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LIFESTYLE 子育ての悩み

2020.11.22

子どもにガミガミ言う親に訪れる数年後の苦難|「言うことを聞かせよう」とする結果起きること

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石田 勝紀(教育評論家・都留文科大学特任教授)

5歳の子どもがいます。毎日言うことを聞かなくて困っています。例えば、朝、保育園に行く時間になるとゲームをやりだしたり、寝る時間なのにいつまでも寝ないで遊びたがったりします。そんな子どもに感情的になってしまうこともあります。どのようにすれば、言うことを聞いてくれるようになるのでしょうか。
                              (仮名:遠藤さん)

「言うことを聞かない」のは子ども側の問題?

とてもよくあるケースです。同じぐらいの年齢のお子さんがいる家庭では、このようなことは日常茶飯事であることでしょう。そもそも、親の言うとおりに「きちんと」やる5歳児がいるのか、はなはだ疑問ですが、親はどうしても自分の思いどおりにならないとイライラしてしまうこともあります。それはとくに異常なことではなく、極めて一般的な反応です。

しかし、その後の子どもへの対応は家庭によってはさまざまです。ある家庭では、強引に言うことを聞かせていくかもしれません。また、子どもに共感しつつ自発的に行動するよう促す家庭や、そのまま放置する家庭もあるかもしれません。

どの対応が正しいか、間違っているかと判断することは容易ではありません。なぜなら、子どものタイプ、親のタイプによって方法はさまざま異なるため、一様に「この方法をされるといいですよ」と答えることはできないからです。しかし、解決策がないわけではありません。そこで、遠藤さんの状態をもう少し詳細に見てみましょう。

現在の遠藤さんの抱えている問題は、「子どもが言うことを聞いてくれないこと」のように思えますが、そこに問題があるのではなく、「親が困ってしまい、イライラしてしまうこと」にあるのではないでしょうか。つまり、子どもの問題ではなく、親のあり方の問題かもしれないのです。

そこでご質問の回答を端的に先にお伝えしておきましょう。

今の状態を変えたいのであれば、「子どもに言うこと聞かせる方法を求めるのではなく、『親の考え方』自体を変える」ことをお勧めします。

子どもが親の言うことを聞かない状況のとき、親は、それをなんとかして親の思いどおりにさせようと「頑張る」ことが少なくありません。しかし、大抵の場合、それは徒労に終わり、しかも親の思いどおりにいかないまま、子どもは相変わらず同じことを繰り返していきます。

その結果、親は疲れ果て、やがて諦めるときがきます。しかし、皮肉なことに、その諦めたときから、子どもが自主的に動き出したというケースは枚挙に暇がありません。つまり、「頑張って」子どもをどうにかしようとしているうちは、ほとんど解決しないことが多いということです。

「では、どうしたらいいのでしょう? 方法を教えてください」と思われるかもしれません。確かに方法はないことはありません。実際、幼稚園や保育園の先生たちは、とても上手に対応していきます。しかし、親はプロの先生ではないため、そのような方法を聞いたところで、同じようにできないかもしれません。

すると、「言われたとおりにやったのにうまくいかない。私はダメなんだわ」と罪悪感を持ったり、「この子はおかしい」と子ども原因論にしてしまったりすることもあります。そもそも、子育ての方法には絶対的な正解がないため、どの子にも当てはまる方法は存在しません。しかし、なぜか親は絶対的な正解を求めてしまうのです。

ですから、今回はあえて具体的な方法を挙げるのではなく、より根本的で本質的なアプローチについて、お伝えします。

それは、「親の考え方が変わる➡親の感情が変わる➡子どもへの声かけや態度が変わる➡子どもが変わる➡親の気持ちがさらに変わる」というサイクルを知ることです。

出発点は「親の考え方が変わる」です。しかし、「子どもへの声かけ」が出発点と思ってしまう方もいます。さらに、「子どもが変わる➡親の気持ちが変わる」と子どもを使って自分の気持ちを変えようと勘違いしてしまう方も少なくありません。

目の前の子どもの“今”を大切にしていく

まずは、出発点は「親の考え方が変わる」にあると思ってみてください。

では、そのお話をしましょう。次のことは、筆者が毎年100回以上行っているカフェスタイル勉強会「Mama Café」で毎回お伝えしている内容です。

「今、目の前にいる5歳の子どもとの関係は、今しか経験できません。つまり来年は6歳になってしまうため、5歳のこの子の状態は今しか経験できないということです。子どもは心身ともに成長し続けているので、来年は今とは違った子どもになっているからです。この二度とやってこない5歳のこの子の『今』をどう思いますか?」

二度と経験できない、現時点での子どもとの関係を大切にしようと思うようになれば、普段とは違った感情が出てきませんか?

今を大切にしようと思うことでしょう。すると、感情は落ち着いてきます。親の感情が落ち着いてくると、子どもへの声かけや態度が自然と変わってきます。すると、子どもが変わり始めることがあります。

100%成果を保証するものではありませんが、子どもはこれまでと違った反応をすることが少なくないという報告を数多くもらっています。ぜひ、試してみてはいかがでしょうか。

我慢して今の状態を受け入れるか、考え方を変えるか

しかし、それでも、安心できないと思う方もいるかもしれません。「そんなこと考えられない! 時間がなくて忙しいのに、そんな悠長なことやってられない!」と。

もし、そういうことであれば、今のままの状態を継続されるとよいと思います。筆者はそれでもいいと思っています。子育ての方法やあり方に正解がない以上、親はあり方を選択するだけですから、いい、悪いという問題ではありません。

ただ、日々の“バトル”はしばらく続くことを覚悟する必要があります。「しばらく」とは、未就学児期間だけではなく、小学校、中学校、高校ぐらいまでは続く可能性があります。小学生になれば小学生の悩みが、中学生になれば中学生の悩みが、高校生になれば高校生の悩みがほぼ確実に登場してきます。悩みやイライラは形を変えて継続していくものです。ですから、尽きないのです。

今の状態をそのまま我慢して受け入れながら日々を過ごすか、考え方を変えて新しい見方で日々を過ごすか、あとは選択の問題となります。選択によって、それぞれの道も変わり、見える景色も変わっていきます。

教育評論家・都留文科大学特任教授

石田 勝紀(いしだ かつのり)

1968年横浜生まれ。20歳で起業し、学習塾を創業。3500人以上の生徒に直接指導。講演会やセミナーを含め、5万人以上を指導。「心の状態を高め」「生活習慣を整え」「考えさせる」の3つを柱に、学力上昇のみならず、社会に出ても活用できるスキルとマインドを習得させてきた。現在は特に、「日本から 勉強が嫌いな子を1人残らずなくしたい」と、ママカフェ、執筆、講演を精力的に行う。国際経営学修士(MBA)、教育学修士(東京大学)。著書に『はじめての子ども手帳』『子どもを叱り続ける人が知らない「5つの原則」』、『ぐんぐん伸びる子は何が違うのか?』ほか多数。
講演、執筆相談はこちらから。
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