【目次】
思春期前の子どもをもつ親たちがぶつかる「いつから?」「どうやって?」の壁
前回の記事では、「性教育が必要とされる理由」そして「親子が一緒に性について学ぶメリット」について、助産師SUNAこと、砂川梨沙さんに、話を伺いました。
シリーズ第2回となる今回は、「性の話を伝えるのに適した年齢」について。
▲ 助産師SUNAこと、砂川梨沙さん (トータルバースプランナー)
1982年鳥取県産まれ。鳥取看護専門学校・ベルランド看護助産大学校(助産学科)卒業。トータルバースプランナーとして、働く女性のための訪問型「にじいろ助産院」を開業し、産前産後に必要な知識と頼れる場所を提供し、心身ともに健康で自分らしく生きていくことをサポートしている。現在この活動と並行して、性教育についても全国各地で講演中。プライベートでは3児の母。
性についての話は、3歳から思春期前までのゴールデンエイジに
有田千幸 (以下、有田): 親と子が一緒に性について学ぶ機会を設けることは、何でも話せる関係を築く上でも重要になってくるということでしたが、これはどの年齢にもいえるのでしょうか。性教育に適した年齢というのはありますか。
助産師SUNA (以下、SUNA): 性についての話がスッと入るかどうかは人それぞれだと思います。ただ10歳を超えると思春期にも差しかかってくるので、照れや恥じらいの気持ちも出てきます。お兄ちゃんお姉ちゃんがいたりすると、すでにいろんなことを教えてもらっている子もいるかもしれないし、もしかしたら「おはよう〜」と声をかけても返事が返ってこない…だなんていうママパパもいるかもしれませんね。そういう状況を鑑みると、この情報ネット社会でフィルターをもすりぬけるアダルトコンテンツから間違った情報を認識してしまう前に、正しい知識を身につけてもらうことが大切なのではないかと思います。
有田: うちは娘が1歳7か月なのですが、この年でも教えられることというのはあるのでしょうか。
SUNA: 世界の性教育の標準が書かれているユネスコの「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」でスタートとされている年齢は5歳。ただ、0歳からでも始められる内容にはなっています。もちろん、いきなり生理や避妊について教えるというわけではなく、とにかく安心できる関係性を築くことが最初の目標。抱っこやスキンシップなどを通して、安心の感覚を実感させてあげたいですね。知識のことは、3歳くらいから徐々に話していければ大丈夫です。
性のことに聞かれたときこそ、チャンス!
SUNA: 子どもは大体5歳くらいまでの間に、命や性に関する質問を投げかけてきてくれます。たとえば、「赤ちゃんはどこから生まれてくるの?」「赤ちゃんってどうやってできるの?」「なんで私にはおちんちんがついていないの?」というような純粋な疑問。そのときこそが、正しい知識を得るチャンスです!
有田: ん〜、私きちんと答えてあげられるか不安です (汗)。
SUNA: その場で答えられなくても大丈夫。もし戸惑ったら「いい質問だね」「なんで知りたいと思った?」など、まずは否定だけはせずに受け止めてあげましょう。子どもは大人が想像するような回答は求めてないことも多くて、単純に日々の出来事の中で疑問に思ったことを口に出しているだけ、ということも多いんです。そこで親がはぐらかしたり、不機嫌になったり、怒ったり、否定的な態度をとってしまうと、「親や大人にこれを聞いてはいけないことなんだ…」とタブー感が植えつけられてしまうかもしれません。
まずは子どもと一緒に教わる側で、そして徐々に教えられるように
SUNA: 今回開催した「いのちのお話」の前半では、幼稚園年中〜小学校低学年向けて話をする時間を設けました。直接話す相手は子どもですが、その場にママやパパも同席し一緒に話を聞くことで、親子が同じスタートラインに立つことができます。そうすることで「あのときあんな話をしたよね」と、家庭内でも躊躇することなく性を話題にできるきっかけにもなります。
有田: なるほど。最初は親も一緒に学びながら、そして徐々に教えてあげられるようになればいいですよね。
SUNA: そう。たとえば、私がどれだけ経験があって助産師で活躍してますと子どもに言ったとしても、あまりよく知らない人からの話だと、やはりそこにはひとつフィルターがかかってしまいます。その点、ママパパに対しては絶対的信頼があるから、話がスッと入っていく。さらにそこに知識が乗っかれば、いうことなしですね!
性教育は今日からできます。帰り道、夕飯どき、お風呂のとき。子どもが聞いてきたときがベストタイミング。“知りたい欲” がグインと上がっているので、そこできちんと教えてあげることができれば、噛み砕いてスポンジのように吸収していきます。ただし、一度話しただけで理解することはできないので、何度も聞いてくることもあると思います。家庭での性教育の醍醐味は、知識や愛を大好きなママやパパから何度ももらえるというところ。性についての話をする中で、同時に「あなたが大切なんだよ」ということも伝えられるんです。そのためには、まずは親である私たちが正しい情報を知り、知識をつけていくことが大切ですね。
有田: 毎日一緒に過ごしている子どもに、面と向かって「あなたが大切」と伝えることってなかなか難しいですよね。私もチャンスが巡ってきたときはきちんと受け止めてあげられるよう、心の準備もしておくようにします…!
次回の話は、「日本の性教育の現状」について。
イラスト/Mai Kaneya
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ライター
有田 千幸
外資系航空会社のCA、建築設計事務所の秘書・広報を経て美容ライターに。ニュージーランド・台湾在住経験がある日・英・中の トリリンガル。環境を意識したシンプルな暮らしを心がけている。プライベートでは1児の母。ワインエキスパート。薬膳コーディネーター。@chiyuki_arita_official