タカラヅカでは「生田先生」、今は「いくちゃん」。楽しみながら作っています
お稽古が始まったのが8月後半で、こちらの記事の取材が9月半ば。みなさんの雰囲気をうかがってみました。なにか面白エピソードはありますか?
真彩:お稽古終わった後にみんなで筋トレしていますよね、麻里名先生が中心になって。
生田:花岡麻里名さんというアンサンブルのダンサーの方に教わって、“体幹部”という体幹をひたすら鍛える部活をしていますね。
真彩:やりたい人が集まっていて、結構多い人数ですよね。でも男子は少なめ。
生田:僕と、たいちゃん(藤ヶ谷太輔さん)がいる時はたいちゃんも。
真彩:たいちゃん、こうちゃん(上口耕平さん)もやってる。でも、アンサンブル男子ズは…
生田:あんまりいないよね(笑)。一度たっつん(仙名立宗さん)がいたかな?
真彩:女子は結構頑張ってますよ。
生田:うちのカンパニーは女子が強いですね。
真彩:それもいいです(笑)。私は、稽古場でみんながとっても明るいのがすごく好きで。パッと稽古場に入っただけで、向こうのほうで何かしている人も「おはよう、なっちゃん!」(なっちゃん=真彩希帆さん)って言ってくれるのがうれしいんです。
あと、私は愛ちゃん(天翔 愛さん)が稽古場で隣の席なので、いろいろ話すんですよ。彼女はミュージカル2作目で、わからないことがいろいろあるんですって。その相談にのっていたりすると、なんだか新人公演の本役になっている気持ちなんですよね(笑)。今回やる役は違っても、かわいいなーって。
▲「自然体でお願いします」という取材陣の要望に、この笑顔。リラックスして臨んでくださいました。
写真をもっと見る生田:ほかに、タカラヅカと違うのはどんなところ?
真彩:セットがあることにびっくりしました。あと、(生田)先生が全然違う!!
生田:ここでは先生じゃないからね(笑)。
真彩:ちょっと言い方が乱暴かもしれませんが…、タカラヅカの時はわりと神経質な感じですよね。ですけど、『ドン・ジュアン』の稽古場ではセットで遊んでますよね?
生田:ああ、遊んでる(笑)。
真彩:稽古場ではもうセットが組まれているから、そこでよく転がったり踊ったりしていますよね。それでどこかにぶつけて「あ、痛い」とか言って(笑)。在団中から先生とお話することは多かったんですよね。稽古が終わった後に「今回のカツラはどんなものがいいですか?」というようなことから、まったく関係のない話に毎回なっていくんですけど、今はそれが日常って感じです(笑)。ピッとはしていますけどね、先生。
生田:そうかもしれないですね。「先生」と呼ばれると体が勝手にそうなっちゃうんですよね。(タカラヅカでの)女性ばかりの環境にいつまで経っても慣れなくて、少なくとも同性ではないからあまり気軽に接せられないというか。ところが劇団外だともっとラフにいけるし、今回は年齢が近い方もいるのでね。遊びから生まれるものもあると思うので。
真彩:みなさんも「先生」じゃなくて「いくちゃん」って呼んでいますもんね。先生は…なんて言ったらいいのかな…、穏やかです。
生田:作ることを純粋に楽しんでいる感じはありますね。
真彩:そんな感じがします。と言っても、私は「先生」と呼ぶんですけど(笑)。
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普段はなかなか聞けない、作品作りや役作りの裏側。おふたりに取材できたことで、とても貴重な創作過程を垣間見ることができました。私はタカラヅカ版『ドン・ジュアン』しか観ていないのですが、お話をうかがうと受ける印象がまるで違う感じ。そしてマリアが歌う曲が増えたという朗報も! 歌姫・真彩希帆の真骨頂が観られる(聴ける?)かもしれません。次回は、タカラヅカ時代から続くおふたりの関係について深くうかがいます。お楽しみに!
撮影/フカヤマノリユキ イラスト/春原弥生 構成・文/淡路裕子
ミュージカル『ドン・ジュアン』
【Story】
スペイン・アンダルシア地方。赤い砂塵の舞うセビリア。
そこにあらゆる女を魅了して、悪徳と放蕩の限りを尽くす男がいた。
男の名はドン・ジュアン。彼は今宵も欲望の赴くまま、騎士団長の娘を毒牙にかける。
娘を穢されたと知った騎士団長は激怒し、決闘を挑むが、
彼は騎士団長をせせら笑うかのようにその剣をかわし、相手の命を奪う。
それが愛という名の呪いを招くとも知らず…。
【Staff&Cast】
作詞・作曲:フェリックス・グレイ
潤色・演出:生田大和(宝塚歌劇団)
出演:藤ヶ谷太輔/真彩希帆/平間壮一、上口耕平、天翔 愛/吉野圭吾、上野水香(東京バレエ団)、春野寿美礼/鶴見辰吾 ほか
【Information】
《大阪公演》10月7日(木)~17日(日) 梅田芸術劇場 メインホール
《東京公演》10月21日(木)~11月6日(土) TBS赤坂ACTシアター
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俳優
真彩希帆
まあや・きほ/2012年、宝塚歌劇団に入団。花組・星組を経て、2017年に雪組トップ娘役に就任。凛とした佇まいと抜きん出た歌唱力が高く評価され、注目を集めた。2021年4月に退団後、本作が初の舞台出演となる。宝塚歌劇団での主な出演作に、『鈴蘭(ル・ミュゲ)—思い出の淵から見えるものは—』『こうもり』(2016)、『幕末太陽傳』『琥珀色の雨にぬれて』(2017)、『ひかりふる路~革命家、マクシミリアン・ロベスピエール~』(2017~2018)、『ファントム』(2018~2019)、『壬生義士伝』(2019)、『ONCE UPON A TIME IN AMERICA(ワンス アポン ア タイム イン アメリカ)』(2020)、『fff-フォルティッシッシモ-』(2021)などがある。『ドン・ジュアン』が退団後初ミュージカルとなる。
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演出家
生田大和
いくた・ひろかず/2003年、宝塚歌劇団に入団。2010年宝塚バウホール公演『BUND/NEON上海』で演出家デビュー。宝塚バウホール公演『ランスロット』(2011)、『春の雪』(2012)、『the WILD Meets the WILD』(2013)などで高評価を得て、2014年『ラスト・タイクーン-ハリウッドの帝王、不滅の愛-』で宝塚大劇場デビューを果たす。同年手掛けた『伯爵令嬢』とともに、好評を博す。その後も『Shakespeare ~空に満つるは、尽きせぬ言の葉~』(2016)など精力的に活動、同年フランス産ミュージカルの日本初演『ドン・ジュアン』の潤色・演出で初めて海外ミュージカルを手掛け、愛に呪われた主人公の悲劇を薫り豊かに繰り広げ、好評を得た。2019年、藤ヶ谷太輔主演の『ドン・ジュアン』で初めて劇団外で演出を手がける。ほか演出作品に、『グランドホテル』(2017/岡田敬二と共同演出)、『ひかりふる路~革命家、マクシミリアン・ロベスピエール~』(2017~2018)、『CASANOVA』(2019)、レビュー・アラベスク『シルクロード~盗賊と宝石~』『シャーロック・ホームズ-The Game Is Afoot!-』(2021)など。
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