そうですね。自分は、音楽にはあるけれどダンスにジャンルはないと考えているんです。だから正直、そんなにカラーが違うかな?と思って。タカラヅカの公演を観ても、自分たちがやっていることとまったく違うとは感じなかったんですよね。
自分たちができないことができるし。それは、ジャンルとかカラーじゃなくて持ち味だと思うんです。でも違うところは絶対にありますね。なんだろうな…、役に入っているか入っていないの違いかもしれない。これはだいぶ大きい。
LIFESTYLE インタビュー
2023.03.25
元タカラジェンヌとダンスアーティストGANMIが初のコラボ! 出演者であるGANMI主宰のSotaさんと宝塚歌劇OGの宇月 颯さん、制作の森脇由梨さんによる対談の後編。ちょっとしたぶっちゃけ話も必読!
宝塚歌劇OGと、世界的に活躍するダンスアーティスト集団・GANMI(ガンミ)の異色のコラボレーション『2STEP』。開催が発表になった昨年から話題を呼んでおり、5月の公演に向けて盛り上がりを見せています。
主催はタカラヅカ・ライブ・ネクスト(以下ライブネクスト)。そしてライブネクストの制作として今回の企画を手がけたのが、宝塚歌劇団元雪組男役として活躍されていた真地佑果(まち・ゆうか)さんこと森脇由梨さん。
前編に引き続き、出演されるだけでなく振付や構成、演出も手がけるGANMIのSotaさんと、元月組男役の宇月 颯(うづき・はやて)さん、そして森脇さんの3人でフリートークをしていただきました。
タカラヅカとGANMIのダンスについての分析、元タカラジェンヌのおふたりがSotaさんにレクチャーする宝塚歌劇のことなどをお届けします。
▲宝塚歌劇をイメージしてポージング!
Sotaさん
そうですね。自分は、音楽にはあるけれどダンスにジャンルはないと考えているんです。だから正直、そんなにカラーが違うかな?と思って。タカラヅカの公演を観ても、自分たちがやっていることとまったく違うとは感じなかったんですよね。
自分たちができないことができるし。それは、ジャンルとかカラーじゃなくて持ち味だと思うんです。でも違うところは絶対にありますね。なんだろうな…、役に入っているか入っていないの違いかもしれない。これはだいぶ大きい。
宇月さん
私は逆に、なにかをまとわないとできなかったりするんです。それを取っ払った時の表現って、ちょっと自信がなくなっちゃったりして。今までずっとお芝居をやってきたから、“なにかになっているからできること”が根底にあるんだと思います。ダンスを含め、本当になにもない自分で表現するのは怖く感じてしまいますね。私だけかもしれないけど…。
なにもなしで「じゃあ、どうぞ」と言われた時に「えっ!」となってしまう。タカラヅカの人はそういうタイプが多いかもしれません。そういうところは本当に反対なんだなと思います。
Sotaさん
俺はそれができないから、そこは真逆ですよね。
宇月さん
自分で好きに、フリーに、というのがいちばん怖かったですね。でもたぶん、GANMIのみなさんはそういうのがお得意ですよね?
Sotaさん
そうですね。
宇月さん
だから私たちにとってはGANMIさんのスタイルがすごく挑戦です。自分的に、これができたら一皮むけるんじゃないかなと思っています。あ、「私はGANMIだ!」ってGANMIさんになりきればできるかもしれない(笑)
森脇さん
退団したばかりで、自由にやることがもっと難しく感じるメンバーもいるかもしれないですね。
宇月さん
そうそう。退団してから年数が経っているメンバーと、退団したてのメンバーのマインドはちょっと違いますもんね。今回の出演者は全員元男役だけど、どのくらいタカラヅカ率や男役率が残っているかは人それぞれ。いろんな魅力をGANMIさんに引き出していただこうと思っていて、私もみんなの様子を見るのが楽しみなんです。
Sotaさん
うわー、難しいなぁ(笑)
森脇さん
まだ全然決まっていませんが、お衣装でジャケットを着たりハットをかぶったりとなると、タカラヅカ独特の使い方があるので、そこで“らしさ”を出すことができるのかなと思います。組によって帽子をかぶる角度やジャケットの持ち方が違ったりして、そういうのも面白いんですよね。そういう、チラッと見える仕草をお客さまも「あ!」と思ってくださりそう。OGの方はジャケットを着たらきっと現役の頃の感覚に戻られると思いますし。
Sotaさん
そのカルチャーショックは絶対にあります。自分的にたぶん、本番のステージよりリハの段階でのカルチャーショックが大きいと思いますね。
宇月さん
『情熱大陸』みたいにカメラを入れてもらう?(笑)
森脇さん
動画をSNSに流したいですね! すでにSotaさんはおおまかな構成を練られているんですよね。
Sotaさん
『2STEP』というのがダブルミーニングなんです。お客さんと一緒にツーステップを踏めるということと、GANMIと宝塚歌劇OGがお互いに一歩ずつ寄り添うこと。そのふたつの意味を持ってこの公演でなにをすべきかということをめちゃめちゃ考えました。
まず、タカラヅカを知っているお客さんに「よかった」と思えるような公演にすること。もちろんGANMIのファンにも満足できるもので、一体感を目指したいです。
そのために、なにかひとつテーマを決めるというよりも、「あのOGさんのこんな面が見えた」「GANMIのこんなところが知れた」、だけどそれがひとつのパッケージになっているというイメージで作りたいなと思っています。これがお互いに歩み寄ることですね。
あとは、演技ではあるけれどもなるべくそれぞれの個性を感じられる形にしたいです。全員がいちアーティストとして、自分のパーソナリティの上に少し演技がかぶさるくらいのニュアンスでやりたい。
この3要素をはっきりさせて構成しようと思っています。俺、結構年末に頑張ったんですよ。もう振り付けに入る1歩手前くらいまできてますよ。
森脇さん・宇月さん
すごい!
Sotaさん
心配性なんですよ。土壇場でできるものではないので。
森脇さん
打ち合わせで初めてうかがった時から「これは観たいです」ってすぐに思ったくらい、濃い内容で。
宇月さん
Sotaさんは、理論というか要点をきちんと押さえていますよね。好きだから踊っていると思いますが、決してそれだけではない意志がある。だからちゃんと芯をとらえて、パッと形にすることができる方。
Sotaさん
もともとステージに立つのがいちばん好きなんですよ。今回、10回も公演があるじゃないですか。自分たちからしたらものすごくうれしくて。メンバーみんなで大阪に何泊もできるというのが初めてなんです。
だからその楽しみなステージをよりよくするために、必要なことは全部ぬかりなく準備をしておきたくて。(公演が始まる)5月を満喫できるように、なんとか早くから進めています。
けど、稽古を見てみて、「考えていたことと全然違うから、これはイチから変えないと…」という可能性もあると思うんですよ。未知な部分が多いから。…とか鬼のようなことを言ってみる(笑)
▲理論的な表現者、という印象のSotaさん。
Sotaさん
そういうのがすぐにわかるんですか?
森脇さん
ファンの方はわかると思います。
宇月さん
私はありがたいことに、「ダンスがいい」と言っていただくことが多かったですが、昔ですよ? 確かにみなさん、ダンス巧者と言われる方ばかりだから、とても心強いです。みんなに頑張ってもらおう(笑)
学年的に私がいちばん上で、次が風馬 翔(ふうま・かける)さんと隼海 惺(はやみ・せい)さん。そこから、矢吹世奈(やぶき・せな)さん、綾 凰華(あや・おうか)さんと飛龍つかさ(ひりゅう・つかさ)さんが同期で、輝生かなで(きお・かなで)さんの順かな。
隼海と輝生は同じ月組出身です。1組に70人くらいいるから、同じ組でもあまり関わらない人も多いんですが、ふたりとも新人公演で私の役をやってくれて。新人公演はご存知でしたっけ?
Sotaさん
下の学年の人だけでやる公演で、同じ役をやってくれたってことですよね?
宇月さん
そうそう。だから結構濃い関係なんです。風馬さんとは違う組なのですがすごく慕ってくれて、いつも楽屋に来て公演の感想を話してくれたかわいい下級生です。他の方は実はあまり関わりがなくて。だからこれから楽しみなんです。
森脇さん
出演者の方、全組揃っているんですよ。宇月さん・隼海さん・輝生さんが月組、矢吹さん・飛龍さんが花組、綾さんが雪組、風馬さんが宙組、そして湖月わたる(こづき・わたる)さんが星組で。湖月さんはスペシャルキャストとして全公演に出ていただき、振付もしていただきます。
宇月さん
すごい! (湖月さんは)ファン時代に観ていたトップさんですから、うれしいです。初の振付なんですよね。今回はあえて全組集めたんですか?
森脇さん
偶然なんです。私も気づいた時に「はっ!」と。
宇月さん
月組が多いんですね。
森脇さん
そうですね。月組さんはダンサーさんが多いイメージがあります。
Sotaさん
組によってそんなに違いがあるんですか?
宇月さん
結構違いますね。だからひとつの振りでもどう表現するか、OGの中だけでも違うと思います。振りが揃うとかじゃなくて、醸し出す雰囲気が違うんですよ。メイクや髪型などのこだわりもそれぞれの組で違いがあって。
Sotaさん
そうなんだ!
森脇さん
なんていうんですかね…ハートが違うってことですかね?
▲「いちばん上級生だから頑張らないと。とはいえ、心強いメンバーばかり!」と、宇月さん。
Sotaさん
5組いっぺんに違いが見られるものってないんですか?
森脇さん
うーん、運動会でしょうか。
Sotaさん
運動会なんてあるの?
宇月さん
あるんですよ、10年に1回。例えば、わかりやすくいうと星組は体育会系、月組はちょっとスタイリッシュで、雪組は日本物のお芝居とか殺陣が得意とか。そんな感じです。
Sotaさん
へー! それは自分で「この組にいきたい」って希望を出すんですか? それとも自動的に配属されるの?
森脇さん
配属されるんです。
Sotaさん
あ、じゃあ、『ハリー・ポッター』の寮の組分けみたいな感じですね。
森脇さん
そうです。花組に配属される人から順番に名前が呼ばれて。
Sotaさん
めちゃめちゃ興味深いですね。本当は違う組にいきたかったのに、っていうのがありそう。
宇月さん
私は実は、花組にいきたかったです。それぞれカラーが違うからこそ、入りたい組があるんですよ。
森脇さん
私は初舞台を踏んだ月組に行きたいなと思っていました。でもみんな配属された組がいちばん好きになります。
Sotaさん
組同士はライバル関係なんですか?
宇月さん
そういうのは全然ないです。自分の組に誇りはあるけれど。
森脇さん
いつも宝塚でお稽古をしているので、その時に公演をしている他の組の作品を観に行けるんですよ。それが他の組で活躍している方の魅力を知ったり、舞台について勉強する機会になるんです。
宇月さん
『ベルサイユのばら』とか『ロミオとジュリエット』とか、同じ作品をいろんな組で舞台化しているのを観くらべるのも面白いかもしれないです。ひとつの作品でも、組によって受ける印象が全然違うんですよ。面白いですよね。
Sotaさん
それは全組観に行かないといけないですね。
森脇さん
私が雪組出身だから、Sotaさんに雪組のDVDばかりお送りしてしまったので、ぜひ他の組も…。
宇月さん
じゃあ私が月組のものをお渡ししますね(笑)
Sotaさん
あははは。楽しみにしています!
▲大爆笑する3人!
和やかな空気の対談ではありましたが、途中、鬼コーチのようなSotaさんの発言も(笑) 舞台を作るということに一切妥協を許さないストイックさ。そのための準備を半年ほど前からやっているからこそ、引っ張りだこの人気者になれるのでしょう。
宇月さんと森脇さんのタカラヅカ話、OGの方でもこう思っているんだなということが垣間見えて興味深かったです。
宝塚歌劇OGとGANMIの化学反応、とっても楽しみです!
撮影/黒石あみ イラスト/春原弥生 構成・文/淡路裕子
【作品紹介】
ダンスアーティスト「GANMI」。BTS「Butter」振付制作参加、SixTONES「Good Luck!」振付・出演など、目覚ましい活躍を続ける最注目のダンスアーティスト集団です。そんなGANMIと競演するのは、いずれも華と実力を兼ね備えた7名の宝塚歌劇OGたち。さらにスペシャルキャストとして、元星組トップスターの湖月わたるが登場し、振付にも初挑戦します。持ち味・世界観の違う二者の化学反応によって生まれる、誰も観たことのない新しいステージに是非ご期待ください!
【Cast&Staff】
出演:Sota、SUN-CHANG、kooouya、Kazashi、Mr.D、shun、Dyson、Yuuki、Ryoga、O.S.M、AOI[以上、GANMI]
宇月 颯、風馬 翔、隼海 惺、矢吹世奈、綾 凰華、飛龍つかさ、輝生かなで/湖月わたる
振付:GANMI AYAKO、湖月わたる
構成・演出:Sota[GANMI]
【公演詳細】
<東京公演>
日程:2023年5月26日(金)〜28日(日)
会場:日本青年館ホール
料金:S席¥11,500、A席¥7,000(税込、全席指定)
<大阪公演>
日程:2023年6月2日(金)〜4日(日)
会場:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
料金:全席¥11,500(税込、全席指定)
【公演に関するお問い合わせ】
梅田芸術劇場(10:00〜18:00)
<東京公演>0570-077-039
<大阪公演>06-6377-3888
▶︎公式サイト
ダンスアーティスト
ガンミ・11人からなる男性ダンスアーティストグループ。2016年にアメリカ・ロサンゼルスで開催されたダンスの世界大会「VIBE DANCE COMPETITION XXI」で日本チーム初優勝。BTS『Butter』の振付制作に参加し、AKB48、SixTONESなどのアーティストの振付や、Music videoへの出演など活躍が目覚ましい最注目のダンスアーティスト集団。
【主な振付作品】 BTS『Butter』(振付参加)、AKB48『久しぶりのリップグロス』(振付)、SixTONES『Good Luck!』(振付・出演)、Nissy『Trippin』(振付・出演)、Tomorrow X Together『No Rules』(振付参加)、NCT U 『Work It』(振付参加)など。
▶︎公式サイト
▶︎YouTube:@GANMIOFFICIAL
▶︎Twitter:@ganmi_official
俳優
うづきはやて・4月17日生まれ、埼玉県出身。2004年に90期として宝塚歌劇団に入団、男役として雪組大劇場公演『スサノオ/タカラヅカ・グローリー!』で初舞台を踏み、その後月組に配属。2010年『ジプシー男爵』で新人公演初主演。2016年全国ツアー『激情−ホセとカルメン−/Apasionado!!Ⅲ』で初エトワール。2018年『カンパニー−努力(レッスン)、情熱(パッション)、そして仲間たち(カンパニー)−/BADDY(バッディ)−悪党(ヤツ)は月からやって来る−』にて宝塚歌劇団を退団。退団後はミュージカルを中心に活躍中。
▶︎公式サイト
▶︎Instagram:@hayate_uzuki_official
▶︎Twitter:@HayateUzuki
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