大人だって、やる気を失うことはある。地味に苦しいモヤモヤの正体とは?
今回は大人の「やる気が起こらない問題」について書きます。 「やる気がないなら出て行け!」なんて怒られるのは、たいてい20代の若手です。でも彼らは本当にやる気がないわけではなく、経験値が低くて仕事がつまらないだけだったり、やる気より疲れが上回っていたりすることが多いように見えます。つまり年齢が上がって自由裁量の範囲が広がると、卒業できるタイプの「やる気が起こらない問題」です。しかしもっとツライのは大人の「やる気が起こらない問題」ではないでしょうか? 若手のように正面から怒ってくれる人もいません。大人ですから、後輩の前であからさまに、やる気がない態度を取るわけにもいきません。でも実際問題やる気がないのです。そのループは地味に苦しい。一体どうしたら、やる気が戻ってくれるでしょう。
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個人的な経験ですが、究極にやる気を失ったことがあります。8年ほど前に妹が死んでしまった時です。親友のように仲のいい妹でしたから私はひどく気落ちしました。三度のメシより原稿を書いていることが好きな自分が、PCの前に座っても指が動きません。困りました。数週間で原稿は書けるようになりましたが、以前のように書きたくて書きたくて原稿を書いているのではないと自分でわかっていました。やる気はない。ただ義務だから書いているのです。もはや、どうしていいかわかりません。そんなやる気のない期間が1年以上続いた時でしょうか。たまたま入った鍼灸院で、ちょっとミステリアスな先生に出会いました。私は、自分のやる気のなさを打ち明けました。なにしろ初対面で利害関係も何もないから言いやすかったのです。 「妹が死んで以来、何に対してもやる気が全く起きません。やる気ってなんでしたっけ?」。すると先生は言いました。「それはループにハマってるんです」「ループ?」「そう。あなたは妹さんのことばかり考えていちゃいけない、と思ってます。でも実際は妹さんのことを考えてしまう。で、こんなことばっかり考えてちゃいけないとまた考える。そのループから抜け出しましょう。妹さんのことをいっぱい思い出すんです。妹さんだってその方が喜びますよ」。なんだか泣けてきました。そしてその夜、妹のことをたくさん考えました。するとどうでしょう、翌朝、噓のように気持ちが楽になっていました。1年続いたやる気が出ない問題は、その後、たった3日で片付いて、今のやる気しかない自分に戻りました。 これは極端な例と思われるかもしれませんが、順調に物事が進んでいる時、人は滅多にやる気を失いません。やる気がない、それは何かにつまずいている心のサイン。原因がハッキリわかって対処できればいいのですが、やる気がない、というのはもっと漠然とした複合的な出口のない感情ではないでしょうか? 私の場合、やる気がないなと感じた時はとにかく「イヤなこと」を全部、書き出します。全部、全部です。紙は悪口で埋め尽くされますが気にしなくていいです。不思議と「昔、お爺ちゃんが妹にだけ誕生日に靴を買ってあげた」なんて細かいことまで出てきて、自分の狭量さに驚かされますが、自分カワイイな、くらいに受け止めましょう。今まで少しずつ我慢してきたことがモヤモヤと絡み合って人生の重りになっているのです。ある程度の重りは安定感にもつながりますが、前に進むには邪魔です。みなさんの中にも、自分で気づくことのできないモヤモヤが重りとなり、やる気の邪魔をしているケースがあるかもしれません。そんな人は、一度、イヤなことを全部書き出して成仏させることを試してみてください。スッキリ気持ちがいいですよ!
『教えてもらう前と後』 毎週火曜・夜8時〜好評放送中!健康から歴史や住宅まで、教えてもらう前と後で世の中を見る目が変わる知のビフォーアフター番組。たむらさんが構成を務め、滝川クリステルさん、博多華丸・大吉さんが出演! 毎週火曜夜8時~MBS/TBS系全国ネット
放送作家
たむらようこ
1970年生まれ。放送作家。「慎吾ママ」のキャラクターを世に送り出すほか、『サザエさん』『祝女』『サラメシ』『世界の日本人妻は見た!』など多数の構成や脚本を手がける。2001年に子連れで働ける女性ばかりの制作会社ベイビー・プラネットを設立し社長としても活躍。
Domani2018年11月号 新Domaniジャーナル「風通しのいい仕事道」 より
本誌取材時スタッフ:構成/佐藤久美子