ツヤツヤの髪の間に見えた、大きな肌色
子どもをヘアサロンに連れて行ったときのこと。髪を切ってもらっている時に割と大きめに地肌が見えて、それが円形脱毛症であることに気づいた時のショックといったら…。夫との関係、仕事と育児のバランスなどに悩んでいた頃のことでした。
思い当たる節がありすぎて、そしてとにかく申し訳なくて、ずいぶん落ち込みました。寝ても覚めても「どうしたらいいんだろう」を頭の中でリフレイン。自分だけでは解決できなくて、いろいろな人に意見を求めたものでした。
子どもの自己肯定感が下がってるんじゃないかな?
「大丈夫、大丈夫。今だから言えるけど、うちの子もそうだったよ」
そんなママ友のアドバイスを聞くと、「そんなに珍しいことではないのかな」と少し救われた気持ちになったものです。そんな中、「子どもの自己肯定力が下がっているんじゃないかな?」と言ってくださる方がいました。
その言葉で、ハッと気づいたんです。何かあったときは、子どものいちばんの味方でありたい。子どものサインに気づける母親でありたい。そう思って子育てをしていたはずなのに、全然できてない!
そのころ我が家は、新居への引っ越しをしたばかりでした。通学ルートや習い事の環境も変わり、私も子どもも慣れないことの連続。「何でいちいち言われないとわからないの?」「時間を見て行動してって言ってるのに。ダラダラ準備するならママ送って行かないからね。勝手に行けば?」子ども自身を否定する言葉までも投げつけてしまっていました。言葉使いや醸し出す雰囲気は棘々(とげとげ)しさでいっぱい。子どももあまりの言われように反抗的な態度をとり、そしてまた私が怒る、の繰り返しでした。
ママの自己肯定感が下がれば、子どもだって…
子どもの習い事のお迎えをすべてひとりでこなして、3人の子どもを連れて帰宅するのは毎晩19時半をすぎます。帰宅したら、子どもたちをお風呂に入れてその間に食事の用意。ごはんを食べているときも次の日の持ち物や宿題の確認で頭はいっぱい。「ママ今日ね、…」と言われても、「あー、うん」と心ここに在らずの返事。
自分だけ食べ終わるやいなやプリントに目を通し、ランドセルやおけいこバッグの片付けをし、21時に子どもたちの就寝。その後に夕飯を片付け、次の日の仕事のスケジュールを認し、子どもの習い事の共有アプリにスケジュールを入れて、送り迎えや預け先を段取って…。
洗濯物をたたみ、消耗した日用品や冷凍庫のストック品をネットでオーダーし、何か忘れていることはないかと思い返しているうちに寝落ち。次の日は家を出る1時間前にあわてて起きてお弁当を作って仕事に行くという毎日。明らかにオーバーワークでした。
子どもの気持ちを察してあげる余裕もなく、何か起これば私の意見を押しつけてばかり。目を見てゆっくり話を聞いてあげられなかった…今でも後悔しています。
私、頑張りすぎてるのかもしれない
ある日、ひととおりの家事を終えた後、ふと涙が出てきました。何が起こったわけでもないけれど、自然にポロポロ泣いていたんです。ああ…私、疲れてる。その時初めてそう思って、毎日頑張っている自分に「すごいね」と声をかけてあげました。そして、終わりのない家事や育児の波に飲まれて、自分を追い込んでいたことに気づきました。忙しい夫を悪者にすることで、自分を肯定していたように思います。
でも、自分を責めて追い詰めても何も解決しない。誰かを悪者にするより、自分を含めて誰かを認められるほうが気持ちがいいし、前向きになれる。発想の転換をして気持ちに余裕も生まれたころ、いつしか子どもの円形脱毛症も、気にならなくなっていました。
モデル
牧野紗弥
愛知県出身。小学館『Domani』を始め、数々のファッション誌で人気モデルとして抜群のセンスを発揮しながら、多方面で活躍中。キャンプやスキー、シュノーケリングなど、季節に合わせたイベントを企画し、3人の子供とアクティブに楽しむ一面も。今年は登山に挑戦する予定。自身の育児の経験や周囲の女性との交流の中で、どうしても女性の負担が大きくなってしまう状況について考えを深めつつ、家庭におけるジェンダー意識の改革のため、身を持って夫婦の在り方を模索中。