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2024.04.15

日本酒造りのエキスパート【杜氏】とは?時代を反映する杜氏事情も解説

 

「杜氏」とは、日本酒造りの現場をとりまとめる現場監督の役割を果たす人のことです。長い日本酒の歴史のなかで、伝統の味を守るために働いています。この記事では、その働き方や歴史について解説しましょう。

「杜氏」の読み方と意味

杜氏」は日本酒製造の過程をとりまとめるリーダーを指します。読み方は「とうじ」。一部では「とじ」と読まれることもありますが、基本的には「とうじ」と覚えておいて間違いないでしょう。

【杜氏】とうじ
酒づくりの職人の長。また、その職人。さかとうじ。とじ。

(引用:小学舘『デジタル大辞泉』より)

伝統ある日本酒の分野で、欠かすことのできない職人を意味する言葉です。詳しい意味と、間違われやすい「蔵元」や「酒蔵」との違いをご紹介します。

日本酒作りに従事する人のイラスト

「杜氏」は日本酒造りに欠かせない仕事をする人

「杜氏」は日本酒製造の現場を取り仕切るリーダーとして、質の良い酒を完成させる全工程の責任を担います。

日本酒製造では、品質を守るために冬に酒を仕込む「寒造り」が盛んで、同時期には多くの技術者たちが杜氏の指揮の下で酒造りに励みます。酒づくりの作業が冬季に集中していたことから、かつて杜氏の仕事も出稼ぎの形態が多く見られたそうです。

用意された日本酒の原料となる麹や米、仕込み水を使って、杜氏は技術者たちを率いてチームで仕事にあたります。杜氏は酒造りの専門技術を武器に仕事を請け負うエキスパートだといえるでしょう。

蔵元や酒蔵との違い

蔵元や酒蔵は、時に「杜氏」と混同されやすい言葉です。それぞれの意味を確認しておきましょう。

蔵元(くらもと):酒蔵を経営する人
・酒蔵(さかぐら):日本酒を製造する場所

整理をすると、杜氏を始めとする酒づくりの職人たちを蔵元が集めて、酒蔵で日本酒を作らせるわけです。「杜氏」という言葉と共に、蔵元と酒蔵も覚えておくと記憶に残りやすいかもしれませんね。

「杜氏」の役割と歴史

杜氏は酒づくりを仕切るリーダー的存在だとご紹介しましたが、その仕事内容は多岐にわたります。日本酒製造の現場で、杜氏の果たす役割を知っておきましょう。

江戸時代にまで遡る杜氏の長い歴史を振り返ることは、日本ならではの伝統文化に触れるきっかけになるかもしれません。

枡酒と稲穂

日本酒造りの全般に関わる「杜氏」

杜氏の仕事は、職人や酒蔵の管理だけではありません。米や水といった原料を使った麹や酒母造りに始まり、酒搾り、貯蔵、熟成まで全ての工程に関わります。高品質の酒を作り上げるために、当寺はチームを構成する職人たちをとりまとめ、スケジュール管理をしながら酒造りを進めます。

完成までに長い時間の掛かる日本酒製造の現場では、職場環境を整え職人の人間関係にまで気を配るのが杜氏の役目です。

江戸時代から続く「杜氏」の歴史

300年続く杜氏の歴史は、日本酒製造が盛んな冬から春の間をメインに働く、季節労働者として始まりました。冬季に行う酒造りが定着したのは江戸時代で、農閑期に余った米と人手を利用して集中的に酒が製造されたのです。

古代において、酒は一年を通して神まつりの度に造られるのが一般的でした。酒造りを任されたのは神々に仕える女性たちで、そのリーダー格の女性が「刀自(とじ)」と呼ばれていたことから、現在の「杜氏」という言葉が生まれたという説が有力です。

日本を代表する三大杜氏

日本の全国各地には、杜氏を中心とする酒造りのエキスパート集団がいます。三大杜氏といわれる集団は、中でも高度な技術を持って酒の製造に携わっているとされます。

三大杜氏は下記のとおりです。

南部杜氏:岩手県花巻市を中心とする、日本最大規模の集団
越後杜氏:越後国刈羽郡発祥の日本で二番目の規模の集団
丹波杜氏:兵庫県篠山市周辺を拠点とする集団

時代を反映する「杜氏」事情

長い歴史を持っている杜氏の仕事は、時を経てさまざまな変化が起きているのも事実です。例えば、次の様な点で変化が起きています。

雇用形態が季節労働者から社員に変わった
・若い世代が杜氏の仕事に興味を持ち始めている

杜氏を取り巻く状況がどのように変わってきているのか、注目してみましょう。

酒蔵

雇用形態の多様化

かつては冬の季節に集中して酒造りが行われていたため、杜氏も出稼ぎのような季節労働者が主流でした。蔵元と契約を結び、酒の製造が終わるまで仕事に従事する形です。

現代では、社員として酒造りの現場を仕切る「社員杜氏」が増加しており、自分自身が酒蔵を経営しながら杜氏の仕事を担う「蔵元杜氏」も見られます。

酒造りとは関係ない異業種から杜氏に転職する人もいるようで、杜氏の仕事への携わり方も多様化しています。

海外での日本酒人気を背景に若手杜氏の登場

日本伝統の酒は海外でも注目を集めています。若い世代や女性、外国人など、これまで杜氏にはあまり見られなかったさまざまな人がその仕事に興味を持つようになりました。大学で発酵学やバイオテクノロジーを学んだ学生が杜氏を志す例もあり、今後の日本酒市場への期待も高まっています。

世界的な知名度を獲得している和食と共に、日本酒の輸出量も増加傾向で、酒造りに携わる人々の多様化も進むでしょう。

「杜氏」になるための資格

杜氏の仕事に就く際に、必ず必要となる資格や試験はありません。専門性の高い仕事ですが、修行を通して少しずつ知識を付けて杜氏になるのも可能です。

ご紹介する「酒造技能士資格」は、取得しておくと杜氏の仕事に役立つ資格の1つです。「杜氏」の仕事をこなすには一級の取得が目安とされます。

ここでは、杜氏になる道のりと資格の関係について解説しましょう。

枡に注がれる日本酒

「杜氏」の仕事に必須の資格はない

次の章で触れる「酒造技能士資格」は、杜氏の仕事に関係の深い資格ですが、必ずしも取得しなければならないわけではありません。酒造に就職して杜氏になるために修行する道もあります。逆に関連資格があったとしても、深い観察力やマネジメント能力、計画性、正確性がなければ杜氏の仕事は務まりません。酒造りに関わる全ての工程に携わる杜氏だからこそ、幅広い能力や資質が求められます。

杜氏の仕事に役立つ「酒造技能士資格」

酒造りに関連した国家資格として「酒造技能士資格」が挙げられます。酒造りの実務経験を積んでから挑戦できる資格です。酒造りのエキスパートである杜氏として仕事をこなすには、酒造一級技能士程度の知識が必要とされるでしょう。国が認定している資格であるため、豊富な酒造りの知識を保有していることを対外的に証明できます。

まとめ

日本の酒造りに新しい風が吹き込んできている中で、チームを取り仕切り質の良い酒を完成させるために働く杜氏の存在は欠かせません。

かつては季節労働者が多かったですが、現在では社員杜氏や蔵元杜氏が登場しています。世界的な日本酒の注目度の上昇に伴い、若い世代や外国人の間でも関心が集まっている職業です。

日本酒の味を守る杜氏を知ることで、これからの日本酒の楽しみ方が以前とは少し変わるはずです。

日本酒を製造するタンクをかきまぜる人のイラスト

写真・イラスト/(C) Shutterstock.com

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