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LIFESTYLE子育て

2020.05.14

絵本『すずちゃんののうみそ』に学ぶ、自閉症スペクトラム(ASD)のこと

絵本「すずちゃんののうみそ」は親子で自閉症スペクトラム(ASD)について学ぶことができる一冊です。

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絵本から学んだこと

絵本『すずちゃんののうみそ』(文:竹山美奈子 絵:三木葉苗 監修:宇野洋太)をめくると、1ページ目にはこう書かれています。“この絵本は、ことばを話せないASD(自閉症スペクトラム)のすずちゃんの代わりにママが書いた、保育園のお友だちと先生への、お礼のお手紙です”

▲「すずちゃんののうみそ」岩崎書店 文:竹山美奈子  絵:三木葉苗  監修:宇野洋太

我が家の長女の幼稚園のクラスメートにASDの男の子がいました。彼が手をヒラヒラさせたり、大きな声を出したりするので、長女は当初びっくりしていたものの、子どもとは何とも不思議なものですぐに打ち解けてしまい、気づいたときには仲良く一緒に遊んでいました。親は?といえば、子どもほどの短時間ではありませんでしたが、やはり自然にいつの間にか、一緒の幼稚園で共に子育てに対峙する掛け替えのない仲間になりました。

「この前、肩に触れたら号泣されちゃった、ダメだった?」
「そうなの、ウチの子は頭じゃなくて肩がダメなの」

といった具合に、彼の特徴を共有し知っていくにつれ愛しさが増し、我が子同様、彼もまた沢山の大人たちに守られ、健やかに成長していって欲しいと願わずにはいられません。
障がいがあるということで、かわいそうに思ってしまったり、そういう人とどう関わっていいのか分からないと感じる気持ちはよくわかります。しかし、それでも、障がいの有無に関わらず、同じ場所で学び、生きていく人たちがいます。『すずちゃんののうみそ』を通じて、ASDについてちょっとだけ知ってみませんか。

■『すずちゃんののうみそ』についている“付録”

『すずちゃんののうみそ』の巻末には“付録”がついています。1歳までは育児書通りの成長をしているように思えたすずちゃんが、歩き始めたころから見せた兆候、3歳でASDと診断されるまでの過程、小学生になった現在の様子に至るまで、すずちゃんのママが学んだことや暮らしの中で感じたことなど、ASDを理解するためのエッセンスが詰まっています。

ASDの特徴の解説も詳細に記されています。例えば…

・自閉症は発語がなかったり、遅かったりすることで1歳半から3歳頃までに気付かれることが多い
・生まれつきの「脳の情報処理の機能的な問題」なので、後天的な育て方や性格の問題とは異なる
・治るもの、治すものではなく、強みをどう生かすか?伸ばすか?苦手を補うか?の観点で医師、心理士、言語聴覚士、理学・作業療法士による「療育」が行なわれる
・記憶や情報処理の仕組みが違うため、何でも鮮明に覚えていたりする。感覚の鋭さや独特の記憶の仕組みを持つため、音楽や踊り、絵を描くことなど、オリジナリティ溢れる才能を持つ人が多い
・感覚過敏を持っている場合が多いため、音・光・匂い・味・肌への刺激に対して敏感
・感覚過敏や体温調節が出来ない不快感から奇声・奇行・自傷行為・他害行為・パニック・かんしゃくを起こすことも多い(その場合は小さな部屋やカーテン等で仕切ったコーナーに連れていき「クールダウン」を目指す。諭すように、静かに肯定的な短い言葉で「やるべきこと」を伝える。背中をトントン叩いたりさすったりするのが落ち着く子も)
・涙や笑いが止まらないことがあるが、本人にもコントロールできない
・手をひらひらさせる、飛び跳ねる、くるくる回る、すごい横目でものを見るなどの「常同行動(繰り返し行動)」や「感覚遊び」を無意識にやることで、落ち着きを保っていたり、楽しんでいることが多い
・顔認識が苦手なため、場所や服装、髪形が変わると同じ人だと認識できない事がある

■児童精神科医師による医学監修も

この絵本は、児童精神科医師である宇野洋太医師による医学監修もきちんとされています。宇野医師は、大学時代に偶然、自閉症のある子どもたちと過ごすサークル活動に参加し、自分の中にある常識・知識では解けない謎に直面した衝撃がきっかけで、この道を選んだそう。物事の感じ方、捉え方といった脳の機能的な異なりがある自閉症は、とても魅力的でユニークに映る一方、その違いがあるが故に、彼ら彼女ら自身や家族等の周囲の方々が苦労を背負っている、いわゆる障がいの状態となっている時があると指摘しています。

■障がいを理由にした差別はあるのか?

内閣府が2017年に公表した「障害者に関する世論調査」では、日本社会に障がいを理由にした差別や偏見が「ある」と答えた人は83.9%にのぼります(前回2012年の調査より5.3%減少)。

▲障害者に関する世論調査(内閣府、平成29年)

障がいによる不当な差別を禁止した「障害者差別解消法」が2016年4月から施行されていますが、どんな法律が出来たとしても恐らく偏見はゼロにはならないでしょう。しかし、幼い頃から一緒にいるのが当たり前で、逆上がりができた、ニンジンが食べられた、そんな小さな成功を、日々共に喜ぶ積み重ねがあれば、障がいをもっているということだけで不当に特別視するような感情が生まれる余地はないはずです。障がいの有無に関わらず、共に生きていく社会をつくるには、障害がある子もない子も共に学ぶ、インクルーシブ教育が不可欠だと私は考えます。

■インクルーシブ教育とは程遠い、日本の現状…

幼稚園、保育園まで共に過ごしていた子ども達も、小学校に進学する段階では、障がいがある子ども達は、お友達と別れて ①特別支援学校 ②特別支援学級 ③通級指導 ④普通学級(またはその組み合わせ)から選ぶことになります。

▲特別支援教育の対象の概念図(義務教育段階)(文部科学省、平成27年)

絵本の最後にはこんな下りがあります。

”すずちゃんは、みんなとおなじしょうがっこうにはいけないけど、うんどうやことばのれんしゅうがゆっくりできる「とくべつしえんがっこう」っていうがっこうにいくよ”

子ども達に読み聞かせをしていると、毎回ここで胸が詰まってしまうのです…
みんなが同じ学校で学べるインクルーシブ教育は必要。絶対に必要です。だけど現行の特別支援学級や通級指導、普通学級における受け入れ態勢そのものを変えなければ、実現するのは難しいと言わざるを得ません。当たり前のノーマライゼーションを実現する、そのテコになるのは政治であると共に、私たち一人一人が障がいという個性について知ることなのかも知れません。

Domanist

伊藤孝恵

2児(共に女児)の母・ 参議院議員。テレビ局、大手化粧品メーカー勤務を経て、人材総合サービス会社で宣伝を担当。2016年に初当選し、ママパパ議員連盟を立ち上げるなど精力的に活動中。過去に結婚させたカップルは17組。
IG:https://www.instagram.com/itotakae/

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