宝塚歌劇団の娘役としての姿とはまた違った〝綺咲愛里らしさ〟を表現した写真集に
前回の柚希礼音さんからご紹介いただいたのは、元星組トップ娘役である綺咲愛里さん。柚希さんがトップスターだったときに入団された綺咲さんにとって、柚希さんは尊敬する上級生でありながら、タカラジェンヌとして、舞台人として大きなお手本となった方なのだそう。そんな柚希さんにまつわる思い出に加え、退団してちょうど1年目に発売する写真集『Airi Kisaki 1013』(日本文芸社)の見どころを語っていただきました。
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星組の太陽だった柚希礼音さんとの思い出は永遠に語ることができるほど!
前回ご登場いただいた柚希礼音さんから、「綺咲愛里さんを」と繋げていただきました。
綺咲さん(以下敬称略):ちえ(柚希礼音)さんからご指名をいただいたということですよね?信じられないくらいうれしくて。びっくりでした! 入団してから下級生と呼ばれる5〜6年目あたりまでの、タカラジェンヌとして基礎となる時期をちえさんのもとで育てていただきました。個人的には、ちえさんのスペシャルライブ『REON!! II』で踊らせていただく機会があり、ド緊張しながらパフォーマンスをしたのがお話をするようになったきっかけかなと思っています。
その後の『眠らない男・ナポレオン-愛と栄光の涯に-』や『太陽王』という作品で濃くお芝居をさせていただき、身の引き締まる思いで毎回学ばせていただきました。ご迷惑をおかけすることのないようにと無我夢中で…。でもちえさんが本当に温かく、大きな心で受け止めてくださって、今思い返してみて改めて光栄だったなと思います。
柚希さんがトップのときに宝塚歌劇団は100周年を迎え、星組は特に勢いのある印象でした。
綺咲:星組の真ん中で輝いていらっしゃったのがちえさんでした。〝大きな愛で包んでくださる太陽のような〟そんな言葉がぴったりな方だと思っています。入団して星組配属になって、初演(2010年)の『ロミオとジュリエット』に出たのが初めての公演だったんです。芸事以外の下級生としての仕事もままならない中で、心細い毎日だったのですが、上級生の娘役の方の髪型を研究してある日ちょっと自分の髪型を変えてみたんですね。それをなんと! ちえさんが気づいてお声がけくださったことが、とてもうれしくて衝撃的で。斜め分けにしていたのをセンター分けにしたくらいの違いなんですよ? そんな違いに気づいてくださったことにびっくりしましたし、下級生の中でもいちばん端っこにいる自分にサラッと言ってくださって喜びと恐縮さで胸がいっぱいになったことを覚えています。
100周年の運動会も思い出深いですね。「ちえさんにトロフィーを持たせる、絶対に!」と、星組の仲間たちが目を血走らせるほどの勢いで(笑)、一致団結しました。私は知らなかったのですが、10年前の運動会で星組は悔しい思いをしたから、それを経験されている上級生はなみなみならぬ思いを持っていらして。優勝以外は考えられなかったので、トロフィーを持たれたちえさんを目にして大号泣でした。ちえさんの思い出は永遠に語れちゃいます。
「私らしさ」を追求しながら臨んだ撮影。新たな綺咲愛里の姿を切り取った写真集『Airi Kisaki 1013』
10年間在籍した宝塚歌劇団を2019年10月13日に退団され、その1年後に発売される写真集。タイトルに日にちも入っていらっしゃるんですね。見どころはどんなところでしょうか?
綺咲:ファンの方から今までいただいた愛を、なんらかの形でお返ししたいと思っていたことのひとつの形として写真集を作らせていただきました。宝塚歌劇団って唯一無二の、ある意味特別な所じゃないですか。今までの私は宝塚歌劇団の娘役という立場で、タカラヅカというフィルターがある状態でみなさまと繋がっていましたが、そのフィルターがなくなった今、「私らしさってどんなことだろう」と考えるようになりました。そこを追求しながらの撮影でしたので、今までしてこなかったようなファッションだったり表情だったりを見ていただけたらと思います。振り幅の大きさを感じていただけるとうれしいですね。
娘役さんのファッションを見慣れているファンにとっては新鮮ですね。
綺咲:そうですね。「こんなのもあるんだ」とか「これはちょっと違うかも」とか、いろんなお声がいただけるといいなと思います。…って、まだ発売していないのにみなさんのお声をいただくことが前提になっているのですが(笑)。
自分に似合うものって、自分より周りの方が知っているとずっと思っているんです。例えばタカラヅカで言えばカツラとかお化粧とか。なので、いろいろな方の意見を求めちゃうんですよね。ということで、今回もみなさまからのご意見やご感想をどしどしいただければと思っています。
今年から事務所にも所属されました。今後はどんなお仕事に挑戦したいですか?
綺咲:退団してこんなに時間が経っているのにまだ見つけられていなくて…。10代でタカラヅカに入り、タカラヅカしか知らなくて、タカラヅカにすべてをかけてきて、退団して「何をやりたい?」となったときに何もないんです。いつか見つかるかなと漠然と思っていたのですが、「これをやりたい!」と強く心に思うもの、断言できるものがなくて。
でもそれは、タカラヅカ以外すべてが初めての状況だから、やってみないとわからないのかなとポジティブに考えています。なので、とても軽い言葉になってしまいますが「なんでも挑戦してみたい」。タカラヅカ以外の、私がまったく知らないお仕事が溢れているこの世界で、たくさんのことに挑戦して自分が好きなものやフィットするものを探していきたいですね。タカラヅカ出身ということで舞台のお仕事をいただくことが多いのですが、このご時世で公演中止になってしまったのが残念でした。
決まっていた公演を楽しみにしていたファンの方も多いと思いますので、本当に残念です。
綺咲:濱田めぐみさんのトーク番組にお呼びいただいた時に、とても有意義なお話をしてくださったんです。コロナ禍においてどの業界にも大きな影響はあると思うのですが、特にエンターテイメント業界は大打撃を受けていますよね。生の瞬間を共有するということがいちばんの醍醐味なのにそれができない今は、業界全体がものすごく沈んでしまうけれども、この経験が今後に絶対に生きると。その言葉をうかがって、考えが変わりました。お仕事がひとつ決まってはなくなるという状況でダメージやショックを受けますけれども、その気持ちをバネに、例えばそんな種類の悲しみが役作りに生きたりとか、そうやって前向きに、今自分ができることを真摯にやってきたいですね。
綺咲愛里さん=あーちゃんと言えば、「めちゃくちゃかわいくてキュート」。甘めのルックスからアイドル的でフワッとした雰囲気を想像しますが、意外にも潔くてスマート。等身大の自分を受け入れて、カッコつけることなくその姿を見せてくれるあーちゃん。丁寧でわかりやすい言葉選びに、地に足をつけて進んでいく知的な姿勢を感じました。
綺咲愛里さんインタビュー記事
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宝塚歌劇団入団時からその美しさは多くの注目を集め、「あーちゃん」の愛称で人気を博す。新人公演の主演等、大役に就くなど期待の若手として経験を重ね、2016年11月、紅ゆずる(現:松竹エンタテインメント所属)のトップスター就任と同時にトップ娘役となる。本書では、そんな彼女の在団中には伝えられなかったいくつもの表情を完全撮り下ろしで掲載し、多くのファンにあの美しさを再び、そして初めての綺咲愛里を届ける内容に。また、著者と宝塚歌劇団時代の同期となる花乃まりあ(元花組トップ娘役)、咲妃みゆ(元雪組トップ娘役)を迎えての豪華プレミアム対談も実現。そして、購入者限定で閲覧できる豪華特典映像として、メイキングや著者インタビューなども収録。さらにさらに、映像の最後にはあの〇〇さんがサプライズで登場!
撮影/大靏 円(昭和基地) 文/淡路裕子
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女優
綺咲愛里
きさきあいり/10月30日生まれ、兵庫県出身。2010年に96期生として宝塚歌劇団に入団し、月組大劇場公演『THE SCARLET PIMPERNEL』で初舞台を踏んだ後、娘役として星組に配属。2014年星組大劇場公演『The Lost Glory-美しき幻影-』の新人公演で初のヒロインに。2016年に星組トップ娘役に就任。翌年、自身の初舞台作品の再演となる星組『THE SCARLET PIMPERNEL』で、紅ゆずるとともに大劇場でのトップコンビお披露目公演を果たす。2019年星組大劇場公演『GOD OF STARS/Éclair Brillant(エクレール ブリアン)』にて宝塚歌劇団を退団。退団のちょうど1年後の2020年10月13日に初の写真集『Airi Kisaki 1013』を発売。
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