対等か目下にも使える「敬意」
「敬意」も「相手を尊敬する気持ち」を表す言葉で、「敬意を払う」や「敬意を表する」などとよく表現されます。「敬意を表する」という表現には「私はあなたが優れていることを認めます」「あなたに一目置いています」という、やや上から目線のニュアンスが含むことが多いです。そのため、自分と対等か目下の相手に対して使うのがよいでしょう。目上の人に対して気持ちを伝える際は「尊敬」や「尊敬の念を抱く」を使うのがベターです。
【敬意:けい‐い】
尊敬する気持ち。
「―を表する」「―を払う」「―をこめる」
価値のある相手に使う「尊重」
「尊重」は「尊いもの・価値あるものとして重んずる」という意味です。尊敬は相手を自分よりも上に持ち上げるのに対し、尊重は「相手と自分は対等な人間であることを意識する」というニュアンスを含みます。以下で例文を見てみましょう。
例文
・少数派の意見も尊重しなければならない
・互いの価値観を尊重しながら生活しよう
【尊重:そん‐ちょう】
価値あるもの、尊いものとして大切に扱うこと。
「人権を―する」
人だけでなく物にも使える「畏敬」
「畏敬(いけい)」には「崇高な物や人を心から畏れ敬う」という意味があります。尊敬はおもに人に対して使われますが、畏敬は人以外の物にもよく用いられるのが特徴です。畏敬は「畏れ崇める」というニュアンスを含んでいるため、神仏や大自然など、無条件にひれ伏してしまうような「人間離れした存在」に使うことが多い言葉でもあります。例えば「部長に畏敬の念を抱いています」と表現すると、少し大げさで逆に近寄りがたいイメージを与えてしまうかもしれませんね。
【畏敬:い‐けい】
崇高なものや偉大な人を、おそれうやまうこと。
「―の念を抱く」
尊敬を示す言葉遣い。敬語の使い方
尊敬を言葉で表現するために「敬語」を正しく使うことは必須です。敬語には尊敬語・謙譲語・丁寧語の三つがありますが、日本人でも使い分けに悩んだり、使い方を間違ったりするケースがあるものです。敬語の種類や、間違いやすい敬語を再確認しておきましょう。
そもそも敬語とは
敬語とは、話し手が聞き手や話の話題に上っている人物などに対して敬意を示す言葉遣いです。目上の人や年長者に対して使うだけでなく、相手の存在や社会的立場を尊重するために使われたり、相手との距離感を示したりするためにも使われている表現です。職場やビジネスシーンにおいては、敬語をうまく扱うことで、人間関係が円滑に進みます。「敬語を使うと気持ちが伝わらない」と感じる人もいるかもしれませんが、フレンドリーでラフな言葉遣いしかできない人は「常識がなく礼儀知らず」と見なされる場合もあるのです。
尊敬語・謙譲語・丁寧語
敬語には、尊敬語・謙譲語・丁寧語の3種類があります。
「尊敬語」は、話し手が相手の動作や状態を高めることで敬意を示す表現です。「おっしゃる」のように言葉自体が変化するパターンや、「お(ご)~なる」「お(ご)~される」を言葉に付け足すパターンがあります。
「謙譲語」は、話し手が自分をへりくだらせ、間接的に相手や話題の人物に敬意を示す言葉です。自分側から相手側や第三者に向かう行為において、向かう先の人物を立てる「謙譲語I」と、自分の行為を丁重に述べる「謙譲語II(丁重語)」に分けられます。
「丁寧語」は、物事を丁寧に表現して、聞き手に敬意を示します。「です・ます・ございます」が代表的な例です。
押さえておきたい敬語
使い方が難しく、間違いが多いのが「尊敬語」と「謙譲語」です。「部長が〇〇と申しました」「社長が参りました」などと表現する人がいますが、「申す」や「参る」はどちらも自分の行為に対して使うべき謙譲語です。この場合、相手を立てる尊敬語を使い「部長がおっしゃいました」「社長がお見えになりました」と表現します。ビジネスシーンでは敬語を重ねて使う「二重敬語」にも注意が必要です。二重敬語は間違いとは言い切れませんが、くどくどしい印象を与える場合があります。
二重敬語の例
・伺わせていただきます→伺います
・ご覧になられますか?→ご覧になりますか?
・佐藤さんがお見えになられました→佐藤さんがお見えになりました
尊敬される人の特徴
尊敬する気持ちは、心の中から自然に沸き上がってくる感情です。ただ単に「年が上だから」「地位が高いから」というだけでは、尊敬の対象にはなりません。現代社会において、どんな人が尊敬されるのでしょうか?