日本経済新聞編集委員・木村恭子さんが指南。
知識の備えがあれば〝お金の未来〞はもうこわくない!
お話を伺ったのは
日本経済新聞社 編集局 経済解説部編集委員 政治部シニア・エディター、キャスター 早稲田大学大学院非常勤講師
木村恭子さん
読売新聞東京本社記者、米通信社記者等を経て、2007年より日本経済新聞社編集局英文編集部デスク。2014年4月から編集委員に。現在BSジャパン『日経プラス10』、ラジオNIKKEI『ラジオiNEWS』等に出演中。『経済、これだけ知っていれば生きてゆけます。』(共著・日本経済新聞出版社)など。
まずは気になった金融情報を、検索で調べることから
ーー私たちの小さな経済をとりまく、大きな経済について、最近のトピックをざっくり教えてください。
木村さん(以下木村) 2017年は景気拡大のすそのが広がり、アメリカ、日本ともに好況でした。ですが今年に入ってちょっとリスクが出てきたんです。トランプ大統領が自由貿易に歯止めをかけるような輸入制限措置を発動したり、アメリカ・ファースト色を強める人事を行ったり。 一方、日本には【2019年問題】があり、給与は上がらないのに物価が上昇。さまざまな不安要素が押し寄せてくる懸念もささやかれます。
--そんな中で、私たちはまず、何に備えたらよいのでしょうか。
木村 2019年問題をクリアするには〝賃上げ〞が重要な意味をもちます。でも給与が一律数千円上がったところであなた自身の評価が上がるわけではありません。労働市況がよい今、能力開発に投資して【自分の価値アップ】に励むのもいいタイミング。また個人の投資は【積み立て分散投資時代】に突入しています。つみたてNISAは長期であればリターンがいい。運用益で老後に備えたい場合は、iDeCoも有効です。ただし長期間お金を引き出せないデメリットもあることを頭に入れてやりましょう。 セミナーを開くと〝医療と老後の費用が心配〞という声も耳にします。でも生活レベルによって必要な額は違います。だったら健康で働けるうちは積極的に働く。【SDGs的な働き方】と名付けましたが、定年が延びる傾向にあり、働き続けることで、老後資金の準備期間も延びていきます。あえてポジティブな面に焦点を当てるのです。
--先を思い不安になるのではなく今を充実させることが大切なんですね。
木村 そうなんです。今後、テクノロジーを使った金融サービスや金融事業【フィンテック】により、自分に合った金融商品をAIが解析してくれる面白い時代になるかもしれません。 駆け足で概観してきましたが、実はみなさんがすぐにできることもあります。それは着用コストで服を買うこと。定価3万円のジャケットでも、月5回×7か月着用すれば1回のコストは857円。セール品でも1度しか着なければ高くつきます。発想の転換ですね。いずれにしてもコツコツと正しい情報を仕入れることが身を守ります。ダイエットと同じで、自分を見つめる地道な努力の継続が、実を結んでくれるのです。
「先ゆき不透明な時代を生き抜くカギは、コツコツと正しい情報に目をこらすこと」
働くアラフォー女性が押さえておきたい、経済まわりの【KEY WORD】
【2019年問題】
5月に新天皇即位、7月に参院選、10月に消費税が10%に。秋の増税を控えて選挙に向けた景気向上は大前提。政府の動向に要注目。
【自分の価値アップ】
混乱の時代を乗り切るには、社内の昇給や昇格を待つだけでなく、自分自身の価値を高めることも必要。自己投資がマストな時代に。
【積み立て分散投資時代】
投資につきものの精神的ストレスが低く、かつ低金利の預金よりリターンがあるのは、積み立て×分散投資。リスクヘッジにも◎。
【SDGs(エスディージーズ 持続可能な開発目標)的な働き方】
SDGsとは、国連が掲げたサステイナブルな世界の目標。ならば個人も持続可能な働き方で、自分の定年を先延ばししていく発想が大事。
【フィンテック】
ファイナンスとテクノロジーの融合。AIが、ビッグデータを用いて自分に最適な金融商品を分析・アドバイスしてくれる時代が到来。
Domani2018年6月号『頑張らないお金の殖やし方』より
本誌掲載時スタッフ:イラスト/小池アミイゴ 撮影/与儀達久 構成/谷畑まゆみ