分析は、チャートだけでも月足、週足、日足、1分足などとさまざまあるうえに、移動平均線など、テクニカル分析に用いるさまざまな指標なども含めると、理解するだけでなく、実際に使いこなすまでにそれなりの時間と経験が必要になってくる。

そのため、書籍などで独学しても、ある程度使いこなす前に挫折する人が多いというのもうなずける。よって、「投資家にとってこれは必須!」といえるテクニカル分析を学ぶ導入として、専門家からわかりやすく教えてもらう機会があるのはとても貴重だろう。

この日のテーマは、「株主優待・高配当、中小型株」。ちなみに、4回目までの講座内容は下記のとおりだ。

1回目:テクニカル分析をなぜ学ぶのか、テクニカル女子のキャリア、考えていることは?など
2回目:元証券レディが解説する株式投資の基本
3回目:東証担当者の金融リテラシー向上セミナー
4回目:ESG投資

では、実際にどんな講義が行われたのか。

まず初めが、女性を中心に人気の「高配当、株主優待銘柄」のテクニカル分析について。講師の国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリストの横山利香さんによると、「高配当銘柄は人気がある一方で、チャートを確認せずにやみくもに買うのは危険」とまず注意を促す。

「代表的な高配当銘柄としてJT(2914)、日産自動車(7201)などが挙げられます。しかし、これらの銘柄はおおむね株価が下落基調にあるものが多いため、いわゆる高値づかみをしてしまうと、高い配当によるインカムゲインが得られても、肝心なキャピタルゲインが目減りしていく傾向にあります」。また、「業績悪化の事態に陥ると、減配や無配になり、さらに売られやすくなるので十分注意が必要」。

ほかにも、J-REIT(不動産投資信託)も高配当で人気だが、「かぼちゃの馬車やレオパレス問題で国内の不動産市場の先行きが不透明で、不動産価格や賃料の高騰で株価は高値圏にあるため、今投資すべきかどうかの見極めが必要」と釘を刺す。高配当銘柄に言えることは、テクニカル分析をしたうえで、やはり「これからも好業績を出し続けられるものかどうか、ファンダメンタルズ分析もしたうえで選ぶ必要がある」と横山さんは話す。

「ブームになっている銘柄」には乗らない勇気が必要

また株主優待に関しても注意が必要だ。一見優待が手厚いように見える銘柄も、高配当銘柄と同様、優待内容は業績に連動するため「もしその会社が新しい優待を始めても、業績が悪化すれば1年でやめることもあります」(横山さん)。

銘柄選びの際は、必ず自分が本当に使える優待の会社を選び、使えない優待の会社を外すこと。そして、自分が普段からいいと思っている商品やサービスの会社をチェックしておき、最終的にはやはりテクニカル分析でチェックして、下降トレンドにある銘柄を外すのがポイントだという。

「例えば、これからもし円高に傾くようなら、インバウンド(訪日外国人客)需要が下がりそうな会社を避けることです。例えば、ブームで盛り上がっている銘柄に飛びつくよりは、次に何が来るのかを予想すること。意外と自分の身近にそうしたヒントがあるものです」(横山さん)

ちなみに、横山さんの場合、自分が欲しい優待の会社をマークしておき、市場全体にある程度大きなショックが来たときに、NISA(少額投資非課税制度)で購入し、長期で持っておくという戦法をとっているそうだ。

続いて行われたのが、同じく国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリストの大谷正之さんによる「中小型株」の見分け方と投資タイミングについて、だ。

まず、時価総額(株価×発行株式数)がおおよそ1000億円以下のものが小型株、1000億〜3000億円以下のものが中型株と言われ、これらの中には成長余地の高い会社が多いという。

実際、成長を遂げた会社として大谷さんが挙げたのが、時価総額約2500億円弱(2019年12月末現在)の寿スピリッツ(2222)だ。実際、2019年3月期の業績は2010年3月期と比べると、売上高で2倍以上、営業利益で3倍以上と目覚ましく成長している。

主に、ドライブインなどでの土産物のお菓子を製造販売する会社だが、昨今はルタオというブランドのチーズケーキなどがテレビに取り上げられるなどでヒットし、空港などで継続的に売り上げを伸ばし、インバウンド効果もあって成長している会社だ。実際、寿スピリッツの週足を見ると、右肩上がりのトレンドを形成している。

では、こうした銘柄をいち早く見つけるにはどうすればいいのか。

「チャートが底で横ばいになっているところで、いつそのトレンドが転換するのか。その底打ちのタイミングを見極めることです。こうしたチャートの節目には何かドラマ(ニュースなどのトピックス)があるもので、それをきっかけに一気に上昇トレンドが形成されることがあります」(大谷さん)。テクニカル分析の初歩の知識があれば、上昇トレンド、下降トレンドへの転換を見極められるようになる。

女性だけで切磋琢磨できる数少ない機会

ほかにも、週足や日足の比較的長期間のチャートで、移動平均線や、サポート(下値支持線)ライン、レジスタンス(上値抵抗線)ラインを引くことでトレンドラインの転換を見極める方法を、具体的な銘柄を挙げながら初心者でも理解しやすいように解説していた。

NPO法人日本テクニカルアナリスト協会(NTAA)は「女性のためのテクニカル分析の基本」講座を開催します(クリックするとNTAAのHPにジャンプします)
さらに、投資家が注目しているIPO(新規上場株式)など、成長性の高い銘柄の中から、業績予想とテクニカル分析を交えてさらに成長が期待できそうなものに振り分けていく方法などを紹介し、セミナーは終了した。「テクニカル分析の講座はほぼ9割が男性、というケースが多くて、女性が気兼ねなく参加できる講座があるのがとてもありがたいです。セミナー後の懇親会ではテクニカルに興味のある数少ない女性同士のネットワークができるので、みんなで切磋琢磨できるのもいいですね」(30代女性)など、参加者にはおおむね好評だったようだ。

(C)Shutterstock.com

「テクニカル女子」は、女性投資家の中でもまだまだ少数派。しかし、株式投資に必須のテクニカル分析を女性でも楽しく学べる機会は今後、女性投資家の増加に従い、ジワジワと増えていきそうだ。

取材・文

伊藤 洋次

ジャーナリスト、編集者/立教大学卒業。複数の出版社に勤務。雑誌、書籍の編集などを経て現職。Webサービスの企画、開発なども行っている。

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