親にとって使い勝手のいい「ちゃんとして」、子どもは理解していない可能性も!
子どもがふざけたり、だらだらしたり、水や食べ物をこぼしたりしたとき、皆さんは第一声なんと言いますか? つい「ちゃんとして!」って言いがちですよね。では、そもそも「ちゃんと」ってどのような意味があるのでしょうか。調べたところ、〝少しも乱れがなく、よく整っているさま〟(小学館刊・『大辞泉』より)と書いてあります。
この曖昧な表現、子どもにはきちんと伝わっているのでしょうか。スクールカウンセラーとしても活動している、臨床心理士・吉田美智子さんに「ちゃんとして」の使い方を伺いました。
「ちゃんとして!」には親子の共通認識が必要
「〝ちゃんとしなさい〟というとき、その〝ちゃんと〟が具体的に何を指しているのか、親と子で共通認識していれば有効です。しかし、何を指しているのか子どもが理解していないと、子どもはどうしたらいいのかわからないままに。それでも子どもは自分なりに考えて行動します。しかし、それがまた間違っていると、親は『だめじゃない』と更に否定を重ねてしまいます。常日頃このようなやりとりがされる場合は、子どもが〝いつも怒られる〟〝自分はだめなんだ〟という気持ちになってしまうのでご注意を」
すでに思い当たる節がある大人は、どうやって改善していけばいいのでしょうか。
「曖昧→具体的」「否定→肯定」へ
「子どもが興奮していたりすると、大人も負けじと大声で言いがちです。しかし注意したいときこそ【落ち着いた声のトーン・子どもの目の高さ・視線を合わせる】この基本姿勢をキープしましょう。
そして、まずは何をちゃんとするのか具体例を伝えます。例えば…
●ちゃんと片付けて→リュックを棚に入れて。靴を脱いだら踵を揃えて靴箱に入れよう。
●ちゃんと座って→背中をつけて、足を床につけて、前を向いてごらん。
●ちゃんと着替えて→白いTシャツを着てね。頭からかぶってごらん。
など、どう動けば正解なのか伝えましょう。
否定的な言葉ではなく、肯定的な言葉で伝えます。例えば…
●騒いじゃだめでしょ→お口を閉じて、手はおひざに置けるかな?
●走っちゃだめ→歩こうね。
●いつまで食べてるの?→時計の針が「6」になったら、ごちそうさまね。
肯定的な言葉で、具体的に伝えた後に、きちんと理由も説明しましょう。これがあるとないのとでは、子どもの納得感が違ってきますよね。
そして【できた時は認める】ことが肝心。これは、注意してできた時だけじゃなくて、普段の行動のなかで、【良き行動】と思った時に伝えてあげるのがポイント。また、『えらいねー!』と褒めるより『廊下を歩いているから、ぶつかってケガしたりしないね!』や『ごはんをしっかり食べたから、今日は力が出るね!』のように、その行動の結果も合わせて伝えてあげると、より理解度が深まります」
一見、小さな子に対する対処法に見えるかもしれませんが、これは段々と反抗的になってくる小学校高学年にも対応できるやり方。【時間軸・目標設定】などを絡めながら、自己管理能力を養えるよう手助けしてみてください。
取材・文/福島孝代
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臨床心理士
吉田美智子
東京・青山のカウンセリングルーム「はこにわサロン東京」主宰。自分らく生きる、働く、子育てするを応援中。オンラインや電話でのご相談も受け付けております。
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