「転ばぬ先の杖」ってどんな意味?
万全の準備をして、物事に挑む姿勢を指して「転ばぬ先の杖」と言います。言葉からも何となく意味を想像することはできますが、なかには正しい意味とは少しずれた使い方をしてしまっている方もいらっしゃるでしょう。
ここでは「転ばぬ先の杖」の意味やことわざを使うシーンについて解説します。辞書に書かれた意味を理解して使いましょう。
■言葉の意味
早速「転ばぬ先の杖」ということわざが、辞書ではどのように説明されているのか解説します。まずは以下をご覧ください。
【転ばぬ先の杖】
前もって用心していれば、失敗することがないというたとえ。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
「転ばぬ先の杖」をシンプルに説明すると「転んでケガをしてしまう前に、杖で体を支えよう」という意味です。このことからさまざまなリスクに対して、事前に十分な備えをしておこう、または準備をしておくといった意味合いで使われます。
「転ばぬ」は、失敗しない・不測の事態に陥らないという意味。そして「先」とは未来のことであり「杖」が準備を意味すると捉えるとわかりやすいでしょう。
■使うシーン
「転ばぬ先の杖」ということわざを使うシーンとしては、基本的に相手に対して言い聞かせるときや注意喚起をおこなう場合が挙げられます。何が起きても大丈夫なように、万全の準備をしておこうと促すための言葉です。
常に、万が一に備えた準備をしておけば、何が起きても対処できます。「転ばぬ先の杖」は相手に注意喚起をするとともに、自分自身の「教訓」としても頭に入れておきたい言葉です。
「転ばぬ先の杖」の類語
前もって万全の準備をしておくことで、リスクを軽減すると言った意味をもつ言葉は「転ばぬ先の杖」の他にも複数あります。ここでは転ばぬ先の杖の類語として代表的な「用意周到」「石橋を叩いて渡る」「備えあれば憂いなし」「濡れぬ先の傘」「用心には網を張れ」の5つを紹介します。類語と合わせて単語を知っておくことで、ボキャブラリーがグッと増します。
「用意周到」
準備にぬかりないことを表現した「用意周到」という熟語も、転ばぬ先の杖の類語です。文字通り、用意が周到なことを意味しています。「周到」には落ち度がない、すべてに行き届いているという意味があります。
リスクを考慮して、細部まで用意をしていることを表現している点で、転ばぬ先の杖と同様の意味で使われます。ただニュアンスとしては、注意喚起というよりも、準備が整っている姿そのものを指して使われる点が、転ばぬ先の杖とは多少異なるかもしれません。
「石橋を叩いて渡る」
用心に用心を重ねるといった意味で使われる「石橋を叩いて渡る」ということわざも、転ばぬ先の杖の類語です。
石橋という、木製の橋よりも見るからに頑丈な橋であっても、叩いて安全を確認して渡る用心深い行動を指して「石橋を叩いて渡る」という表現をします。
「自分は、石橋を叩いて渡る性格だ。だからこそ、大きな失敗を回避できている」といった使い方をします。
「備えあれば憂いなし」
普段からしっかりと準備をしておけば、いざという事態になっても心配ないという意味をもつ「備えあれば憂いなし」。「憂い」というのが心配事や失敗、悲しいことなどの意味を持ちます。
こちらも「転ばぬ先の杖」と同様に注意喚起の意味で使われる言葉です。「万が一の災害にも準備をしておけば困ることはない、まさに備えあれば憂いなしだ」といった使い方をします。
「濡れぬ先の傘」
雨が降って身体が濡れてしまう前に、しっかりと傘を用意して備えておく姿を指して「濡れぬ先の傘」と言います。ここでいう「雨」は災害や非常事態を表しています。
このような非常事態に備えて、準備(雨)をしておくことの教訓としても最適な言葉です。転ばぬ先の杖と同様に、注意喚起という意味でも使われています。「いつ抜き打ちテストされても大丈夫なように、濡れぬ先の傘で、勉強しておこう」と言った使い方をします。
「用心には網を張れ」
こちらは「石橋を叩いて渡る」と同じように、用心のうえにさらに用心を重ねる様を表した言葉です。もともとの備えである「用心」にさらに「網を張る」というように、何事にも二重の構えがあれば安心できるといった意味で使われます。
「用心には網を張れ」を教訓に、ただ用心をするだけでなくさらなる不測の事態に備えた心構えをしておきましょう。
反対の意味を持つ言葉
「転ばぬ先の杖」には類語だけでなく反対の意味を持つ言葉、すなわち「対義語」も存在します。これには万全の準備をするのではなく、不測の事態が発生してから対処をする姿を「手遅れ」とする表現もあります。またあまりにも準備をしすぎるのも、無駄であるといった意味をもつことわざもあるので、本章で紹介していきます。
「取らぬ狸の皮算用」
おさらいになりますが「転ばぬ先の杖」は、非常事態が起きる前に準備をしておこうといった意味を持つ言葉です。その反対語として、何かが起こる前にあれこれと余計な準備をするのは無駄であるといった「取らぬ狸の皮算用」という言葉があります。
まだ狸が取れてもいないのに、その皮を売るとどのくらい儲かるのか計算をするのは、時間の無駄と言った意味で使われる言葉です。宝くじが当たってもいないのに「◯億円当たったら何に使おうか」などと話すのも、これにあたります。