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日本酒を飲むとき、もしくは日本酒をプレゼントしようとするとき、数多ある日本酒の銘柄の中から、1本を選ぶのはなかなか難しいもの。馴染みのある日本酒を選ぶ人もいるでしょうし、話題になった銘柄を選ぶこともあるでしょう。あるいは酒販店で「どれがいいですか?」と聞いて勧められたものを選ぶ、なんてこともあります。
そこで本記事では、歴史ある造り酒屋・増田德兵衞商店の14代目当主・増田德兵衞さんに「お勧めの日本酒」をお聞きしました。同業者の目線で「これぞ日本酒、ぜひ味わってみてください」と勧めるものは、きっと皆さんの期待を裏切ることはないはず。ぜひ、お酒を楽しむとき、プレゼントに選ぶときの参考にしてみてください。
美味しい日本酒の選び方
おすすめの銘柄の紹介前に、美味しい日本酒の基本的な選び方を解説します。自分好みの日本酒を選ぶときのヒントは、実はラベルにありました。ラベルの記載事項の見方について紹介しましょう。
ラベルの見方
日本酒のボトルに貼られたラベルは、情報の宝庫です。どのラベルにも必ず、以下が記載されている必要があります。
・「清酒」または「日本酒」(意味は同じ)の名称
・原材料名
・保存又は飲用上の注意事項
・製造者の氏名または名称
・製造場の所在地
・内容量
・アルコール分
規定の項目以外にも、ラベルには作り手が伝えたい情報が記載されていることが多いので、ぜひ手に取って眺めてみてください。例えば、このお酒に込められた思いや、おすすめの飲み方、味わいなど、酒造会社から飲み手に届けたい内容が、小さなラベルに凝縮されています。日本酒を選ぶときの大きな手がかりとなるでしょう。
甘口・辛口の味わいの違い
日本酒の味わいを、「甘口」「辛口」という言葉を使って表現することが多くありませんか? この「甘辛度」のほかに、「濃醇(のうじゅん)」「淡麗」といった味わいの「濃淡」でも表されます。
「甘辛度」は、日本酒度の数値が目安となります。数値がマイナスの値が大きくなるほど甘く、プラスの値が大きくなるほど辛く感じると言われています。例えば日本酒度が−15の日本酒は甘く、日本酒度が+15の日本酒は辛く感じられる、ということです。
「濃淡」は、酸度(日本酒に含まれる酸の量のこと)の数値が目安となります。酸度の平均は1.3程度です。一般的に、酸度が1.5より値が大きいと濃醇タイプとなり、小さいと淡麗タイプとなります。
すべての日本酒ではありませんが、「日本酒度」「酸度」の数値はラベルに記載されていることが多いので、日本酒を選ぶときの参考になるはず。とはいえ、味覚には個人差があり、これらの数値が絶対ではありません。
甘口の日本酒3選
ここからは、増田德兵衞さんにお聞きしたおすすめの日本酒を甘口、辛口に分けて紹介します。まずは甘口の日本酒3本から。
1:白川郷 純米にごり酒(岐阜県)
岐阜県大垣市にある、「三輪酒造」の代表ブランドです。白川郷は、どぶろく祭にちなんで醸されたもの。1級清酒の2倍もの酒造米を贅沢に使っています。日本でも数少ない純米にごり酒です。こちらはスーパーでも購入できます。
増田さん推薦コメント「どぶろくの製法を活かし、醪(もろみ)がそのままなので、ごっついにごりです。カクテルベースにもなります」
2:月の桂 低アルコール純米酒 稼ぎ頭(京都府)
京都府京都市にある、「増田德兵衞商店」の日本酒です。果実のようなスッキリとした酸味と、米本来のなめらかな甘みが従来の日本酒にはなかったと好評です。口中に広がる上品な味わいは、食前酒に向いています。日本酒初心者の方にも、ツウの方にもおすすめの1本です。
増田さん推薦コメント「山田錦で丁寧に仕込みました。5~8℃まで冷やしワイングラスに注ぐと、搾り立てのおいしさを楽しんでいただけると思います」
3:賀茂泉 純米吟醸 朱泉 本仕込(広島県)
広島県東広島市にある、「賀茂泉(かもいずみ)酒造」の代表ブランドです。米と米麹のみを原料とし、広島杜氏伝承の「三段仕込」を忠実に守っています。厳選した米を手造りで醸しているので、ふくよかな味わいが感じられるでしょう。
増田さん推薦コメント「しっかりと腰を据えた奥深さがあります」
辛口の日本酒3選
続いて辛口の日本酒3本を紹介します。どれも増田さんセレクトのものです。
1:大七 純米生酛(福島県)
福島県二本松市にある「大七(だいしち)酒造」は、1752年の創業以来、「生酛(きもと)造り」一筋に美酒を醸し続けています。精米から仕込み、瓶詰、貯蔵にいたるまで手造りを徹底。伝統を守りながらも、革新的な技術を追求し続けています。に厳選した米を手造りで醸しているので、ふくよかな味わいが感じられるでしょう。
増田さん推薦コメント「40度前後に温めたぬる燗で楽しむのが、おすすめです」
2:満寿泉 純米大吟醸(富山県)
富山県富山市にある「桝田酒造店」の「満寿泉(ますいずみ)」は、蔵元名にちなんだ逸品。米の持つ力を軽やかでキレのあるしっかりとした味に仕上げています。「美味しいものを食べている人しか美味しい酒は造れない」をモットーに、日々技術を更新し、旨い酒を磨き続けています。
増田さん推薦コメント「ふくよかな旨みと適度な酸のバランスがいいので、スイスイ飲んでしまいます」
3:紀土 純米吟醸(和歌山県)
和歌山県海南市にある「平和酒造」は1928年に創業しますが、幾度か廃業の危機に晒されてきました。昭和60年代までは、京都の大手メーカーの桶売り蔵として自社ブランドは細々と販売していましたが、近年は若い杜氏や蔵人が集まり、和歌山らしい酒造りに力を注いでいます。紀州の柔らかく綺麗な水を用いた酒は、滑らかでフルーティです。
増田さん推薦コメント「滑らかな口当たりですが、味わいはしゃんとしています」
最後に
飲んでみたいと思う、日本酒はありましたか? 産地や酒蔵を知ると、より日本酒の魅力が増します。各蔵の酒を飲み比べれば、造り手の個性も見えてくるでしょう。何より、日本酒とともに豊かなひとときを過ごせますように。
監修
増田德兵衞
京都・伏見にある老舗酒蔵「増田德兵衞商店」の14代目で、会長。創業三百余年(創業1675年)の歴史を持つ蔵元で、元祖「にごり酒」は高い評価を得ている。日本酒の蔵元が集まった、一般社団法人 刻(とき)SAKE協会の代表理事でもある。
構成・執筆/京都メディアライン
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