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2019.08.22

結婚、転職、出産、離婚…そして母娘でイギリス留学へ【ワーママの転職/エリさんの場合・前編】

転職のスタイルは十人十様。今回登場するのは、薬剤師の資格を生かして育児をしながら転職・留学を果たしたエリさんの体験記。(前編)

Text:
南 ゆかり(フリーエディター)
Tags:

お給料は下がっても、ワークライフバランスが大事。薬剤師だからできた転身

●PROFILE
エリさん・41歳・東京都港区在住
リサーチ会社勤務
10歳(女児)の母

●キャリア遍歴
・22歳/薬学部を卒業し、製薬メーカーにMRとして就職。
・29歳/結婚を機に退職。調剤薬局の薬剤師としてパート勤務。
・30歳/出産。
・34歳/離婚後、実家の静岡に戻る。
 薬局で勤務しながら英語を勉強、留学準備をする。 ・38歳/娘とともにイギリス留学。
・40歳/修士号を取得しイギリス留学から帰国。
 現在のリサーチ会社に就職。

薬剤師は全国どこでも働ける

製薬会社のMRから、調剤薬局のパートタイム薬剤師に。これは30歳を目前にして、私自身が選んだ転職でした。お給料は下がるけれど、残業や接待づけの毎日から解放されるし、夫が望む家庭との両立もできそう。そして何より、薬剤師の資格を活かしながら、現場をもっと知り、臨床を経験したい。調剤薬局での仕事はその条件にぴったりでした。

結婚の翌年には娘が生まれ、これからの私のキャリア、さて、どうしていこうか。こんなふうに先のことを考えていたときと、離婚が重なりました。3歳になった娘を抱えての離婚は大変だったけれど、これで人生が終わるわけじゃないし、いや、むしろこれからだし! そのとき、私の中ではっきりしたことがありました。

ずっと心の中でウズウズしていた「海外で暮らしてみたい」ということ。それを実践するなら今だと。いきなり海外で仕事をするのは難しいとしても、これからのキャリアを考えるなら、まずは修士号を取ろう。

もちろん、仕事をしながら、娘を育てながら、英語の勉強をし、留学資金を貯めるのは、簡単ではないとわかっていました。そこで私は実家のある静岡に戻り、親の近くに娘とふたりのマンションを借りて、新しい生活を始めることにしました。

そしてやはり助けになったのは、薬剤師の資格です。これがあれば、全国にコンビニと同じ数だけあるといわれる調剤薬局の、どこでも働くことができます。それに、朝9時から16時で働けて、土日はお休み。勉強と育児を両立するのは、ベストな働き方でした。

ワーママしながら英語を勉強

英語の勉強は、ネイティブスピーカーの先生を探し、マンツーマンのレッスンを週に1回。私がレッスンを受けている間、娘は英語のおもちゃで遊んだりしていました。そのほかは、オンライン英会話を毎晩続けること約3年。通常なら、たいていは1年で準備ができるのでしょうが、育児をしながらだと、やっぱり勉強に使える時間も限られる。よくぞ諦めずに3年間頑張ったと、自分でも思います。

その間、娘が海外生活にうまくなじめるかどかも、ずいぶん考えました。それで、娘が幼稚園の年中のとき、母娘で1か月間オーストラリアにホームステイに。本当にふたりで海外暮らしができるのかの、お試しです。

お試しの1か月間、娘はオーストラリアの幼稚園に、私は同じ幼稚園の別の学級でボランティア活動を。娘の順応も英語の覚えも思った以上に早く、「これならいける」と確信しました。私は私で、園児に本を読んであげたり、いっしょに遊んだり。いつも勉強している英語とは違う、子育ての日常で使う英語や育児方法に触れられたのは、いい経験でした。

いけると確信したら、次は学校選びです。私が勉強したいのは「Public Health(公衆衛生学)」。行き先は、オーストラリアでも、アメリカやイギリスでも、英語圏であれば、いくつもの選択肢があります。でも、小学生になる娘が学校に通いやすく、暮らしやすい場所となると、絞られてきます。その上、できるだけ出費を抑えたい私としては、学校費用も気になる…。

留学予算は母娘あわせて600万円

調べていくうち、親が大学院以上で勉強中は、子どもの教育費用がフリーになるというイギリスの制度を知り、気持ちは固まりました。イギリスでいくつか大学をしぼったけれど、留学に必要な英語力をはかる「IELTS(アイエルツ)」がまだ少し足りなくて。このとき、すでに準備に3年かけた私としては、これ以上出発を遅らせたくなくて、とにかくイギリス行きを決めました。

英語力がたりないぶん、大学院準備コースに半年通い、その後に大学院へ。ビザなどの条件にかなったのは、イギリスのオックスフォードにある大学でした。

学費をおさえても、生活費を入れると1年間でかかる費用はざっと500から600万円。長くは滞在できないから、2年でなんとかしてマスターを取得しなくちゃならない。自分の貯金で足りなかったぶんは、実家の親から借りることにして。こうして38歳の秋、8歳になった娘とふたりのイギリス生活は始まりました。

今思えば、離婚の決断はつらかったけれど、それがあったから、自分がどう生きたいのか考えるチャンスをもらえた。愛する娘も授かった。夫と、そして離婚という経験には、ほんとうに感謝しています。(後編に続く)

南 ゆかり

フリーエディター・ライター。半年にわたって取材・執筆した書籍『真夏も雪の日もかき氷おかわり!』発売中! ほかに書籍『今の私は』(後藤真希・著)、Oggiインタビュー連載「この人に今、これが聞きたい!」「お金に困らない女になる!」などなど。

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