ひとつの公演を3つくらいのパートに分けてそれぞれ違うカラーが楽しめるような構成に?
宝塚歌劇OGと、世界的に活躍するダンスアーティスト・GANMI(ガンミ)の異色のコラボレーション『2STEP』。開催が発表になった昨年から話題を呼んでおり、5月の公演に向けて盛り上がりを見せています。
主催はタカラヅカ・ライブ・ネクスト(以下ライブネクスト)。そしてライブネクストの制作として今回の企画を手がけたのが、宝塚歌劇団元雪組男役として活躍されていた真地佑果(まち・ゆうか)さんこと森脇由梨さん。
今回は、出演されるだけでなく振付や構成、演出も手がけるGANMIのSotaさんと、元月組男役の宇月 颯(うづき・はやて)さん、そして森脇さんの3人にお話をうかがいました。
公演のことを中心にフリートーク。今回はその前編をお届けします。
▲対談は和やかに進行し、時にはこんな笑顔も。
宝塚歌劇とGANMI、エンターテイメントというひとつのくくりではありますが、今まで交わることのなかった世界観のコラボは新鮮ですね。
森脇さん
私がライブネクストに入社する前ですが、BTSの『Butter』のミュージックビデオを見て、なんてカッコいいダンスなんだろうと衝撃を受けたんです。どんな方が振り付けたんだろうと調べたところ、日本人の20代のアーティストの「GANMI」が参加されていると。世界で活躍しているBTSの振付制作に参加するってものすごいことですよね。驚くとともにうれしくもあり。
それ以来、GANMIさんの活動を追いかけていたんです。今の会社に入って企画を出すことになった時に、宝塚歌劇OGの活躍の場をもっと広げたい、その為にはOG公演の幅を広げてもっと外に向けて発信していきたいと考えて、今までにないジャンルの方とのコラボレーションをやってみたいと思いました。
もちろん周年公演や『エリザベート』のガラコンサートなど、従来の人気企画を軸にしながらなんですけど。新しいものを、と考えた時、「あ、GANMIさんとできたら話題になりそう!」とピンときまして。今回ご出演いただく宝塚歌劇OGは、退団してすぐの方もいらっしゃれば、宇月さんのようにいろんな経験を積まれている方もいらっしゃるから、そこもまた可能性が広がりそうです。
GANMIさんと宝塚歌劇のお客さまの層はまったく違うと思うのですが、「エンターテイメントを楽しむ、ダンスを楽しむ」という想いは一緒ではないかなと。私もタカラヅカのファンのひとりですけれど、GANMIさんのステージを見て心を動かされるから、きっと同じように感じるファンの方はたくさんいると思うんです。
宇月さん
私はタカラヅカを退団して5年くらいになります。もちろん育てていただいた所ではありますが、それに甘んずることなく世界を広げたくていわゆる「宝塚歌劇OG」というのではないところで勝負したいなと思っていたんですね。
でも昨年あたりから、タカラヅカで学んだことの強みを感じてきたんです。男役をやっていたからこそできる表現などは、他の方にはない武器になるんだということがやっとわかってきた。そんな自分の意識が変わるタイミングでいただいたお話だったので、いい機会だなと思って頑張りたいです。個人的な想いにはなりますが、タカラヅカで培ったものに加え、GANMIさんから刺激を受けることがきっとあると思うので。
Sotaさん
「宝塚歌劇」という名前はもちろん知っていましたが、オファーをいただいた時は「まさか」と思いました。自分は、作品を作る以前に、ダンスというものをちゃんと文化にしないといけないという想いを強く持ってGANMIをやっているのですが、ダンスを使った興行としてタカラヅカはトップ中のトップだと思うんですよ。
まだ勉強しきれていない部分はありますけれども、そういう意味で今のGANMIが宝塚歌劇OGの方とやらせていただけるのは光栄だと思っています。
▲GANMIを率いるSotaさんは振付を担当するだけでなく、構成や出演も担う。
宇月さん
Sotaさん
昨年秋に『HiGH&LOW−THE PREQUEL−』を観に行き、もう、衝撃で。平日昼公演で客席はパンパン。どんな歴史があってここまできたんだろうということにも興味を持ちました。もはやひとつの文化ですよね。
森脇さん
うれしいです。現役生の中にもGANMIさんのファンは多いと思います。
宇月さん
私もGANMIさんの公演やYouTubeを観ました。今の自分がこんなに(ダンスを)できるかなと少しドキドキしてしており、どこまでできるかの挑戦でもあると思っています。他のOGも出演しますし、GANMIワールドとのコラボレーションは未知の世界ではあるけれど、本当に楽しみ。
あと、退団後にショーやダンスの作品って意外にも出合わなかったんです。お芝居やミュージカル、コンサートの作品の中でダンスの場面があるくらいで、ダンスのみのものは少なくて。タカラヅカでは常にショーをやっているから、今回のダンスライブはお客さまも期待してくださっているのではないかと思っています。
森脇さん
宇月さんは、GANMIさんの振付作品ではなにがいちばん印象的でしたか?
宇月さん
YouTubeで拝見した『シックマン』のMV。キャッチーな歌とかわいらしいダンスがクセになります。ジャケットを着て踊るダンスのみのバージョンと、みなさんがキャラクターになりきったストーリー性のあるバージョンがあって、全然雰囲気が違うのですが、自分は芝居をやってきたから後者の方が興味深いです。みなさんの、団体芸みたいな振り付けも気持ちいいし、曲も耳に残るからちょっと口ずさんじゃう。お気に入りのナンバーです。
▲出演者のひとり、宝塚歌劇団元月組男役の宇月 颯さん。
Sotaさん
えー! ありがとうございます。森脇さんのお気に入りも聞きたいです。
森脇さん
私は『ALL EYES』と『BANDAID』が大好物です。タカラヅカの男役とちょっとつながるというか。
宇月さん
GANMIさんのパフォーマンスは、歌は違うアーティストの方が担当されるじゃないですか。私たちは自分たちが歌って踊るスタイルだったので、それが新鮮で面白いんですよ。
Sotaさん
そうそう、CHOREOMUSICという、ダンサーが主体になっていろんなアーティストとコラボするスタイルなんです。
宇月さん
いろんな表現が混ざり合って、いろんな個性を感じさせる1曲になっているのがすごいですよね
森脇さん
GANMIさんは、K-POPや日本のアイドルなど幅広く振り付けをされているじゃないですか。これはこういう部分を強調するとか、ジャンルごとに意識されていることはあるんですか?
Sotaさん
正直、ジャンルはあまり意識していないです。だからこそ、こんなにいろんなことができると思うんです。GANMIが主体の作品と振付作品はまったく別物と考えていて、言葉を選ばずに言うと振付作品はクライアントワーク。
例えばK-POPはめちゃめちゃ要望が細かくて、それが自分的にはやりやすかったりします。「この人たちはなぜ自分に依頼してきたんだろう。あ、ここまではできるけれどその先のアイディアが欲しいんだな」というように分析して、欲しい部分を提案する。この素材を使ってこういう料理を作りたいです、どう上手に調理しますか?ということじゃないかな。
だから各アーティストに対してそれぞれ違う意識を持っているわけではなく、その人がやりたいことをベースにしつつ自分の目線で振り付けをしていくのがポイントです。
森脇さん
なるほど! でも今回の公演は振付に加えてGANMIのみなさんにもご出演いただくじゃないですか。シンプルな振付作品とはちょっと違いますよね?
Sotaさん
それがこの公演のちょっと面白いところで。3つくらいにパート分けをしようと思っているんです。ひとつはGANMIの通常公演のようなパート、もうひとつは他のアーティストに提供するように宝塚歌劇のOGのみなさんのために振り付けをするパート、もうひとつはまた違う脳みそを使って作るパート…という形に。
宇月さん
ひとつの公演の中で、全然カラーの違う場面があるイメージですか?
Sotaさん
そうです。それが、振付師・GANMIとしては面白いことかなと思って。
▲『2STEP』制作の森脇由梨さん。こう見えて宝塚歌劇団の元男役!
森脇さん
宇月さん
うん、新しかったですよね。タカラヅカの時は役になりきって撮ることが多いから、ああいうのはすごくリアルな感じで。
森脇
東京湾で、みんなでザッと前に飛び出すように撮影して。風もいい効果でした。ファンの方からも、新鮮だというお声をいただき、置かれているチラシもどんどん持っていってくださっているみたいです。
Sotaさん
宇月さん
そうなんですよ。「それだけで?」と思われるかもしれないんですけど(笑)
まだお稽古が始まっていない段階ですが、Sotaさんはすでに構想を練っているよう…。後編ではもう少し具体的なテーマと、元タカラジェンヌおふたりが退団した今だからこそ言えるあれこれをお届けします。お楽しみに!
撮影/黒石あみ イラスト/春原弥生 構成・文/淡路裕子
GANMI×宝塚歌劇OG DANCE LIVE『2STEP』
【作品紹介】
ダンスアーティスト「GANMI」。BTS「Butter」振付制作参加、SixTONES「Good Luck!」振付・出演など、目覚ましい活躍を続ける最注目のダンスアーティスト集団です。そんなGANMIと競演するのは、いずれも華と実力を兼ね備えた7名の宝塚歌劇OGたち。さらにスペシャルキャストとして、元星組トップスターの湖月わたるが登場し、振付にも初挑戦します。持ち味・世界観の違う二者の化学反応によって生まれる、誰も観たことのない新しいステージに是非ご期待ください!
【Cast&Staff】
出演:Sota、SUN-CHANG、kooouya、Kazashi、Mr.D、shun、Dyson、Yuuki、Ryoga、O.S.M、AOI[以上、GANMI]
宇月 颯、風馬 翔、隼海 惺、矢吹世奈、綾 凰華、飛龍つかさ、輝生かなで/湖月わたる
振付:GANMI AYAKO、湖月わたる
構成・演出:Sota[GANMI]
【公演詳細】
<東京公演>
日程:2023年5月26日(金)〜28日(日)
会場:日本青年館ホール
料金:S席¥11,500、A席¥7,000(税込、全席指定)
<大阪公演>
日程:2023年6月2日(金)〜4日(日)
会場:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
料金:全席¥11,500(税込、全席指定)
【公演に関するお問い合わせ】
梅田芸術劇場(10:00〜18:00)
<東京公演>0570-077-039
<大阪公演>06-6377-3888
▶︎公式サイト
ダンスアーティスト
GANMI
ガンミ・11人からなる男性ダンスアーティストグループ。2016年にアメリカ・ロサンゼルスで開催されたダンスの世界大会「VIBE DANCE COMPETITION XXI」で日本チーム初優勝。BTS『Butter』の振付制作に参加し、AKB48、SixTONESなどのアーティストの振付や、Music videoへの出演など活躍が目覚ましい最注目のダンスアーティスト集団。
【主な振付作品】 BTS『Butter』(振付参加)、AKB48『久しぶりのリップグロス』(振付)、SixTONES『Good Luck!』(振付・出演)、Nissy『Trippin』(振付・出演)、Tomorrow X Together『No Rules』(振付参加)、NCT U 『Work It』(振付参加)など。
▶︎公式サイト
▶︎YouTube:@GANMIOFFICIAL
▶︎Twitter:@ganmi_official
俳優
宇月 颯
うづきはやて・4月17日生まれ、埼玉県出身。2004年に90期として宝塚歌劇団に入団、男役として雪組大劇場公演『スサノオ/タカラヅカ・グローリー!』で初舞台を踏み、その後月組に配属。2010年『ジプシー男爵』で新人公演初主演。2016年全国ツアー『激情−ホセとカルメン−/Apasionado!!Ⅲ』で初エトワール。2018年『カンパニー−努力(レッスン)、情熱(パッション)、そして仲間たち(カンパニー)−/BADDY(バッディ)−悪党(ヤツ)は月からやって来る−』にて宝塚歌劇団を退団。退団後はミュージカルを中心に活躍中。
▶︎公式サイト
▶︎Instagram:@hayate_uzuki_official
▶︎Twitter:@HayateUzuki