「一張羅」が持つ2つの意味と基礎知識
「一張羅」は異なる2つの意味を持つ言葉であり、「いっちょうら」と読みます。一張羅の意味は以下のとおりです。
意味1:持っている衣服のなかで最もよいもののこと
意味2:たった1着きりの衣服のこと
2つの意味はともに衣服に関するものですが、実は一張羅の語源となったものは衣服ではありません。まずは一張羅の意味や語源、異なる表記の仕方、使い方や例文をチェックしましょう。
意味1:持っている衣服のなかで最もよいもののこと
一張羅が持っている1つ目の意味は以下のとおりです。
【一張羅(いっちょう‐ら)(イツチヤウ‐)】
1.その人が持っている衣服のなかで、最もよいもの。「―の晴れ着を着こむ」
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
このように、1つ目の意味で一張羅を使う場合は、そのほかにも複数衣服を持っている場合に使います。所有している衣服のうちで最も上等なものであるという表現のため、とっておきの衣服を着用してきたことを相手に伝えたいケースなどで使いましょう。
また、「一張羅の服を着て出掛けた」という表現をするだけで、その人にとって重要に思っている場面であるという状況を伝えられます。
意味2:たった1着きりの衣服のこと
一張羅が持っている2つ目の意味は、以下のとおりです。
【一張羅(いっちょう‐ら)(イツチヤウ‐)】
2.ほかには持たず、たった1着きりの衣服。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
2つ目の意味では、唯一その衣服しか持っておらず、ほかには所有していないケースで使います。しかし、現代の日本においてはたった1着しか衣服を持っていない、着替えができない状態にあるケースはあまりないため、基本的には1つ目の意味で使うことが多いでしょう。
そのほかに、「たった1つだけのかけがえのないもの」について表現する場合もあるようです。
「一張羅」の語源
一張羅の語源は「一挺蝋(いっちゃうらう)」、現在の仮名遣いでは「いっちょうろう」から来ています。一挺蝋の蝋とはロウソクのことです。
平安時代から戦国時代には、ロウソクは大変高価なものでした。そのため、来客をもてなそうとしたものの1本のロウソクしか買えず、燃え尽きてしまって惨めな思いをすることがありました。そのときの様子を「一挺蝋燭(いっちょうろうそく)」と表したことに由来してできた言葉だといわれています。
なお、昔はロウソクを一挺・二挺と数えていました。その後一挺蝋がなまっていき、一張羅になったようです。
「一張羅」には異なる表記もある
一張羅は異なる漢字表記をされるケースもあります。異なる表記の場合によく使われているのは「一丁羅」です。そのほかにも、「一帳羅」という漢字表記をしている場合もあるようです。
なお先述のとおり、一張羅はもともとの語源では一挺蝋燭(一挺ロウソク)や一挺蝋といわれていました。地方によっては現在でも、一張羅と同じ意味を表現するものとして、一挺蝋燭という言葉が使われているケースがあります。
「一張羅」の使い方・例文
一張羅の使い方を2つある意味ごとに例文で確認しましょう。
<意味1.持っている衣服のなかで最もよいものを指した例文>
今日は【一張羅】の晴れ着を着こんで、念入りに化粧をしてから外出しました。
<意味2.たった1着きりの衣服を指した例文>
この【一張羅】がなくなったら、外に出られなくなってしまいます。取り上げるのは勘弁してください。
それぞれの意味に合うように使いましょう。
「一張羅」の3つの類義語
一張羅には言い換えができる類義語が3つあります。一張羅の類義語の例は以下のとおりです。
1.「晴れ着」
2.「街着」v 3.「よそゆき」
一張羅との使い方の違いで注意したいのは、これら3つの類義語には「たった1着きりしかない衣服」という意味はないことです。それぞれの言葉の意味と使い分け方を、あわせてチェックしましょう。
1.「晴れ着」
一張羅の1つ目の類義語は「晴れ着」です。読み方は「はれぎ」で、送り仮名をなくして「晴着」と表記する場合もあります。
晴れ着とは表立った場面で着る、晴れやかな衣服のことを指す言葉です。晴れ衣装ともいい、「晴れ着姿を見せる」などと使います。
一張羅も晴れ着も外出の際に着るための改まった衣服のことです。一張羅と晴れ着の違いは、晴れ着は晴れがましい場所での着用にふさわしい衣服を指す点です。
2.「街着」
一張羅の2つ目の類義語は「街着」です。読み方は「まちぎ」で、「町着」と表記する場合もあります。
街着とは、街歩きをするときや買い物に出かけるときに着るような、街で着るのにふさわしい機能と雰囲気を持った衣服を指す言葉です。外出着やタウンウエアとも言い換えができます。外出着であることは一張羅と同じですが、最もよい衣服を指しているわけではない点が一張羅との違いです。
3.「よそゆき」
一張羅の3つ目の類義語は「よそゆき」です。よそゆきには「外出するときに着る衣服や持ち物」という意味があり、晴れ着に近い意味で使われます。他人の家に訪問するときなどのための改まった衣服ではあるものの、晴れ着ほどは飾り立てなくてもよいものを指します。
よそゆきは、衣服に関するもの以外にも異なる意味があります。1つが「外出すること、よそへ行くこと」自体を表す意味で、もう1つが「普段と異なる改まった言葉遣いや態度」という意味です。
よそへ行くことに対して使う場合には、「よそゆきの支度をする」などといいます。改まった言葉使いや態度をとることを表したい場合は、「よそゆきの顔をつくる」といった表現をします。
衣服に関するものも含め、よそゆきの3つの意味はすべて「よそいき」と表記することが可能です。
一張羅の意味を理解して正しく使おう
一張羅は持っているもののなかで最もよいとっておきの衣服という意味のほかに、たった1つしかない衣服という意味を持つ言葉です。
語源にはロウソクが関連しており、現在でも地方によっては一張羅と同じ意味で一挺蝋燭という言葉が使われています。違った表現を使う異なる地方の人と交流する際に、語源を知っているとスムーズに意味を理解できるでしょう。
一張羅の意味や語源、類義語などを理解して、正しく使えるようになりましょう。
写真/(C) shutterstock.com