一緒に過ごす時間が増えた夫にうんざり…
香織さん(仮名)は、娘がひとりいる40代前半のワーキングマザー。3歳年下の夫とは結婚7年目で、テレワーク生活に突入する前には、よその夫婦に比べて夫婦で過ごす時間が少なかったと話します。
「ウチは一緒にいる時間が少ないからこそ、うまくいっていたパターンだと思います。コロナ禍に入って夫婦ともにテレワークが増え、今でも出社日とテレワークの日が混在しているのですが、もともと夫婦での会話なんてほとんどない私たちが長時間家で一緒に過ごすのは、思っていた以上にしんどいものでした」
コロナ禍前は休日でも、夫は仲間とゴルフや釣りに出かけ、香織さんは娘と出かけたり家で過ごしたりと夫婦別々に過ごすことが多かったそう。だからこそ「一緒にいる時間はある意味で新鮮だったのか、レスにもならず平穏な生活でしたね」と香織さんは分析しています。
お互いに相手の存在を無視するように…徐々に冷えた夫婦関係
テレワーク生活が始まって1年半を過ぎる頃には、夫婦仲は気づけばかなり冷え切ったものになってしまったとのこと。喧嘩をすることもなく、お互いに「相手の存在を無視する」という居心地の悪い関係に至ってしまったそうです。
「もともと私たち夫婦は喧嘩があまり好きではないので、夫婦間にちょっとした問題があってもあえて見て見ぬふりをしてなんとかなってきたところがありました。一緒に過ごす時間が増えちゃって、見逃すわけにもいかないことも増えて、でも喧嘩をするエネルギーは使いたくないから、自然と仮面夫婦の生活になったんだと思います」
その頃から夫婦の営みも消え、完全に「他人同士が同じ家で暮らしている感覚」になっていったと振り返る香織さん。現在もレスが続いており、改善の糸口すら見つからないとため息をつきます。
「こういうことを話し合えるような夫婦でもなかったし、変に話して余計にギクシャクするのも嫌だし。テレワーク生活が終われば夫婦生活も戻るのかなと思ったりもするけれど、ここまで冷え切るとそれも簡単じゃなさそうです。
娘のことを考えて離婚は避けたいと考えていますが、このままずっと他人と暮らす感覚を持ち続けて夫婦を続けるのは、かなりしんどそうだなって。不思議なもので夫のことを“嫌だ”と思うと、嫌悪感がより強くなっちゃって生理的にも受け付けにくくなるんですよね。環境が変わるだけでここまで夫婦仲に影響が出るなんて、実際にこうなってみるまでは想像もしなかったので、途方に暮れています」
コロナ禍を通じて、生活スタイルの変化を余儀なくされ、夫婦仲に影響が出ている人は少なくないのでしょう。すでにコロナ禍も3年目に入っているので、少しずつ従来の生活スタイルに戻ったとしても、そこから再び環境の変化に適応して夫婦仲が改善していくのに時間を要することも考えられます。
冷めてしまった夫婦仲を再び熱するのは、今回のような外的要因によるものでなくても簡単ではない話だけに、今こういった悩みを抱えながら身動きが取れなくなっている人も、少なくないのかもしれません。
取材・文/並木まき