日本酒度とは
お酒のラベルには、「日本酒度」が記載されている場合があります。これは、日本酒の水に対する「比重」を示し、同時に甘口・辛口の目安としても使える数値です。
甘口、辛口の目安としての度数
実際に口にしなくても、ラベルを見るだけで味の予測がつけば、新しい日本酒を試してみる際に迷いません。そんな、味の指標となる単位として参考になるのが「日本酒度」です。ラベルへの記載義務はありませんが、表記されていることも多いので、覚えておくと便利ですよ。
計測方法
容器にある一定温度の水を入れて、「浮き」を浮かべます。この「浮き」が±0の値を示した時、水と同じ比重になるよう調整されているのが、「比重計」です。
日本酒度を計る場合は、決められた温度の日本酒を容器に入れ、「比重計」を浮かべての計測です。すると、水よりも重い日本酒に浮かべると−(マイナス)の値に、水よりも軽い日本酒に浮かべると+(プラス)の値を示します。この値を「日本酒度」と呼び、日本酒の比重を表す単位となっています。
水よりも比重が重い日本酒は、糖が多く残されていることから、甘口に感じられます。逆に、水よりも比重が軽い日本酒は、糖のアルコール分解が進んだ結果、あまり残っていません。これは、辛口に感じる傾向があります。こうして、日本度数とは、甘口・辛口の予測をつける指標となるのです。
ただし、日本酒の「甘口・辛口」とは、含まれる糖の量だけでは予測できず、キレ、酸味、苦味によって感じ方が変化する、複雑な味覚です。その中でも特に酸味が強いと、日本度数が低いお酒でも、甘味を感じにくくなります。このように、他の数値と組み合わせて読み取ることも必要ですから、あくまでも目安としての数値です。
基準値の一覧
ある一定の温度で、水と同じ比重を示す日本酒、これが日本酒度数±0で基準となります。以下は、味わいの目安となる、日本度数の一覧です。
大甘口 −6.0 以下
甘口 −5.9 〜 −3.5
やや甘口 −3.4 〜 −1.5
普通 −1.4 〜 +1.4
やや辛口 +1.5 〜 +3.5
辛口 +3.5 〜 +5.9
大辛口 +6.0 以上
さて、ここで簡単な練習問題をひとつ。「久保田」といえば、新潟県の有名な酒造メーカー「朝日酒造」が造る日本酒。日本酒初心者の方でも、耳にしたことがある方は多いかと思います。上記の基準値を参考にして、「久保田」のお酒を”甘口から辛口に並べ替えて”みてください。味の予想ができるでしょうか?
1.「久保田 碧寿 純米吟醸酒(山廃)」日本度数 +2
2.「久保田 千寿 吟醸」 日本酒度 +5
3.「久保田 純米大吟醸」 ±0
正解は、3.→1.→2.の順番です。+値が大きくなるほど、辛口となります。
3.の「純米大吟醸」はメロンのような華やかな香りを持ち、淡麗辛口を信条とする久保田の中では甘みがある日本酒です。1. の「碧寿」は爽やかでシャープ、2. の「千寿」は、食事に合わせやすいすっきりとしたお酒。機会があれば、ぜひ飲み比べてみてくださいね。
飲み比べセット 久保田萬寿 久保田碧寿 久保田紅寿 久保田千寿 久保田百寿 720ml×5本
飲みやすい、甘口の日本酒
シロップのような甘口、さっぱりした甘口など、「甘口」にも様々なタイプの日本酒があります。
貴醸酒
日本酒度が低いお酒といえば、「貴醸酒」をご存じでしょうか? 仕込み水の代わりに清酒を使って醸したお酒で、濃厚な甘さを持ちます。その度数はなんと、-40 ~ -30 程度。マデイラ酒、紹興酒を思わせる甘さがあり、食後、チョコレートに合わせて飲むような飲み方ができます。
発泡にごり酒
フルーティーでスッキリとした甘さを味わえる、シャンパンのような日本酒もあります。
スパークリング日本酒とも呼ばれ、人気が高まっている「発泡にごり酒」は、加熱・殺菌を加えていない生酒で、もともとの発酵力が残されています。シュワシュワと心地よい微炭酸は、白濁の液体。これは、もろみをしぼる際に、あえて粗い布でこし、「にごり/澱(おり)」を残しています。酵母や酵素を活きたままいただくため、フレッシュな味覚を味わえますよ。アルコール度数も比較的低め。飲みやすいお酒でもあります。
また甘みとは、酸味が上がると感じにくくなります。日本度数と合わせて酸度も表記されている場合は、1.8 以下を目安にすると、マイルドな飲み口です。
度数マイナス、甘口の日本酒、おすすめランキング
甘口の日本酒から、おすすめの日本酒を京都の老舗酒造、増田德兵衞商店の十四代目・増田德兵衞さん(以下、増田さん)にお聞きしました。飲みやすい日本酒のラインアップをランキング形式で紹介します。
1位:嘉美心 純米吟醸(岡山県)
お米のうま味を引き出した丁寧な酒造りを行う、酒蔵「嘉美心酒造」の一本。「すっきりとした甘味が美味しい、『米旨口』を追求した日本酒です」と増田さん。
2位:一ノ蔵 発泡清酒 すず音(宮城県)
宮城県内の酒蔵4社がひとつになり誕生したのが「一ノ蔵」。自然との共生を大切にしながら、伝統を守っています。「“すず音”という名前は、グラスに注ぐと立ちのぼる繊細な泡が鈴の音を奏でているようだったから名付けられました。アルコール分が低いため、普段はあまりお酒を飲まない方にも好まれるスパークリング清酒です」と増田さん。
3:満寿泉 貴譲酒(富山県)
海の幸、山の幸に恵まれた富山県で、美味い酒を追求する「桝田酒造店」の一本。「仕込み水の代わりに日本酒で仕込んだ一本。濃くキレがいい逸品です」と増田さん。
人気の日本酒度、平均値は、辛口の日本酒
過去に国内で流通していた清酒の、日本酒度の平均値をみると、時代と共に人気の味に変化があるのがわかります。
明治40年 +12
大正10年 +4
昭和16年 +0
昭和42年 −6
その後、1980〜90年代にかけて再び辛口ブームが起こり、最新(令和2年度)の平均値は、一般酒で+3.6。平成20年頃からほぼ横ばいに推移しています。
令和の時代になり、大人の女性に人気なのは、すっきり淡麗で辛すぎず、フルーティー寄りの味です。現在発売中の日本酒には、該当する商品が多いので、色々試してみてくださいね。
日本酒度、辛口! おすすめの日本酒ランキング
ほどよい辛さを持つ日本酒の中から、おすすめを増田さんにお聞きしました。あなたのお好みの日本酒はあるでしょうか?
1位:春鹿 純米 超辛口(奈良県)
明治時代に酒造業を創業した「今西清兵衛商店」。酒名「春鹿」は、春日大社とその神獣である鹿から名付けられました。「まろやかな口当たりと、凛としたキレ味の良さが両立した一本。魚介類との相性は抜群です」と増田さん。
2位:くどき上手 黒ばくれん 超辛口吟醸(山形県)
創業は1875年(明治8年)の酒蔵「亀の井酒造」の一本。戦時中、一時酒蔵を廃業していましたが、戦後に復活しました。「すっきりとした甘味が美味しい、『米旨口』を追求した日本酒です」と増田さん。
3位:刈穂 山廃純米超辛口(秋田県)
伝統を受け継ぎつつ、新しくより優れたものを生み出すことをモットーにした酒蔵「刈穂酒造」の一本。「すっきりとした甘味が美味しい、『米旨口』を追求した日本酒です」と増田さん。
最後に
日本酒度とは、±0を基準として、前後6.0 までの数値を頭に留めておくと、ラベルを見ただけでおおよその味が判別つくようになります。愉しみに買っておいた日本酒が、飲んでみたら予想とまったく違った、ということが減るかもしれません。お好みの味を探し当てる目安にもなりますから、ぜひ覚えて活用してくださいね。
監修
増田德兵衞
京都・伏見にある老舗酒蔵「増田德兵衞商店」の14代目で、会長。創業三百余年(創業1675年)の歴史を持つ蔵元で、元祖「にごり酒」は高い評価を得ている。日本酒の蔵元が集まった、一般社団法人 刻(とき)SAKE協会の代表理事でもある。
構成・執筆/京都メディアライン
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