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2021.05.02

性教育には子どもの味方でいるために知っておきたいことが詰まっている【助産師監修】

大阪・茨木市のフィットネススタジオ「スタジオK」で開催された、親子で一緒に学ぶ性教育クラス「いのちのお話」。今回、スピーカーを務めた助産師SUNAこと、砂川梨沙さんに1児の母でありライターの有田千幸が取材をしました。シリーズ第1回は、「性教育が必要とされる理由」そして「親子が一緒に性について学ぶメリット」について。

Text:
有田 千幸

今回の性教育クラスへの参加は、娘の 〝とある行動〟がきっかけでした

突然ですが、私は2019年に35歳で第一児となる女の子を出産しました。娘も今月で1歳7か月。今ではお風呂場に貼ってある単語表を見ながら、「め」「みみ」「おなか」「て」「あし」など、自分の体のいろいろなパーツを指差すようになりました。そして私との体の違いにももう気づいているのか、「あれれ?」と首を傾げることもあります。

「私もいずれこの子に体のことについて聞かれたり、答えたりする日がやってくる。そのとき、いったいどんな答えを持ち合わせていればいいのだろう…」

そんな思いから今回オンラインでの参加を決めた、性教育クラス「いのちのお話」。生理や生殖についてだけではなく、性について学ぶことの意味、日本の性教育や避妊方法の現状、またデジタル社会が引き起こす問題やジェンダーアイデンティティなど人権に関わることまで、さまざまな角度から性のことについて知るきっかけとなりました。

シリーズ第1回となる今回は、スピーカーを務めた助産師SUNAこと、砂川梨沙さんに「性教育が必要とされる理由」そして「親子が一緒に性について学ぶメリット」について、あらためて取材をしました。


▲ 助産師SUNAこと、砂川梨沙さん (トータルバースプランナー)
1982年鳥取県産まれ。鳥取看護専門学校・ベルランド看護助産大学校(助産学科)卒業。トータルバースプランナーとして、働く女性のための訪問型「にじいろ助産院」を開業し、産前産後に必要な知識と頼れる場所を提供し、心身ともに健康で自分らしく生きていくことをサポートしている。現在この活動と並行して、性教育についても全国各地で講演中。プライベートでは3児の母。

性教育は子どもの味方でいるための大切な知識

有田千幸 (以下、有田): 砂川さんにも、8歳、6歳、3歳のお子さんがいらっしゃいますが、私たち思春期前の子どもをもつ親たちは、「性教育」というテーマをどのように捉えればよいのでしょうか。

助産師SUNA (以下、SUNA): まず、「性教育」という言葉は「性の健康教育」といういい方に徐々に変わってきています。「性教育」と聞くとどうしても、生理のことですよね、コンドームのことですよね、と瞬間的に思ってしまいがちですが、決してそれだけではありません。性の健康のためには科学的や医学的な体の知識が必要ですし、また性に関することはジェンダーや人権などにも関わってきます。

SUNA: 私たちの世代は積極的に性教育を受けてきていない世代です。だからたとえ子どもに話してあげたいと思っていても、どう話していいかわからない、またはどこまで話していいのかわからない、そう思っている人も多いと思うんです。ただ、性に関する話には、今のこの世の中で親が絶対的な子どもの味方でいるためには、知っておきたいことも多く含まれています。そういう意味では、性教育は「子どもの味方でいるための大切な知識」といえるのではないでしょうか。

学校での性に関する教育に大きな期待はできない現状

有田: 私が小学校高学年だったころ、性についての授業があったのを覚えています。教室でみんな一緒に精子と卵子が女性の子宮の中で出会って受精するという内容のビデオで、すごく印象的でした。ただ「この精子と卵子はどうやって出会ったんだろう?」という疑問は残ったのと同時に、「あ、きっとそこについては触れちゃいけないんだろうな」と自分なりに解釈したことも覚えています。あれから四半世紀が経ちましたが、今、学校では現状どれくらい教えてもらえているのでしょうか。

SUNA: 学校の教育要領は2018年に改訂されていて、性に関しての教育はその中でカバーされています。しかし、教えるところは限られています。たとえば、小学校では生理のことや二次性徴のこと、中学校では生殖機能の成熟など、二次性徴の末に自分の体がどのように変化していくかということを学びます。また、受精、妊娠、ホルモンに伴う性衝動、情報との付き合い方や感染症について学ぶのも中学生のとき。そして高校では感染症についてもう一度学びながら、思春期の成長や結婚生活、ライフプランについて学びます。ただ、小・中・高校いずれの段階でも、妊娠に至る経緯については取り扱わないという、 “歯止め規定” がかかっています。

有田: つまり、精子、卵子、受精のことは習うのに、そのプロセスであるセックスについては触れないということですね。

SUNA: そういうことになります。私が携わっている学校でも、子どもが質問してきてくれても話せないという、非常にもどかしい状況です。

親子が一緒に性について学ぶことで、同じスタートラインに立てる

有田: 今回、性教育クラス「いのちのお話」を開催することになったきっかけについて教えてください。

SUNA: 「いのちのお話」は今回で2度目の開催になります。開催場所であるフィットネススタジオ「スタジオK」には、妊婦さんや産後の女性、そして子育て中のママやパパが通われいて、その方々から「性について親子で話を聞きたい」という声が多いという、代表の柚木京子さんからの相談がきっかけで開催することが決まりました。

有田: なるほど。砂川さんも親子で一緒に性教育を受けるということに大きなメリットがあるというお考えですが、これはどういう理由からでしょうか。

SUNA: 特に子どもが思春期を迎える前であれば、親子が一緒に同じ内容の話を聞き、同じスタートラインに立つことは性教育においてはとても重要だと考えています。学校で聞いてきた知識とママやパパが知っていることにズレがあると、親としてもどこまで話していいかわからないし、子どもとしてもどこまで聞いていいか、そもそも聞いていいものなのか尻込みしてしまいます。でも、同じ話を同じ場で一緒に聞くことで、「あのときああいう話が出たよね」とお互い躊躇せず話すきっかけにもなるはずです。思春期前に何でも話せる関係を築いておくということは、子どもがもう少し成長したときにきっと役に立つときがくるのではないでしょうか。

今回「いのちのお話」に参加してみて

今はどこにいても専門家の話がオンラインで聞ける時代。情報が溢れている今だからこそ、自分自身で情報を選ぶということがこれまで以上に必要とされているのではないでしょうか。

次回の話は、「性の話を伝えるのに適した年齢」について。

イラスト/Mai Kaneya

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ライター

有田 千幸

外資系航空会社のCA、建築設計事務所の秘書・広報を経て美容ライターに。ニュージーランド・台湾在住経験がある日・英・中の トリリンガル。環境を意識したシンプルな暮らしを心がけている。プライベートでは一児の母。ワインエキスパート。薬膳コーディネーター。@chiyuki_arita_official

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