上田さんの「2023年の抱負」と「これからやりたいこと」
宝塚歌劇団を退団し、今回の『道化師』『田舎騎士道(カヴァレリア・ルスティカーナ)』が舞台初演出&オペラ初演出となる上田久美子さん。前半では、初めてオペラに触れる人でも楽しんで観られるような演出プランについて深くうかがいました。
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▶︎宝塚歌劇団を離れた上田久美子さんがオペラ初演出。文楽形式のヴェリズモ・オペラで新たな試みを【インタビュー前編】
後編では、日々考えていることやこれからやってみたいことなど、上田さんご自身についてのあれこれをうかがいます。
オペラを観る時にやっておくといいことや避けるべきことはありますか?
上田さん(以下敬称略):オペラは長い作品もあるので、疲れていると眠くなるから体調を整えておくことですね。あと、満腹だとこれまた眠くなるから直前に食事をしないのがいいかな。私は特に何をするというわけではないですが…。海外でオペラを観る場合、その前につい観光を入れてしまいがちですが、それはやめておこうかな、と思うくらいですかね。
今回の作品は、とにかくオペラに慣れていない方も楽しめること主軸に置いて作っているので、予習なしでも大丈夫かと思います。疲れていて眠いなと思いながら来ても、大丈夫なようにしていますので(笑)。
今回は関西弁の字幕も出るということなので、終演後は大阪名物を食べながら感想を語り合うのもよさそうですね。オペラだとついイタリアンとか食べたくなりそうですが。
上田:そうですね、串カツなんかいいんじゃないでしょうか(笑)。
「推しではなく作品自体で観に行くような演劇を」と話されている記事を読みました。宝塚歌劇ファンの中には「ウエクミ推し」という人も少なくないと思います。それに関してはどう思われますか?
上田:私個人に興味を持たれるのはちょっと…、「○○で見かけた」とか「こんなことしてた」とか。私の作品に興味を持ってもらえるのはありがたいですね。自分ではわからないですが、そこになにか価値を見出して評価してもらえるのはうれしいことです。
役者を推すことを否定しているわけではなく、作られたイメージやつけられたパッケージを超えた本質的なところにすごいものがあり、それをみんなが愛しているのはいいと思うんです。昔なら美空ひばりさんとか山口百恵さんとかね。もしかするとメディアの人たちが「この子をスターにしよう」と決めたのかもしれないけれど、実際に見ると圧倒されるじゃないですか。人は、本当にすごいものは自然と見抜くんですよ。
宝塚歌劇団時代のことをうかがいたいのですが、「最初はマーケティングを意識していたけれど、余裕ができた頃に立ち止まって学び直した」とか。それが反映されて生まれたのは、どんな作品だったのですか?
上田:うーん、タカラヅカの作品にはテーマ性は入れ込みにくかったんですよ。
上田さんの作品の中では『FLYING SAPA―フライング サパ―』が異色でした。
上田:この作品はデビュー当時から構想があり、劇団に企画書を出していたのですが斬新すぎていつも選考に落ちていたんです。タカラヅカとSFはあまり相性がよくない気がして。
写真をもっと見る作品を作る上で、影響を受けているものとか、インプットする要素などはありますか?
上田:先日、人と話していて気づいたことがあります。世の中には、失敗作や駄作と呼ばれるものがあるじゃないですか。その中でも惰性で作ったエネルギーの低いものでなく、オリジナルで1からものすごく本気で作っているのだけど世間一般から評価されないもの。込められた心意気はとてもよかったりするから、そういうのを観ると、脳の違うスイッチが入ってアイディアが湧いてくるんですよ。そういう作品がもっとあってほしいし、私は好きですね。本気で取り組んでいるからこそ伝わるものもありますし。
上田さんの意外なところってありますか?
上田:どうなんでしょう…。自分のここが意外だとか思わないので、特にないです。あ、笑っている時はたぶんとても子供っぽい雰囲気になりますね。
上田:黙っている時はそんなことはないので、自分の中のどこかにすごく子供的な部分があり、それが出てきた時に二面性を感じるのかもしれません。