親子でダウン症について学んでいます
前回ご紹介した「すずちゃんののうみそ」に続き、今回も1冊の絵本をご紹介します。
我が家の次女の保育園のクラスメートにダウン症の女の子がいました。彼女はいつも私を見かけると両手を広げて駆け寄って来てくれるので、抱き寄せ頬ずりしていると、次女はやきもちを焼いて「ママ!早く帰ろう~!」と言います。
ある日、次女が「〇〇ちゃんは、お話しできないの。何も分からないの」と言うので「そうなの?〇〇ちゃんとママ、いつもニコニコ笑顔でお話し出来てるけどな~」と返したら、少し戸惑ったような顔していました。
いま5歳になった次女と『あいちゃんのひみつ』を手に取り、親子でダウン症について知る時間を過ごしています。
▲あいちゃんのひみつ 岩崎書店 取材・文:竹山美奈子 絵:えがしら みちこ 監修:玉井邦夫
『あいちゃんのひみつ』についている“付録”
『あいちゃんのひみつ』の巻末には“付録”がついています。生まれた赤ちゃんがダウン症だと説明されるのは、生まれた直後や数日後、一か月検診の時等とされておりますが、薬剤師をしていたあいちゃんのママは、生まれてすぐ、我が子にダウン症があると察し、自分から医師に「先生、赤ちゃん、ダウン症ですよね」と聞いたそうです。
ダウン症と一括りに言っても、心臓疾患の程度や筋力、指摘障がいの度合い、その特徴はさまざまだと言います。
ダウン症の特徴の解説も詳細に記されています。例えば…
・染色体の突然変異で起こり、発生率は700~1,000人に1人と言われている
・21番目の染色体が3本あることから「21トリソミー」とも呼ばれる(毎年3月21日は「世界ダウン症の日」に定められている)
・「ダウン」という名前は、発見したイギリスの医師の名前が「ジョン・ラングドン・ダウン」だったことから付けられた
・ダウン症を持つ人は、背が低い、肥満、目がつっている、二重まぶた、顔が平べったい等の外見的な特徴がある
・個人差はあるが、知的障害、心臓や目、耳の疾患、筋力や首の骨の構造が弱い等の身体的特徴がある
・ダウン症そのものは病気ではないため、作業療法や言語聴覚療法、理学療法、心理療法による「療育」によって必要な生活能力を獲得していく
・筋肉が弱くて柔らかいため、赤ちゃんの時から手の操作性を高める課題など、特別な訓練をする
・ものごとを理解するのはゆっくりで、模倣が得意な場合が多い
・疲れやすく、動作の途中で動きが鈍くなったり、はっきり話すことができなくなったりする
・体温調節が苦手で、汗が出にくかったり、出すぎたり、手足が冷えやすかったりするので、気温や湿度には配慮が必要(ダウン症児にとって学校の冷暖房は必要不可欠!)
・身辺自立や性格により、特別支援学校→特別支援学級、またはその逆など、転校することもある
臨床心理学科教授による監修も
この絵本のもうひとつの特徴は、臨床心理学科教授である玉井邦夫先生による監修がされていることです。玉井教授は、ダウン症をもつ長男を含め4児の父親であり、公益財団法人日本ダウン症協会の代表理事でもあります。
新型出生前診断の在り方が問われる今だからこそ知って欲しい
妊婦の血液からダウン症などの、胎児の染色体異常を推定する新型出生前診断(NIPT)は平成25年から国内で実施されていますが、陽性の確定を受けた結果、9割が妊娠中絶に繋がったというデータもあり、命の選別になりかねないといった指摘がある他、妊婦へ遺伝カウンセリングを行うとした日本産科婦人科学会の指針を無視し、営利目的で検査だけを実施する無認定の医療機関が急増し、問題となっています。
厚生労働省は2019年10月に有識者による初の検討部会を設置し、実態調査に乗り出しました。具体的には、無認定施設の実態や利用者の動向、妊婦の不安に対する相談支援の在り方、海外の状況などを調査した上で、改めてNIPTについての適切な実施体制の見解を示すとしています。
あいちゃんのママは、あいちゃんがダウン症だからと言って泣いたことは一度もないそうです。それは以前、妊娠中に胎児ガンがみつかって、産後間もなく亡くなった、あいちゃんのお兄ちゃんを想ってのこと。「ダウン症をもっていても、生きていてくれればいい。」
生きていてくれればいい…母親が我が子に望む、ただ一つのことだと思いませんか?
ユニバーサルマナーを体現する子ども達
ユニバーサルマナーとは、高齢者や障がい者、ベビーカー利用者や外国人など、自分とは違う多様な方々に向き合うためのマインドとアクションのことを言い、昨今は検定まであります。(株式会社ミライロによるユニバーサルマナー検定)かくいう私も実は「ユニバーサルマナー2級」を持っています。
この本が出来るきっかけになったのは、あいちゃんのママが、あいちゃんの通う小学校の校長先生から総合学習の授業を任されたことだったそう。4年生向けの福祉の授業で、スライド絵本を読み、絵本の中に出てきたあいちゃんのしゃべりにくさ(大きな氷を口に入れて単語を聞きとれるか)や、手の動かしにくさ(軍手をして折り紙を折れるか)を体験するワークをしたそうです。
福祉の授業を終えてからというもの、あいちゃんの笑顔は益々増えました。あいちゃんが変わったのではなく、周りのお友達が変わったから、とあいちゃんのママは言います。
「ハード(設備)」を変えることができなくても、私たち一人一人の「ハート」は今すぐに変えることが出来る。そんな当たり前のことを子どもたちは教えてくれます。
Domanist
伊藤孝恵
2児(共に女児)の母・ 参議院議員。テレビ局、大手化粧品メーカー勤務を経て、人材総合サービス会社で宣伝を担当。2016年に初当選し、ママパパ議員連盟を立ち上げるなど精力的に活動中。過去に結婚させたカップルは17組。
IG:https://www.instagram.com/itotakae/