「雨垂れ石を穿つ」の基礎知識
読み方は「あまだれいしをうがつ」です。「雨垂れ石を穿つ」という言葉はビジネスシーンでも日常会話でも使えます。また、同じ意味で「雨垂れ石窪む」や「点滴石を穿つ」と表現する場合もあります。
それでは、「雨垂れ石を穿つ」の詳しい意味や由来、ことわざと元の漢文との意味の違い、使い方・例文などについてしっかりチェックしていきましょう。
小さな努力でも持続が重要だということを表す
【雨垂れ石を穿つ(あまだれいしをうがつ)】
《「漢書」枚乗伝から》小さな努力でも根気よく続けてやれば、最後には成功する。点滴石を穿つ。
(引用:小学館『デジタル大辞泉』より/以下同)
「雨垂れ石を穿つ」とは、小さな努力でも粘り強く継続させることが重要だと説いたことわざです。「雨垂れ」とは雨のしずくを、「穿つ」とは穴をあけることを指します。つまり、「雨のしずく程度の小さな力でも、何度も繰り返し落ちるうちに石に穴をあける」ことを表しているのです。
雨のしずくだけで石に穴があくのか、不思議に思う人も多いでしょう。しかし実際に、古くからある神社やお寺といった建物の鎖樋(くさりとい)や軒下を見てみると、雨のしずくによって穴があいた石を確認できることがあります。
中国の漢書に由来する
「雨垂れ石を穿つ」の由来は中国の漢書といわれています。語源となったのは、漢書のなかにある「枚乗(ばいじょう)伝」の章の一節で、「泰山の雨の滴りは石を穿つ」、漢文では「泰山之霤穿石」と書かれていました。
これは、中央政府に反乱を起こそうと考えた小国の王に対して、その企みを阻止するために家臣が出した意見書の一文です。「小さな物事でも積み重なることで大きな災いになってしまう」ことをたとえた言葉でしたが、結局小国の王は反乱を起こし、殺されてしまいました。
ことわざと元の漢文との意味の違い
現在使われている「雨垂れ石を穿つ」ということわざの意味と、元の漢文での意味をそれぞれチェックすると、表現している内容のニュアンスが違うことに気が付くでしょう。ことわざでは小さな努力でも積み重なれば大きな力になるという、努力の大切さを説く言葉として前向きに使われています。
一方、由来となった「泰山の雨の滴りは石を穿つ」は、小さな災いの種が積み重なってやがて大きな災いとして降りかかるかもしれないというマイナスの意味で使われた言葉です。現在「雨垂れ石を穿つ」をマイナスの意味で使うことはないものの、言葉への理解を深めるために覚えておくとよいでしょう。
「雨垂れ石を穿つ」の使い方・例文
「雨垂れ石を穿つ」は、継続してきた努力が報われたときや、すぐに諦めない大切さなどを伝えたいときに使いやすい言葉で、ビジネスシーンなどで用いられています。「雨垂れ石を穿つ」の例文は以下のとおりです。
・雨垂れ石を穿つで、3歳から始めた野球で甲子園に出ることができた。
・雨垂れ石を穿つということわざのように、私たちもコツコツと頑張ってみよう。
・今成果が出ないからと簡単に諦めてはいけない。雨垂れ石を穿つの精神だよ。
・プロジェクトの成功おめでとうございます。雨垂れ石を穿つというように、努力は報われるんですね。
「雨垂れ石を穿つ」の類語と対義語
「雨垂れ石を穿つ」に言い換えられる類語と、反対の意味を持つ対義語は、以下のとおりです。
【雨垂れ石を穿つの類語】
塵も積もれば山となる・石の上にも三年・継続は力なり
【雨垂れ石を穿つの対義語】
焼け石に水
言い換える際には、自分が伝えたい内容と同じような意味の言葉を選ぶ必要があります。「雨垂れ石を穿つ」の類語と、同じ意味として使われる四字熟語、さらに対義語について、一緒にチェックしていきましょう。