来年の自分のために! 臭いものに被せてしまったフタを開ける
そろそろ大掃除を始める季節。なにを隠そう掃除が苦手な私のデスクからは、この季節になるといろいろな懐かしいものが発掘されます。引き出し中のトレイを取り出してみれば、下から古い領収書が(高額で出しあぐねてたなぁ)。以前、使っていた携帯電話も(愛着があって捨てづらく)。そしてなぜか、レトルトパウチに入ったままの味噌汁まで(いただいたものの味噌汁のワカメが苦手で)。1年間、後回しにしてフタをしていたものたちが一気に噴出!でも年に1度、恐る恐る臭いものに被せてしまったフタを開けてみるのは、来年の自分のために大切な時間です。
タブーから目を背けない勇気
同様に、ここ数年、私たち女性は未来の自分たちのために「臭いものに被せられたフタ」を次々と開けていると感じます。ここでいう「臭いもの」というのは、「不都合があるとされ目を背けられている事実」=タブーという意味です。
例えば性被害。就職活動中のレイプ被害を訴えた女性は「被害者A」ではなく「伊藤詩織」と名前も顔も出して会見を開きました。書類送検された男性は不起訴となりましたが、詩織さんは、日本でレイプ被害が5%しか報告されないことを挙げ、タブーを破りたいと声を上げました。
例えばLGBT。去年、渋谷区で同性カップルを「結婚相当」と認める条例が可決されたことも追い風となり、性的マイノリティへの誤解も解け始めていると感じます。もちろん、メディアの取り上げ方なども含め、まだまだ課題もありますがタブー視せず議題に上がってきたことでさまざまな前進が見られます。
テレビ番組でも今年、性教育や、養子縁組、複数性愛のポリアモリーや、あえて結婚を選ばない選択式シングルマザー、女性の政治家が増えない理由などに光を当てる機会が例年以上にありました。これはインターネットテレビが発達してきたこととも無関係ではありません。
無意識に避けていたことを、今一度考えてみる
しかし思えばタブーに挑んでいるのは、女性の周辺、インターネットだけとも限りません。この秋スタートした『教えてもらう前と後』という地上波ゴールデンタイムの番組でも初回に池上彰さんと「日本のタブー」について考えました。「皇室とお金」、「脱北者が語る北朝鮮」、「富士山の上空が米軍の空域であるという見えない支配」、「日本が武器を海外に輸出するための展示会が国内で行われている」などを放送し視聴率は12・2%(関東地区)と上々。タブーとして意識的、あるいは無意識のうちに避けていたことを今一度、考えてみる機運が高まっているのではないでしょうか。
タブーに目を向け、その意味を再考していくことは、私たちが本当の意味で「自由」になる過程です。昔は不浄などとタブー視されていた生理だって、私たちの体の大切なサイクルですよね!
誰もが自分らしく生きられる未来のために、この年末、お部屋でも社会でも、臭いもののフタをどんどん開けていきましょう!ちなみに、デスクから発掘された味噌汁はおいしくいただきました。
『教えてもらう前と後』 毎週火曜・夜8時〜好評放送中!政治からスーパーマーケットまで、教えてもらう前と後で世の中の見え方がガラリと変わる知のビフォーアフター番組。メインMCは滝川クリステルさん! レギュラー放送は、毎週火曜夜8時〜毎日放送制作TBS系全国ネット。
放送作家
たむらようこ
1970年生まれ。放送作家。「慎吾ママ」のキャラクターを世に送り出すほか、『サザエさん』『祝女』『サラメシ』『世界の日本人妻は見た!』など多数の構成や脚本を手がける。2001年に子連れで働ける女性ばかりの制作会社ベイビー・プラネットを設立し社長としても活躍。
Domani1月号 新Domaniジャーナル「風通しのいい仕事道」 より
本誌取材時スタッフ:構成/佐藤久美子