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LIFESTYLE インタビュー

2020.12.13

元宝塚歌劇団星組トップスター・紅ゆずるさん登場!体育会系の星組を導いた足跡

現役時代は、前回ご登場いただいた綺咲愛里さんと「べにあー」(もしくは「パッサァ」)コンビとして星組を牽引した元トップスターの紅 ゆずるさん。様々な魅力を持つスターがひしめき合う宝塚歌劇の中で、個性を武器に熱いステージを観せてくれました。今回は、星組トップスター時代のお話をうかがいます。

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自分の気持ちをオープンにして、密なコミュニケーションを図る。真剣な気持ちをぶつけ合って、心に届くステージに!

今回ご登場いただくのは、元星組トップスター・紅 ゆずるさん。実は綺咲愛里さんのほか、七海ひろきさんや柚希礼音さんからもご紹介いただいていたのです。その際はスケジュールが合わなかったのですが、このたびついにお話をうかがうことができました。

紅さんといえば、自分のカラーをお持ちの元トップスター。タカラジェンヌさんはそれぞれ個々の魅力がありますが、紅さんは、予想の上を行くと言うか予想のできない個性を発揮されていたように思います。トップスター時代のこと、星組のこと…退団した今だから聞けることを、盛りだくさんでお届けします。

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綺咲愛里さんから紹介をいただいてのご登場となりました。綺咲さんとは星組生え抜きのトップコンビでしたが、どんな関係でしたか?

紅さん(以下敬称略):今年の10月13日が退団1周年でしたので、一緒にスカイツリーに行きました。そのあと私の行きつけのレストランに行って記念日をお祝いしました。

「とっても仲がいいですね」と言われますし、それは事実なのですが、トップコンビになる前まではそこまで同じ方向を向いていなかったと思います。それでも、2015年の『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』が転機になる第一歩だったように感じます。

それまでは、彼女にとって私という存在は怖い上級生だったのではないかな?と思います(笑)。彼女はきっと役がついてくる子だと思ったので、芸事だけではなく、周りの人たちの気持ちも理解できるような人になって欲しくて私の気がつく範囲ですが彼女に細かく伝えてきました。

彼女がトップ娘役に決定した時に、「これからの私たちは上級生下級生ではない。お互いが対等に意見を交換できるパートナーとしてやりたい」と伝えました。私がこうしてほしいと言ったから「こうしました」では駄目だということも伝え、最初は彼女もどうしたらいいか悩んだと思いますが、彼女も私の思いを汲み取ってくれたこともあり、1作品ごとにお互いの距離も縮まって、最後には私たちの中で揺るがない絆が生まれました。

これは私だけではどうにかなるわけでもない、お互いの努力あって生まれたもの。一生の宝物です!

いい舞台を作るには信頼感が何よりも大事なのかな、と思います。

紅:そうですね。舞台は普段の姿が全部出てしまうところなので。嘘がつけない場所です。ショーなら目線ひとつで関係性が透けて見えるし、パレードになったら組全体のムードが露わになってしまう。特に、トップコンビの関係性は組の雰囲気に大きく影響すると思っています。だから、少し時間が空いた時には彼女(綺咲さん)とご飯に行ったりしてコミュニケーションをとりました。稽古場でも“仕事”というより、ふたりの時間を共有しているような感じ。これは私ひとりでできたことではなく、彼女も報いようと努力してくれたことも大きかったと思います。

あとはお互いの愚痴を他の人に言わないこと。これは周りの人は関係なくて、私たち2人の問題だからです。そりゃ、長い時間一緒にいれば色々思うことも多少なりとも出てきます。それを周りの人から、お互いの話を聞いたら面白くないなんてものじゃないし、プラスに働くことなど何一つありません。なので、私たちは毎日ミーティングをして、お互いが思ったほんの些細なことでもいいので意見交換するようにしたんです。すると、舞台上などでも会話をしていないのに、お互いの目を見れば、自ずとお互いの気持ちがわかるようにさえなってきました。彼女が私の相手役であったことを心から感謝しています。そして今でも、彼女以外の相手役は考えられないですね(笑)。

そうそう、これ(イヤリング)、誕生日にあーちゃんにもらったんですよ。絶対に星モチーフのものを、と思ってくれたみたいで。会うたびにいろんなものをプレゼントしてくれて、もうねー、かわいい(笑)!! このピンクゴールドは今までだったら絶対に選ばないものなのですが、女性らしく見えるこれが似合いますよって。これから女優としてやっていく私が柔らかく見えるようにと選んでくれたらしく、うれしいですね。

トップスターとしてはどんなことに心を砕いていましたか? 

紅:トップスターにはいろんなタイプの方がいらっしゃって、トップとしての組の引っ張り方は人それぞれだと思います。私は意見が言える立場だからこそ、言いにくいことも組のために自分を鼓舞して伝えてきました。

私自身が下級生の時に感じたことなのですが、トップスターさんの意見は、ずっと心に残る重みがあったんです。ですから私自身がトップスターとして下級生に強く何かを伝えるべき時、伝え方を間違えてはならないと気をつけていました。私が言った一言で、この子の気持ちが上がることもあれば、下がってしまうこともある。ひいては、ずっと残ってしまうトラウマのようになってはいけないと。

人の気持ちは人にしかうごかすことが出来ないものだからノウハウを伝えるというより、自分の背中を見せることと自分の気持ちをさらけ出してぶつかっていました。舞台上の場面の量とか責任とかプレッシャーとかは当然のことで、それよりも自分の気持ちを包み隠さずに相手に伝えることがどれだけ大変なのかを思い知りましたね。

トップとして君臨するのではなく、みんながどれだけこの人についていきたと思ってもらえるようになるか。隠さなかったしカッコはつけなかったけど、意外とそれは紙一重で。「うちのトップって威厳がない人だ」と思われるかもしれない。でも、あまり自分のことを話さない下級生がわざわざ私のところに来て「こうでした」という話をしてくれるようになったりして、よかったなと思う瞬間を感じられましたね。

5組の中でいちばん体育会系気質なのが星組だと思っています。絶対に陰口を言わない。「あの子って○○やな〜」とかを裏で言わず、直接本人に「ちょっとそれ違うやん?」って言い合える絆がある。直接の指摘がすごいんですけど、指摘してくださることに感謝できるようになってくるんです。あと、「うちの組は特別だ」という感覚がすごく強いと感じます。私は組回りも経験していなくて初舞台から星組だったから星組しか知らないのですが、私たちが初舞台のときなんて「星組の舞台に出られることがありがたいんだぞ」って雰囲気でした(笑)。おそらく他の組では許されるであろうことも、星組では「あかん!」て。厳しい上級生がいっぱいいらっしゃる環境だったし、“星組生とはこうあるべきだ”という組訓(?)みたいなものがあってとてもスペシャル感が強い。挨拶はいちばん大きな声でする。上級生を重んじる。気持ちを口に出すことって勇気がいるんですよ。相手からも疎ましく思われたりもするでしょうし。でもそれが明日わかってもらえなくても、数年後に「言ってもらってよかったな」という時が必ずくると思っています。自己犠牲を強いても相手もことを思うのが星組のよさ。私は星組のファンだったから、組配属の日には星柄のスカーフと靴下を願掛けに身に付けて行って、めでたく星組になりました(笑)。

礼 真琴さんに代替わりした新生星組のお披露目公演は、いろいろ大変な状況の中で最後までやり遂げられました。紅さんが思うところはありますか?

紅:(トップスターの)在任期限があるからこそ、お披露目公演とサヨナラ公演は特別なんですね。それが途中で止まり、再開と中止が何度かあって、尋常ではない状況下でやり遂げたプロ根性。東京公演は半分の人数の出演者で。ラインダンスも人数が少ないのに「え? すごく人数多いでしょ」という顔で立派にやっている姿とかうれしかったですね。あれは絶対に、「ひとりが10〜20人くらいの気持ちでやろう」って言ってるんだろうなって。ドヤ顔でハッタリを効かせる、まさに中身の濃いハッタリだった。だからすごく感動したんです。


コミュニケーションを密にする。言いたいことや疑問点があったら影で言わずに直接本人に伝える。簡単そうなことですが、感情が入るとなかなか難しいのが人間…。これはタカラヅカという特別な世界だけでなく、私たち一般社会でも参考になるルールだなと思いました。相手役の綺咲さんのことや星組のことを話す紅さんは、一定のテンションなのですが、特別に思われていることが伝わってきて関係の強さがうかがえました。そしてお話の面白さは相変わらず!ところどころで愉快な例えを織り交ぜつつ、真摯に語ってくださいました。

 

撮影/岡本 俊(まきうらオフィス) ヘア&メーク/黒田啓蔵(Iris) 文/淡路裕子

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女優

紅 ゆずる

くれないゆずる/8月17日生まれ、大阪府出身。2002年に88期生として宝塚歌劇団に入団。星組大劇場公演『プラハの春/LUCKY STAR!』で初舞台を踏み、星組に配属。2008年星組大劇場公演『THE SCARLET PIMPERNEL』で新人公演最終学年で初主演。2011年星組『メイちゃんの執事』でバウホール公演と東上公演初主演。2016年に星組トップスターに就任。翌年、自身の新人公演主演の再演となる星組『THE SCARLET PIMPERNEL』で大劇場でのお披露目公演を果たす。2018年8月 『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』を台湾にて公演。2019年星組大劇場公演『GOD OF STARS-食聖-/Éclair Brillant(エクレール ブリアン)』にて宝塚歌劇団を退団。退団後はコンサートやテレビドラマへ出演。2021年は4月に『アンタッチャブル・ビューティー〜浪花探偵狂騒曲〜』、6月に『熱海五郎一座 Jazzyなさくらは裏切りのハーモニー〜日米爆笑保障条約〜』、8月に『エニシング・ゴーズ』と立て続けに舞台出演が決まっている。
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