京都で日本酒体験
一年に一度は「かならず京都を訪れる」という方は、きっと少なくないでしょう。京都が持つ歴史的、文化的な魅力は、季節や訪れる人の気持ちによって変化し、常に新鮮な風情を感じさせてくれます。
京都での楽しみといえば、名所旧跡を巡るのと等しく“美味しい食事”をお目当てにしている人も多いはず。美味しい食事となれば、美味しいお酒は欠かせまんよね。京都は、日本有数の日本酒の生産地だけに、銘酒も数多く揃っています。食事の席で美味しい京都のお酒と出会えたら、その酒蔵見学に行くのも面白いかもしれませんね。そういう食との出会い〜深掘りも、京都の楽しみ方のひとつ。時期によっては、日本酒のイベントもありますので、参加するのも楽しいものです。
日本酒イベント
京都で最大級の日本酒イベントといえば、春に開催される「SAKE Spring」(※2022年は7月に開催)。美術館、演劇ホールなどの文化施設が集まる岡崎地区「京都市勧業会館 みやこめっせ」が会場です。平安神宮の鳥居がすぐ横にそびえるロケーションで、隣を流れる疎水沿いの桜も見事なんですよ。京都のみならず、全国の酒蔵が参加し、飲み比べや、おつまみ探索が満喫できます。
これに限らず、地元の酒蔵が開催するイベントが年間を通して豊富にありますから、チェックしてみてくださいね。日本酒イベントといえどノンアルコールも用意されているので、飲めない方と一緒に行っても楽しめます。
また、日本酒のサイドアイテムとして欠かせない陶器市に合わせて旅を計画するのも、おすすめ。8月の「五条坂大陶器まつり」、10月の「清水焼の郷まつり」。11月の「窯元もみじまつり」は、紅葉時期と重なります。骨董好きなら、毎月21日は東寺の「弘法さん」、25日は北野天満宮の「天神さん」と、古くから続くディープな蚤の市を訪れるのもいいですね。思いがけない出会いがあるかもしれません。
居酒屋、bar
日本酒バーを含め、飲食店が多い地域は地下鉄「四条駅」から「烏丸御池駅」沿線です。さらに、これに並行する「河原町通」周辺が注目のスポット。祇園や先斗町といった、敷居の高さを感じる雰囲気はなく、地元の方が仕事帰りにブラリと訪れるようなお店が並びます。それぞれのお店に足を運ぶだけでなく、京都を何度も訪れる方なら観光拠点としてブックマークするように覚えておくと、周辺散策も充実しますよ。
また、このエリアは祇園祭りの時期に美しい鉾が立つ鉾町(ほこまち)もあります。京都の地酒を飲みながら、暮れていく空と入れ替わるように浮かび上がる提灯を眺めていると、とっておきの時間の流れが味わえます。
伏見の酒蔵めぐり
市内中心部より離れた伏見は「日本三大酒どころ」のひとつに数えられ、日本酒を巡る旅に外せないコース。20を超える酒蔵がひしめき合い、近くに観光スポットも多数あります。お子さんと一緒の旅でも、散策は楽しいものです。
伏見の水
これだけ酒造りが盛んな理由は、やはり水です。質の高い地下水が豊富に得られる土地だからこそ、日本を代表する酒どころとなりました。名水と呼ばれる井戸が多く残され、キンシ正宗の「常盤井水(ときわいのみず)」、黄桜の「伏水(ふしみず)」、「白菊水」など、水を巡ってみても面白い旅になります。
御香宮
境内に良い香りの水が沸きだし、時の清和天皇から「御香宮」の名を賜ったとされる神社には、地元民が今でもボトルを持参して取水に訪れます。ここでは地酒のきき酒会が催されることもあるんですよ。近くの商店街は活気に満ちて、歩くだけでも元気がもらえます。現代でも、地元の方々に大切に守られているお宮です。
月桂冠
数多くの酒蔵がある中でも月桂冠が運営する「月桂冠大蔵記念館」。ここはお酒の飲めない方でも楽しめる工夫が多く、酒造りの工程を詳しく見学できるスポット。予約制の「酒蔵ガイドツアー」は、原酒の充填体験、きき酒が楽しめます。
玉乃光
女性が口にすると、その飲みやすさから日本酒ファンに開眼する人も多いのが「玉乃光」。はんなりとした甘味があると評判です。こちらも、伏見にある酒蔵で、1月~4月は京町屋に泊まりながら見学できるツアーが人気を呼んでいます。
伏見の酒蔵といえば他にも、「宝酒造」「北川本家」などが軒を連ねます。お酒に詳しくない方でも耳にしたことがあるのではないでしょうか。その中でも老舗の「増田徳兵衛商店」を営む増田さんには、この記事の監修を務めていただいております。酒蔵で見学できる施設は限られますが、古い建物や、大きなタンクが並ぶ伏見の風景は風情が感じられますよ。
伏見エリアには他にも、お稲荷さんの総本宮、「伏見稲荷大社」、坂本龍馬ゆかりの「寺田屋」、豊臣秀吉が設計した「醍醐寺の五重塔」などがあります。
京都の老舗酒造、増田德兵衞商店の十四代目・増田德兵衞さんがおすすめする、お土産ベスト3
京都に行った際にお土産として買って帰るなら、どんなお酒がおすすめなのでしょうか? 京都の老舗酒造、増田德兵衞商店の十四代目・増田德兵衞さん(以下、増田さん)にお聞きしました。ぜひ、お買い物の参考になさってください。飲み比べてみるのもいいかもしれません。
1:富翁 山田錦 純米酒<北川本家>
程よい酸味が、食欲を刺激! 西京焼きやだし巻きたまごなどともよく合い、食中酒として最適です。日本名水100選にも選ばれた、京都・伏見の水「伏水」が使われています。
2:純米 神蔵KAGURA 無濾過・無加水・生酒(ルリ)<松井酒造>
米の旨みが濃いながらも、艶やかな香りがある日本酒。それも酒造好適米「祝」米を使っているから。生酒は、活きた酵母の躍動感が伝わってくるようです。
3:月の桂 純米中汲にごり酒(スパークリング生酒)<増田徳兵衛商店>
スパークリングにごり酒の元祖! 力強い味わいの中に、ほんのりと優しい甘味と爽やかな酸味が広がります。和食、中華と料理との相性もいいので、お土産に喜ばれますよ。
最後に
京都の観光スポットは豊富で、何度訪れても飽きることはありません。「日本酒」にテーマを絞っても、1度では満足できないかもしれませんね。酒蔵見学、居酒屋まわりなどの体験を通し、京都の奥深さを何度でも発見してみてはいかがでしょうか? お買い物も、楽しみのひとつです。京都の地酒から、「京都」を感じるのも一興ですね。
監修
増田德兵衞
京都・伏見にある老舗酒蔵「増田德兵衞商店」の14代目で、会長。創業三百余年(創業1675年)の歴史を持つ蔵元で、元祖「にごり酒」は高い評価を得ている。日本酒の蔵元が集まった、一般社団法人 刻(とき)SAKE協会の代表理事でもある。
構成・執筆/京都メディアライン
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