「風が吹けば桶屋が儲かる」は因果関係を意味する言葉
「風が吹けば桶屋が儲かる」とは、ある事象によって思いもよらない場所や物事にまで影響が及ぶことをあらわすことわざです。
大辞泉には、次のような意味が記載されています。
【風が吹けば桶屋が儲かる:かぜがふけば桶屋がもうかる】
意外なところに影響が出ること、また、あてにならない期待をすることのたとえ。風が吹くと土ぼこりがたって目に入り盲人が増える。盲人は三味線で生計を立てようとするから、三味線の胴を張る猫の皮の需要が増える。猫が減るとねずみが増え、ネズミが桶をかじるから桶屋がもうかって喜ぶということ。大風が吹けば桶屋が喜ぶ。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
「風」と「桶屋」は本来あまり関係のないものです。しかし、そこに“意外な因果関係が存在すること”を意味します。因果関係とは、1つの事象を原因としてもう一方が結果となるように、「AだからBとなる」という関係性のことです。
これに対して、「相関関係」という言葉もあります。相関関係は2つのことがらのうち、1つが変化することによってもう片方も変化する関係性のことです。
■由来は『江戸時代の浮世草子』
風が吹けば桶屋が儲かるの由来は、江戸時代の浮世草子「世間学者気質(せけんがくしゃかたぎ)」とされています。しかし、世間学者気質ではもうかるのは桶屋ではなく「箱屋」です。この逸話は「東海道中膝栗毛」にも登場しますが、世間学者気質と同様に箱屋がもうかる話になっています。
世間学者気質に出てくる逸話の箱屋を桶屋に変えると、以下のような内容です。
1.強い風が吹いて土ぼこりがたつ
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2.土埃が目に入って眼病を患い、失明する人が増える
↓
3.失明した人が生計を立てるために三味線を購入することにより、三味線の需要が増える
↓
4.三味線を作るためには猫の皮が必要であるため、猫が乱獲される
↓
5.猫が乱獲され数が減ることで、その分ネズミが増える
↓
6.ネズミは桶をかじるため、桶が使えなくなる
↓
7.桶の需要が高まり、桶屋がもうかる
風と桶屋は一見なんの関係もなさそうですが、このようなストーリーを確認すると因果関係が成り立っていることがわかるでしょう。
■皮肉なニュアンスで使うことも
予想外の因果関係を意味するほかに、本来はほとんど因果関係がないにもかかわらず無理にこじつけたり、結果への期待をあらわしたりすることわざとしても用いられます。
東海道中膝栗毛の逸話は、浮世草子の世間学者気質とは逆の展開が描かれています。風が吹くと桶屋がもうかると考えた男が、全財産を賭けて桶に投資したのにもうけられなかったという結末です。このように、皮肉なニュアンスで使われることもおさえておきましょう。
■現代での事例
現代でも、風は吹けば桶屋が儲かるということわざのような状況が起こるのは、珍しくありません。
たとえば、株や不動産は、一見すると無関係な事柄によっても価格が変動することがあります。あるニュースが思いもよらないような企業の株価を押し上げる、あるいは下落させるといった事象はよくみられます。
■ビジネスにおける考え方
ビジネスにおいては、1つの事業からどこまで連鎖して営業機会を広げられるかを考えることが重要です。たとえばプロサッカーをビジネスの視点から捉えると、試合の入場料だけでなく、広告収入やグッズやユニフォームの売り上げなどによる物販収入、放映収入などが入ります。
1つの事業形態にすべてを注力し、顧客に貢献するのも大切です。しかし、ビジネスの隣にあるものを意識して、意外な切り口から未開拓市場であるブルーオーシャンを見つけようとする考え方が、ビジネスを発展させます。
「風が吹けば桶屋が儲かる」の使い方
風が吹けば桶屋が儲かるということわざは、意外な因果関係のたとえとして用いられます。また現在は、実際に起こる可能性がかなり低いのに、因果関係を無理やりこじつけたり、結果を期待することに対する皮肉としたりしても使われることもおさえておきましょう。