学校の下校「見守り当番」中に芽生えた恋心
今回お話を伺ったのは…
お話を伺ったのは……坂本佐緒里さん(仮名・35歳)、東京都出身・都内の女子短大卒業、派遣社員(年収300万円)。10歳年上の夫(大学病院勤務医・年収1800万円)と結婚10年。東京下町エリアの分譲マンション在住。子どもは8歳の男の子と6歳の女の子。身長158cm、品がよくてお料理上手、すらりとしたプロポーションで元読者モデルというのも納得。
ずっと地元を離れない
合コンで出会った夫と結婚して10年。夫は忙しく自宅を不在にしがち。実家のバックアップを得て子育てと仕事を両立している佐緒里さん。男友達も多く、浮気のチャンスも多々あった。
「ずっと地元だから、元彼にパパ友とかがたくさんいる狭い世界です。男の人はサラっと誘ってくるし、そういう人は遊びだとわかっているから、絶対について行きません。それに、うちわだと噂が広まるのも早い。”元中学の同級生同士が結婚し、離婚して別の同級生と結婚した”みたいなことが起こっています」
一人暮らしの経験はないが、短大時代に外の世界を知る。
「父も兄も家業を継いでおり、周囲の友達はみんな自営業。短大に行って、会社員の男性と初めて知り合って、恋愛をするならスーツの男性だと思っていました。結婚も早くしたくて、24歳のときに夫と知り合い、25歳で結婚しました。夫は安心できる人だし、私のことをすごく愛してくれるから。なんというか、お父さんみたいなんです」
夫と実家の庇護を受け、何不自由ない生活をしている
毎月20万円の生活費を与えられ、子どもが小学校に入ってから、自分の特技を生かしたデザイン関連会社の派遣社員になった。実家との関係も良好で、子どもたちもすくすく育っている。
「不満があるとすれば、夫がテーマパークが嫌いで、一緒に行ってくれないこと。あとは、漠然とした不安があるんですよ。『女としてこのまま終えていいのかな…』という。トキメキが欲しくなったときに、彼に出会ったんです」
不倫経験がある多くの女性は「トキメキ」を求める。それがアイドルの人もいれば、武将や架空のキャラクターの人もいる。佐緒里さんにとって「トキメキ」とは何なのだろうか。
「なんだろう…初恋のような感覚をもう一度味わうことかな。目と目が合ったときに、気持ちがピタリと合うような感じ?」
トキメキは「見守り当番」にあった
”ママ”の生活には出会いも多い。学校の先生、習い事関連、店員さんなどのほかに、小学校のPTAや学校行事に参加する”パパ友”だ。
「ウチの学校は、PTA役員が持ち回りであり、それができない人は、年に1回程度の下校時の子どもの見守り当番が回ってくるんです。そこで出会ったのが、スーツを着た彼でした。シュッとしていてカッコいいのに、見守り当番のたすきをかけて、どうしていいかわからずにいる。なので、一緒に所定の場所に立って、30分くらい当番の間、話をしたら年齢や好きなアーティストなど共通点が多いことがわかったのです」
彼はシングルファーザーだった
有名な機械メーカーに勤務していることや、妻に恋人ができて離婚していることもわかった。
「シングルファーザーだったんですよ。子どもはウチのお兄ちゃんと、クラス違いの同級生でした。いろいろ話を聞いていると、ひとり親ってホントに大変みたいで、『どうしてもダメなときはウチで預かりますよ』とLINE交換したのです。それから3か月くらい何も連絡がなかったのですが、『すみません、明日の日曜日、息子をお願いできますでしょうか。謝礼はお支払いします』とLINEがあり、預かることにしたのです」
彼の息子は、礼儀正しく学業優秀。彼そっくりの美しい顔立ちをしており、佐緒里さんも娘も、佐緒里さんの母親も夢中になった。
「どこか憂いがある感じがかわいくて、それからウチによく遊びに来るようになりました。あと、彼のことを狙っているママ友が多く、優越感もありました。ちょっと手が触れて赤面するとか、もうホントにトキメキの嵐でした」
彼は絶対に手を出してこない
彼と息子、佐緒里さんと2人の子どもで、テーマパークも言った。
「スタッフの方から『パパ・ママ』と呼ばれて、夫婦みたいに1日過ごせて、このまま彼と家庭を築きたいと思いました。彼の息子も自然に私の手をつないできて、ホントに幸せだった。彼が運転していたのですが、後部座席で子どもたちが寝ているときに、私から手を握ろうとしたら、ギュッと握り返してくれて『僕はあなたのことが好きだけれど、不倫はできません』と言ったのです。そのときに、この人は妻の不倫で傷ついた人なんだ…と改めて思いました。たぶん、あの瞬間が、自分史上最高に気持ちよかった瞬間だと思います。夫とは得られない快感ですよね」
それから、2か月後、彼は息子を実家に預け、北米に赴任
それから2か月後、彼は息子を実家に預け、北米支社に赴任してしまった。
「映画みたいな展開ですよね(笑)。『マジか!?』みたいな。そのことを聞かされて、ウチで食事会した後、たまたま2人きりになったときに、『本当に、あのときは危なかったんですよ』と言ったんです。それならしてほしいとおもいましたが、もうお互いの気持ちはそういうところにない。出会いのチャンスはあっても、不倫のチャンスは一瞬なんだな…と」
それ以降、佐緒里さんはスーツ男子にときめくこともなく、家族を愛する穏やかな日常を続けているが、肉体関係がなかったからこそ、彼のことが忘れられず、眠れぬこともあるという。
肉体関係のない心の不倫は罪と言われないのだろうか。
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Writer&Editor
沢木 文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。お金、恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)がある。