「立て板に水」とはすらすらと話す意味で使われる言葉
「立て板に水」とは、言葉に詰まらずすらすらと話している様子を示す言葉です。「えっと…」「あ…」といったつなぎ言葉を挟んだり、言いよどんだりすることがなく話している様子を指します。
よりスピーディに話している様子を表現する際に、「立て板に豆」や「立て板に玉」などを用いることもあります。
【立て板に水】たていたにみず
よどみなく、すらすらと話すことのたとえ。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
水が流れている様子を由来とする
「立て板に水」とは、板を立てて上部から水を流している様子を由来とする言葉です。通常、板は平面なので、どこかに引っかかることなく下まで流れます。
すらすらと言葉が出ているときも、立てた板の上から水を流しているときと同様、引っかかりがありません。そのため、よどみなく話しているときには「立て板に水のようだ」と表現します。
「立て板に水」という言葉自体には悪い意味はない
「立て板に水」は、すらすらと流暢に話している様子を表現しています。すらすらと話すことは、頭の回転が速い、話している内容に関して豊富な知識を持っている、といったことが結びつきやすいでしょう。そのため、基本的には褒め言葉として用いられます。
しかし、内容のない言葉をペラペラと話すという意味で用いることも少なくありません。そのような場合には、悪い意味の言葉と判断されるでしょう。
また、「焼け石に水」と誤解しているケースもあります。「焼け石に水」とは、被害やしなくてはいけないことが大きく、少しの援助や努力ではあまり効果を得られないというネガティブな意味の表現です。「立て板に水」とは何の関係もないので注意しましょう。
「立て板に水」の使い方をご紹介
「立て板に水」は、「立て板に水です」や「立て板に水だ」のようにそのままの言い切りの形で用いることは多くありません。次のいずれかのように「ごとく」や「ように」を付けて用いることが一般的です。
・立て板に水のごとく
・立て板に水を流すように
それぞれの使い方を例文を用いて紹介します。
立て板に水のごとく
流暢に話している様子を見たときは、次のように褒めることができるでしょう。
・彼女は英語もフランス語も【立て板に水のごとく】話す。
・ディベートの校内大会に参加した。皆【立て板に水のごとく】話していて、太刀打ちできないと感じた。
「ごとく」はややフォーマルな表現ですが、代わりにカジュアルな表現の「ように」を用いることもできます。
・兄弟げんかをすると、いつも弟が【立て板に水のように】理屈をいう。言葉を挟む隙もないので、いつも兄が負けてしまう。
・新しい塾講師は本当に頭の回転が早く、有能だ。次数を下げて計算する理論が分からないので質問すると、【立て板に水のように】解説をしてくれた。
立て板に水を流すように
「流す」という言葉を挿入することで、より流れるように言葉が続く様子を表現することもできます。例えば次のように使ってみましょう。
・彼女が詩を【立て板に水を流すように】朗読した。落ち着いた声色が詩の情感を伝えて、素晴らしかった。
・先生が出したテーマは「友人の良いところについて」だった。ペアになった田中さんは【立て板に水を流すように】私の長所を挙げてくれて、こそばゆいような気持ちになった。
「立て板に豆」「立て板に玉」という表現もある
「立て板に豆」や「立て板に玉」もすらすらと話す様子を意味する言葉ですが、豆や玉は「流す」という表現はあまりふさわしくないかもしれません。「のごとく」や「のように」をつなげて表現したり、「立て板に豆が転がるように」と「流す」以外の動詞と組み合わせたりするなどの工夫ができるでしょう。
「立て板に水」の類語と例文
すらすらとよどみなく話す様子を、「立て板に水」以外の言葉で表現することも可能です。しばしば使用する表現として、次の2つを紹介します。
・戸板に豆
・弁舌に優れる
【類語1】戸板に豆
「戸板に豆」とは、戸板に豆が転がるように、スムーズに引っかかりなく話す様子を表現する言葉です。「立て板に豆」と同じく、スピーディな印象を与えるので、「立て板に水」よりもさらにすらすらと話しているときにも使えるでしょう。
・百人一首の暗証テストがあるので、【戸板に豆】のようにすらすらと話せるまで何度も繰り返して唱えた。
・彼女には文句を言わないほうがいい。少しでも逆らおうものなら、【戸板に豆】のように延々と反論が返ってくる。
戸板に豆が転がると、途中で止めたりつかんだりすることが難しいといえます。そのため、「戸板に豆」はスムーズに引っかかりなく話すという意味だけでなく、「思うようにならない」という意味で用いることもあります。
・勉強が得意だから大学に進むと思っていたのに、手に職をつけたいと職人さんに弟子入りを決めてしまった。子どもの進路は【戸板に豆】のように思うようにならないものだ。
・昨日は家に来てくれるといったのに、今日になって「やっぱり行かない」と断られてしまった。彼女の心は、【戸板に豆】が転がるように気分次第のようだ。
【類語2】弁舌に優れる
すらすらと話している様子を「弁舌に優れる」と表現することもあります。単によどみなく話しているというよりは、滑舌が良く、理路整然としているニュアンスがあるので、話術に優れている様子を表現したいときにも用いることができるでしょう。
・彼女は【弁舌に優れている】ので、彼女の話を聞くと思わず納得してしまう。
・彼は【弁舌に優れる】弁護士だ。
正しい意味を理解して「立て板に水」を使おう
「立て板に水」は、よどみなく流暢に話している様子を示す表現です。本来はすらすらと話していることを称賛して用いるので、悪い意味はあまりありません。しかし、内容がない言葉をすらすらと話しているときにも使われることがあるので注意しましょう。
また、「立て板に豆」や「立て板に玉」という表現を用いると、よりスピーディに話している印象を与えることができます。上手に使い分けて、表現豊かな人を目指しましょう。
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