結婚7年目。昔の恋人は忘れたはずだったのに
有紀子さん(仮名)は、結婚7年目。夫とのあいだに娘がひとりいるワーキングマザーです。夫と結婚する前に交際していた恋人とは10年ほど一緒に過ごし、有紀子さんはその人と結婚をしたかったものの、破局。まだ心の傷が癒えないなか、交際を申し込んできた今の夫と流れに任せて結婚をしたと言います。
「当時、元カレからは私以外に好きな人ができたという理由で振られました。だから未練を残しても復縁する可能性はとても低かったし、それならば『結婚したい』と言ってくれている今の夫と、穏やかな人生を築いていくのがいいんじゃないかと思って結婚したんです」
事実、結婚してから7年間にわたり、夫は有紀子さんをとても大事にしてくれていて、結婚生活には何不自由ないとのこと。しかしある日、元カレから有紀子さんの携帯電話にメッセージが届き、魔がさしたように再会してしまったというのです。
気づいたら再会し、体の関係をもっていた
「元カレのことは自分なりに整理したつもりでしたが、連絡が来て『会いたい』と言われたらダメでした。気づいたら彼と会う約束をしていて、その日のうちに体の関係も持ってしまったんです…」
元カレが有紀子さんに連絡をとってきた理由は不明ながら、その日に会ってから頻繁にメッセージでのやり取りをするようになったのだそう。元カレは有紀子さんと別れたあとに結婚をしたものの長くは続かず、現在は離婚して独身になっていたとのことです。
「彼も、よりを戻したいって感じでもないんですよね。でも懐かしさから頻繁に連絡をしてきているような感じでした。その後は夫がいる身なので彼とは会っていませんが、メッセージが来るたびに嬉しくて私もついすぐに返信をしてしまい、ダラダラとLINE友達のような関係が続いています」
再び「会いたい」と言われ揺れる心を整理できた理由
「そのうちに彼からまた『そろそろ会いたい』と言われるようになり、そこで改めて自分は彼や夫のことをどうしたいのかと自分に問うようになりました。昔の私だったら喜んで彼に言われるがままに会っていたと思いますが、今の状況でそれをすれば“不倫”になりますよね。私は不倫をするくらいなら離婚してちゃんと付き合いたいタイプなので、彼との関係をズルズルと曖昧にしたくなくて、白黒をはっきりさせようと決めたんです」
有紀子さんは彼に対して「私が離婚したら一緒になる覚悟はあるか」と単刀直入に尋ねたのだそう。そこでもし彼からの答えが「イエス」だったら離婚をするだけの覚悟があってのことだったそうです。しかし彼の答えは「今はちょっとそこまではわからない」というものでした。
「その答えを聞いたときに『ああ、その程度なのね』って思って。それまでずっと何年間も彼に未練があったけれど、その答えは私が今の生活を捨ててまで一緒にいるべき相手じゃないなと確信させてくれました。それに、不思議なんですが1度だけ肉体関係をもったことでフラれたときに抱えていた彼への劣等感みたいなものもスーッと浄化された気がして、うまく言えないけれど私の中で完全に彼のことを過去にできた気がしてきたんです。そのときを境に、私は彼と連絡をとるのを一切やめて、今はきちんと夫に対して誠実な妻として生活をしています。一度だけとは言え夫を裏切ってしまったことには間違いないのですが、私にとってはそれがあったことで、かえって夫に対して誠実に向き合えるようになりました」
未練を残していた昔の恋人からコンタクトがあれば、揺れてしまうこともあるでしょう。しかし既婚の立場で一時的な欲に流されてしまえば、その先にはドロ沼の不倫劇が待ち受けています。本来は一度たりとも夫を裏切るべきではないのは言うまでもないことですが、人生にはときにその人にとって“必要な過ち”もあるのかもしれません。有紀子さんはその後、元カレへの未練を完全に断ち切ることができ、以前よりも夫への愛情が深まったと話していたのが印象的でした。
取材・文/並木まき