嘘はついちゃいけないけれど、実際は…
失敗を隠したり、人のせいにしたり、行ったことがないのに「行ったことある」と言ってみたり、大丈夫じゃないのに「大丈夫」と言ってみたり…子どもたちも大なり小なり色々な嘘をついて過ごしています。大人たちは教育上「嘘をついてはいけない」と教えますよね。果たしてそれは本当に正解なのでしょうか。スクールカウンセラーとしても活動している、臨床心理士・吉田美智子さんに「子どもの嘘」についてお話を伺いました。
実は、嘘は子どもの成長を測るバロメーター
例えば、幼児は寝たフリをよくします。多くは「親に寝たふりであることに気づいてほしい」気持ち、遊びやコミュニケーションの一環としてやっています。もちろん、既に嫌なことから逃れようとしての寝たふりもあるでしょう。他にも、就学前の子どもたちは勘違いと嘘の区別がまだつきません。お母さんのついうっかりが「嘘つき!」になったりもします。親に「嘘をついてはいけない」と教えられ、100%それを守ろうとする表れでもあります。
しかし、11歳くらいまでには多くの子どもたちが【嘘も方便】(なんでも正直が良いとは言えない、嘘が必要なときもある)を理解していくといいます。嘘は、子どもの知性や社会性の発達とともにあります。だから、年齢が上がるにつれ嘘も巧妙だったり、親でも見抜けない時があったりするのですね。
嘘がダメだとわかっていても「嘘をつかなくていけない子ども」とは?
嘘がいけないことだと、小さいな子どもでも知っています。ではなぜ、それでも嘘をつき続けるのでしょうか。それには嘘をつかなければ心が保てない理由があるからです。
1:自分に注目してほしい子
親や友達の注目が欲しく、ありもしないことを言ってみたり、大きなことを言ってしまう。この場合は日頃から関わりを持ち、自己肯定感を高めてあげてください。
2:親の過剰な管理から自分のプライバシーを少しでも確保したい子
なんでもかんでも首を突っ込んでくる親に対し、自由にできるパーソナルスペースを作るため嘘をつく。そんなときは、子どもを信じてみてください。自由時間や、子どもに委ねる何かを作れるといいかもしれません。
3:困っているけどうまく説明できない子
うまく言葉が出てこないから、適当に言ってしまった結果、事実とは異なり嘘とみなされてしまう。このような場合は、嘘を叱るのではなく「本当はこうだったのかな?」「こう言えたらよかったね」など、大人が子どものしたかった説明を代弁してあげてください。この体験を積み重ねることで、子どもも少しずつ説明する言葉を獲得していきます。
嘘をどのように教えていく?
子どもの嘘には大きく分けて3つあります。
1.白い嘘(誰かをかばいたい・傷つけたくない)
2.自分を守る嘘
3.人を陥れる嘘。
それぞれに対して教えていく必要がありますが、ベースに持っていて欲しいのが【恐怖で支配しない】ということです。嘘をつけばもちろん叱るのですが、「嘘は絶対いけない!」と厳しく叱ると、子どもには恐怖しか残りません。そして、今度は恐怖を避けるために新たな嘘をつき、嘘に嘘を重ねる状態に。
まずは叱らず落ち着いて【嘘の事情聴取】をします。誰が誰についた嘘なのか、嘘をついた時の状況などを把握した上で、何がいけなかったかを端的に伝えましょう。また何度も嘘を繰り返してしまう時こそ、恐怖でなく根気強く教え諭すことを繰り返しましょう。
取材・文/福島孝代
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臨床心理士
吉田美智子
東京・青山のカウンセリングルーム「はこにわサロン東京」主宰。自分らしく生きる、働く、子育てするを応援中。オンラインや電話でのご相談も受け付けております。
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Twitter: @hakoniwasalon