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EDUCATION 教育現場より

2020.03.04

コロナ休校を「学びの機会」に変える4つのコツ

 

Text:
石田 勝紀

本当の学びは「生活の場」に詰まっている

全国の小中高校への休校要請があってから、はや数日がたちました。突然のことに、親も学校の現場も大混乱したことでしょう。一方の子どもたちは、学校に行かず毎日遊べる、人生最高のチャンスが来たと、狂喜乱舞したに違いありません(卒業を控えた学年には、名残を惜しむ子もいたでしょうが……)。

そんななか、経済産業省の教育産業室から緊急発表がありました。「未来の教室」というサイトで、オンラインのシステムを利用したさまざまなコンテンツが紹介されたのです。そこには「新型コロナウイルス感染症対策。全国の学校の臨時休業が進むでしょうが、そんなときこそEdTechがその力を発揮します」とのメッセージが掲げられています。

今のような非常事態がいつまで続くかはわかりませんが、学校に行かねば勉強(授業)が進まないという、現在の学校教育のもろさが表面化したともいえるわけです。今回をきっかけに、アナログ主体の日本の教育が、オンラインを通じても行われる体制へ、急速に整備されていくかもしれません。

さらにいえば、この危機を経て日本人の価値観が大きく転換し、“本当の意味での”働き方改革や学び方改革が始まる、という可能性も秘めているのではないかと思います。

親は「この機会を生かす」と前向きに捉えよう

さて今回、この記事を書いたのは、全国の親御さんから非常にたくさんのご質問をいただいたことが発端となっています。

「このような長期休みになってしまい、子どもにどう対応していけばいいのでしょうか?」

「学力が下がるのではないかと心配」

「塾に行ける子とそうでない子の差がついてしまうのではと不安」

など、多くのご相談を受けています。
いったい親御さんはこのような状況にどう対応していけばいいでしょうか。筆者はこれらの質問に対して、次のようなことを回答しています。はじめにお伝えするのは、「このようなめったにない状況をネガティブに捉えるのではなく、ポジティブに捉える」というマインドが大切、ということです。

つまり、逆転の発想で、「このような時期だからこそ、子どもの成長、学ぶ力を高める機会にしてしまう」と考えてみるのです。以下、4つのポイントをあげたいと思います。

1:長期休みにしかできない、「深掘り」をやる

代表的なものは「探究学習」です。何をやるかといえば、その子が夢中になれることを、時間をかけてやっていきます。内容は、気象でも昆虫でも作文でも、本人が興味関心があることから選ぶとよいでしょう。

人が集まる図書館に行ったり、イベント参加したりすることは物理的に難しいと思いますので、このようなときこそネットを利用します。動画でもいいでしょう。先ほど書きました、経済産業省の「未来の教室」を活用するのでもいいでしょう。これらを、子どもの関心分野を深掘りさせる場として使っていきます。

その際、「それってなぜそうなっているの?」「それって、どういうことなの?」とぜひ尋ねてみてください。子どもは人に説明することで、モチベーションが上がり、その過程で表現力も身に付いていきます。子どもたちは、夢中になれることは人にも話したくなるものなので、返答してくる可能性は非常に高いことでしょう。

なお注意点として、子どもの返答に対して評価はしないようにしてください。成果や細部にこだわってダメ出しすれば、せっかくの意欲を奪ってしまいます。それでは元も子もありません。

2:普段なかなかやれない「基礎学習」の時間をつくる

子どもの学習について、「基礎」を心配する親御さんは非常に多いです。基礎学習とは、具体的には漢字、計算などで、本来は日頃から習慣的に取り組んでおくといいものです。しかし、今回のような長期休校では、本来ある学校の授業がないため、家庭でなんらかやる必要が出てきます。子どもの側も、さすがに何かやらないといけないという意識が生まれやすいため、これをきっかけに、習慣化させていくといいでしょう。

・毎朝必ず、朝食の後に5分だけ漢字ドリルをする
・市販の計算ドリルを買ってきて、1ページ取り組む

など、無理のない量から始めてみるといいかもしれません。
学校から宿題が出ていれば、優先順位第1位はもちろん宿題ですが、それとは別に、基礎学習を入れる余裕があればぜひ導入してみるとよいと思います。

予習?それとも復習?

内容についてはどうするのがいいでしょうか。時期的に学年末であるため、その学年の復習をやるか、次の学年の予習を行ったらよいかという質問も多くいただいていますので、それについては筆者は以下のように考えます。

基本的に復習というのは、一度やったことのある問題であるため、新鮮味はなく、やる気はなかなか起こりません。しかし、解ける問題は多く、一定の達成感は得られやすいです。

一方の予習は、先々の分野が学べるという優越感はありますが、わからない問題があるとモチベーションが一気に低下します。

塾などでしっかりサポートしてもらえるのであれば、予習をやってみてもいいですが、家庭で自力で自習する場合は、基本的には復習を中心に行うほうがスムーズでしょう。

基礎学習は、スポーツでいう筋トレと同じようなものです。ですから、レベルアップをするというよりは、学力の維持のため、と捉えるといいかと思います。地味ですが、地道にこなしていけば、確実に力はついていきます。

3: 期間限定で「タスクの見える化」をし、成長実感をさせていく

1枚の紙でも、カレンダーでも、お気に入りの手帳でもいいので、この休みの期間中にやるべきことを書き出して「見える化」させます。そして終わったら「赤」で消していきます。すると、自分の成長が「見える化」されていきます。

このような長期休みでは、とくに小学生はこれといった目標がないことが多いため、ダラダラします。「宿題をやりなさい!」と言っても、嫌々ながらやるだけで、効果は薄いでしょう。そこで、やるべきことを「見える化」させて、やるべきことと、自分の成長がわかるようにしていくのです。

4:子どもを「自立させる場」として活用する

最後に、ここがいちばん重要なポイントになります。

子どもの年齢や親の働き方などにもよりますが、共働きで子どもを家において出かけることになってしまい心配……というご家庭も多いと思います。

このようなときこそ、「自分のことは自分でやる」ようにしていきます。例えば、ある程度の年齢であれば、昼ご飯は自分で作れるように教えていくとか、掃除・洗濯を役割分担してやってもらう、などです。

普段は家のことを何もやらない子でも、今回のような事態であれば、分担しながらやることもやむをえないと考えるかもしれません。

「生活の場」を「学びの場」に変えていく

学びは、学校の勉強のことだけではありません。生活のひとつひとつから学ぶこと、これがまさに21世紀型教育対応モデルなのです。つまり、「生活の場を学びの場」にしてしまうのです。

いずれこの状況も終息します。今はとても大変なときではありますが、少しでも考え方を変えてみて、「あの時期があったから、子どもの自立心が育った」と思えるように、過ごしてもらえたらと思います。

一般社団法人教育デザインラボ代表理事、都留文科大学特任教授

石田勝紀

1968年横浜生まれ。20歳で起業し、学習塾を創業。これまで3500人以上の生徒に対し直接指導。講演会、セミナーなど間接的指導を含め、5万人以上を指導。いわゆる詰め込み勉強をさせず、「心の状態を高め」「生活習慣を整え」「考えさせる」の3つを柱に指導をすることで学力上昇のみならず、社会に出ても活用できるスキルとマインドを習得させてきた。現在は特に、「日本から 勉強が嫌いな子を1人残らずなくしたい」という志のもと、ママカフェ、執筆活動、講演活動を精力的に行っている。国際経営学修士(MBA)、教育学修士(東京大学)。著書に『はじめての子ども手帳』『子どもを叱り続ける人が知らない「5つの原則」』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『ぐんぐん伸びる子は何が違うのか?』(学研)、『「地頭」が育つ5つの習慣』(KADOKAWA)ほか多数。

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